表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/99

-20- 意外

 増毛ますげは契約を成就させるつわものとしてかつら物産で名をせていた。増毛なしに勝ち目なし・・とは、今や社訓になりそうな勢いで社内に浸透した言葉だった。そんな増毛の存在だったが、彼にも人に知られていない意外な一面があった。まあ、人間にはよくある話で、多かれ少なかれ、人は意外な一面を持っているものだ。

「増毛君、この一件、よろしく頼むよ。どうも禿川はげかわの押しが足らんのか、先方が首を縦に振らんのだよ」

 営業一課では課長の尾釜おかまが契約書類のコピーを増毛に渡しながら頼み込んでいた。

「分かりましたっ! 僕でよろしければ、なんとかしましょう!」

「いや、無敵の君しかおらんよ! この一件、助けてもらえると私も助かる」

 尾釜はデスクの上へ両手を乗せ、目前に立つ増毛に深く平伏へいふくしながら言った。

 そして、三日がこともなく過ぎ去った。三日前と同じように増毛は課長席の前に立っていた。

「課長、サインもらえましたっ!」

「ははは…そうかそうか。そら、そうだろう。そうなるに違いないと、私は思っとったんだ。いやいやいや、どうも有難う!」

 尾釜は三日前と同じように、また増毛に対して平伏し、頭を深く下げた。内心では、これで部長への顔は立った…と思いながら。ただ、尾釜の内心には、たった三日でどうして契約が取れたのか…という疑問が、沸々(ふつふつ)といていたことも確かだった。気になった尾釜はついに我慢できなくなり、好奇心を晴らすべく密かに探偵をやとった。もちろん自費で、会社の誰もがその事実を知らなかった。そしてひと月が経った頃、探偵の報告書が尾釜の自宅に郵送されてきた。尾釜はそれを見て驚いた。

「なにっ! 美味い料理を作って満足させた、だと?!!」

 何を隠そう、増毛は元一流シェフで、コック長を務めた特異な才能をもつ料理人だったのである。その彼がなぜ料理と関係がない鬘物産に入社したのか? という意外な疑問はいまだにき明かされていない。


                    完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ