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こんなん考えたシリーズ・「おっさんとゴブリンとタマちゃんとダンジョン」 2

 ゴブリンコガネはいい感じに育っていた

 幼虫期間は大体一ヶ月ぐらいで、寿命は五年位

 このへんの所は設定したのが山田自身であったため、非常に分かりやすかった

 最初に出来上がった「ゴブリンコガネ(女王)」は、タマが言った様に美人だった

 人間の言葉とゴブリン語も話せるため、コミュニケーションもとりやすい

 ただ、こういった種族の女王に有りがちで自分では殆ど動かず、能力も低かった

 ニコニコと穏やかな笑顔を常日頃から湛えているヤマトナデシコ然とした見た目なのだが、オツムも非常に弱いようだ

 会話の内容は主に下ネタと腹が減ったというものばかり

 真社会生物の女王としては、ある意味正しい姿なのかもしれない

 山田的にはビジュアルは人間でもゴブリンの方がよっぽど全うな生物に見えるレベルであった


 山田には基本的にメシが要らず、ダンジョン内で他の生物が死ぬことにより生きながらえるシステムになってる

 睡眠も休憩も食事も基本的には必要ない

 記憶の整理なども随時行われているらしい

 そんな山田のダンジョンの主な収入は、ゴブリン達によって賄われている

 女王が最初に産卵した卵はまだ幼虫だが、ためしにとポイントで購入した成虫は既に稼動していた

 ゴブリンコガネに乗ったゴブリン達の狩りの効率は、今までの数十倍に跳ね上がったらしい

 狩りにかかる人数と危険が劇的に減少し、現在ゴブリン達はそれまで狩りに要していた時間をほかの事に費やせるようになっていた

 住処を整えるもの

 狩りの道具を新たに作るもの

 畑仕事に精を出すもの

 スズキを中心に、戦闘訓練を始めるもの

 どのゴブリンも勤勉だ

 対して山田は、何もしていなかった

 基本的にのんべんだらりとその辺をふら付き、時折貯まったポイントでゴブリン達に食べ物や武器を振舞う程度だ

 魔石を作る虫も既に完成しており、育成も順調

 既にやる事がなくなってしまったのである

 このままではまずい

 いくら広げなくてもいいからって、コレは人としてまずかろう

 そう考えた山田は、ダンジョンの拡張に乗り出すことにした


「というわけでタマちゃん。ダンジョンだけど。まず何すればいいだろう」


「穴を掘ったらどうでしょうか」


「ポイント消費で?」


「そういう機能はありません。手で掘ってください」


「むちゃをいいおる……。彫る用のモンスターくれさい」


「ポイントで掘削用のゴーレムがあります。燃料はマスターの魔力ですね」


「じゃあ、それで」


 山田は早速掘削用ゴーレムを購入して、ダンジョンの拡張を始めた

 掘削ゴーレムのビジュアルは、モグラっぽいものだ

 岩か何かで出来ており、大きさは3m近い


「掘った土はどこへ?」


「一旦ゴーレム内の亜空間に収納され、溜まったらどこかに出て捨てるようです」


「ベンリダナー」


 モグラがダンジョンを掘っているのを横目で見ながら、ダンジョンの内部の構成について考えていく

 ダンジョンにはいくつかパターンがあるらしい

 内部をいわゆる「迷宮」として作り上げ、入ってくる人間を主に殺すためのもの

 独自の生態系を作り上げ、人間それ以外問わず内部で生物を殺すもの

 山田が目指すとするならば、どう考えても後者だろう


「そういった場合は、まずダンジョンを掘ります。そして、光を取り入れる穴を適時縦に掘って置きます」


「空気の入れ替えとかにもベンリそう。そこから外部のエネルギーを取り入れるのね。水とか光とか」


「そうです。ダンジョン屋根部分には、空気中の魔力を取り込んで光る苔を繁殖させます。蛍光灯ぐらいの光量になりますよ」


「なにそれすごい」


「その光を頼りに、ダンジョングラスと呼ばれる植物を地面に増やします。それを食料にする草食モンスターを増やし、更にそれを糧にするモンスターを増やします」


「生態系の完成かぁ。上手くそうなるようにバランスをとるのがコッチのお仕事?」


「そうなります。より早くその循環が完成するように手伝う人員が必要なので、本来は色々お手伝いモンスターを作るもの、なのですが」


 お手伝いをしてくれる人たちには当てがある

 ゴブリンの人たちだ

 下手なお手伝いモンスターなどを作るよりも、余程上手くやってくれるだろう

 狩りの手が空いた今なら、なおさらなはずだ


「いえ、でも手伝ってくれますかね」


「後でスズキさんに相談してみよう。ほかに考える事はあるかね?」


「いい加減スズキさんたちに頼りすぎなので、自前の実行部隊ぐらい欲しいですね」


「だよね」


 すごく今更感漂う言葉である

 今現在の山田は、スズキたちゴブリンが取ってきた獲物におんぶに抱っこだ

 下ネタ食欲魔王と化している女王への対応は一応山田がしているが、生まれている卵や幼虫の世話はゴブリンたちがしている

 このままでは、食わせてもらい、尚且つ守ってもらい、ときどき酒とか美味しいものを出すだけの存在になってしまう


「それはそれですごく快適」


「いいと思います。ってちがくて」


「えーと。じゃあ、オススメのモンスターいるの?」


 タマちゃんが紹介したのは、インセクターと呼ばれる昆虫人類種

 その中でも、スズメバチに近い種族とされる「ホーネティアン」だ

 蜂を祖に持ってはいるが真社会を作らず、オスとメスで卵を守り育てる種なのだとか

 ある程度集まって生活はするのだが、社会活動などはしない

 どちらかというと戦士然とした種族なのだという


「寿命は十年ほどで、年に五つほど卵を育て、孵します。作るときに少しいじれば、ダンジョンマスターに生まれながらに忠誠を誓うようになります」


「いいなぁ、それ。ちなみに知能は?」


「さほど高くないようです。カタログスペックでは、ええと……」


「どうしたのよ」


「はい。ゴブリン程度、と書いてありますが」


「何それクッソ頭いいじゃん」


 山田とタマちゃんの中で、ゴブリンはとてつもなく頭がいい種族とされているのだ

 そのゴブリンと同じレベルという事は、ホーネティアンもかなり頭がいいということになる


「かなり魔力が高く、魔法を連続で放つ事もできるようです。ただ、回復は遅いので、一日に何度も使えるというわけではないようですが」


「蜂の一刺しみたいな感じかしら」


「スズメバチは相手を何度も刺せる、といいますが。低級レベルの魔法を連続して放ち相手にダメージを与え、手持ちの武器で止めを刺すというのが基本戦術だそうです」


「なにそれこわい」


「使う魔法のカスタムも可能なようですね」


「魔法か……じゃあ、スズキさんに相談しよう」


 結局、スズキさんにおんぶに抱っこだった




 戦闘訓練をしているスズキの元にふらふらと接近し、山田は相談を持ちかけた

 まずは、ダンジョンのことについてだ


「はぁ。なるほど。山田さんが作ったモンスターがダンジョンの中で死んでも、ポイントになるのですな」


「作るときより随分ポイントは割り引かれますが、ポイントの還元は可能なのです。世代交代で増えていけば、結果的にはプラスになります」


「へー、そーなんだぁー」


「それは便利ですな。そういう訳でしたら、勿論お手伝いさせていただきます。出来れば、お礼は頂きたいですが」


「それはもう。勿論ですよ。任せてください」


 山田は胸を叩いて、請け負った

 何しろここ最近で、ゴブリンの人たちの好みは調査済みだ

 きっとご満足いただけるお礼が出来るはずである


「大型の熊やら狼やらが迷い込んだり、そのほかの魔獣も縦穴や他の横穴から入ってくるでしょうから。我々の食料にもなりそうだ」


「ダンジョンの中で止めをさしていただけるなら、大歓迎ですよ」


「ちなみに、タマさん。山田さんが作ったモンスターは、私達が倒してもよいものですか?」


「ダンジョン内でしたら、ポイントになりますので構いません。殺しつくして頂く訳には行きませんが」


「え、殺しちゃってもいいんだ?」


「そういったモンスターを狙う人間、生物をおびき寄せるために、生態系を作るわけですから。殺しつくさない限り、問題ありません」


「食料や素材を求めてくる冒険者も、狙うわけですな?」


「流石、スズキさんです」


 豊かな生態系をつくり、それ自体を餌に、そして、入ってきたものを殺すための天然の罠とする

 そういう種類のダンジョンは、意外に多いらしい

 確かに、ただの森でも危険度は高いのだ

 危険度の高い魔獣は、その体自体が希少である場合が多い

 となれば、当然それを狙ってくるものも少なくない

 そういったものをわざと数多く配置すれば、放って置いても得物はダンジョンに飛び込んでくる

 運がよければ欲しいものを手に入れ、運が悪ければ、というか、多くの場合、その狙っていたものに殺されることとなるわけだ


「上手く出来ているものですなぁ。私達も中に入るときは気をつけましょう」


「スズキさんたちには逐一内部の情報教えますんで。何がいるか分かってれば、対処もしやすいとおもいますし、はい」


 中を整える手伝いをしてくれるゴブリンたちが怪我をしたのでは、話しにならない

 幸い彼らは屈強で優秀だ

 何がどこにいるかなどの情報さえ渡せば、大丈夫だろう

 万が一の場合は、ダンジョンマスターの権限で色々手助けも出来るらしい

 ダンジョン内のモンスターを一時的に動かなくしたりも出来るそうなのだ

 まあ、ポイントを使う行為らしいのだが

 知能があり、ダンジョンマスターに忠誠を誓っているもの以外は、ダンジョン内のモンスターといえども獣と同じなのだ


「あ、そうだスズキさん。相談があるんですけど」


 山田はホーネティアンの事をスズキに説明した

 そして、どんな魔法がいいだろうか、と訪ねる

 スズキは腕を組み、難しそうに考え込んでしまう


「私は低級と呼ばれる類の魔法を、扱える属性でそれぞれ三つ程度使える程度ですから」


「ええと、五属性使えるんでしたよね。十五個? なにそれこわい」


「それと、複数属性の組み合わせですな。二つから三つ、掛け合わせて使っています」


「そんなことできるの?」


「可能ですが、ある程度の訓練と才能が必要なはずです」


「よい師に恵まれまして」


「それって、ホーネティアンに覚えさせられるものなの?」


「モノによりますし、設定に時間がかかるのと、ポイントもかさむかと思いますが。やるだけの価値があるかどうかは、ものによってはあるかと」


「おー。じゃあ、あのー、スズキさん。よかったら魔法のレクチャーとか、していただけると……」


「ポイントを使えば、マスターも魔法を使えるようになります。お願いできれば非常に助かりますが」


「もちろん、私なんかで宜しければお教えしますよ」


 こうして、スズキの魔法教室が開かれる事となった

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