表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/99

-6- 会食データ

 ここは超一流の高級料理店である。一同が会し、トップ経営者達によるフルコースの会食が始まろうとしていた。経営者達が招かれた名目は懇話会への出席だったが、それはくまでも表向きで、実態は高級料理を味わう会・・とでも言える会食だった。

 優雅な語り口調で、隣の席に座る経営者と横目で会話をするのは、今を時めく花形企業のトップ経営者、須磨帆すまほである。

「ほう…さよですか。私のとこなど高々、連結で今年も20兆ちょっとですよ」

 自慢するでもなく須磨帆はごく自然に話した。

「ええ…そらそうでしょう。いやいや、うちなど、おたくなんかとは、ひとけた違います。フォッフォッフォッ…」

 しまった! 自慢させたか…と内心でほぞんだのは、それをとなりで聞かされた経営者の柄毛がらけだった。柄毛は仕方なく、下手したてに出て、須磨帆へ返した。

 座る二人の会話をそれとなく真ん中に立って聞いていたのは、ウエイターの羅院らいんである。羅院は、『好きに言ってりゃいいさっ!』と、不貞腐ふてくさ気味ぎみに思いながら、ゆっくりとメインディッシュの肉料理を笑顔で二人の前へ置いた。

「…」「…」

 二人は話すのをめ、正面を向いて動かなくなり、固まった。羅院は内心で『話し続けりゃいいのに…』と内心でまた思った。そういや、誰もがテープルへ置くときにはかしこまったように固まるな…と羅院は思った。席を遠ざかると、氷が解けたようにまた動きだすのだ。このトップ経営者達も同じなんだ…と、羅院はまた思った。これは面白い現象だ。この所作がすべての客でも同じなら、人間の本能的に定まった一つの動作と考えることができる。羅院は統計データをとってみよう…と決意した。


                   完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ