こんなん思いついたシリーズ「千年後の魔法はクッソ不思議なのになってた」
何やかんや世界は神様やらに楯突くこまったちゃんが多いらしい
そういうのは、なんか生物とかを皆殺しにしようとするらしいんだけど良くわかんない
ともかく何やかんやあってオレは勇者なる職業を神様から頂戴して、その役目を終えた
魔王? とかいう、なんかこう、シャカリキ系のワカモノ的ななにか
モンスターを操って悪い事をさせているらしいもの? を、ぬっ殺した
なんでこんな適当な言い方なのかというと、今絶賛死にかけてるからです
はい
天涯孤独で、教会の孤児院に拾われたオレは魔法の才能があった
作るほうにも使うほうにも
普通だと思うんだけど
大学校を主席で出て教会の研究者やってたんだけど、なんかあるとき超おっかない魔王的なものが現れた
人間の生活圏がゴリゴリ削れていく中、突然神様が現れて神託を下す
オレとかあと幾らかの少年少女に勇者として戦え、とか
オレの仕事は聖剣とか装備を作ること
色々作りまくった
デカイ魔法装置、っていうか移動要塞的なのを作ったりもした
金と人員をつぎ込んで、世間に公表されて無い技術までつぎ込めば世の中大体出来ますよ
後一歩って所まで魔王を追い込んだんだけど、なんか巨大化してやんの
しょうがないから、最後オレが要塞で特攻を決めた
多分魔王死んだはず
いえーい
ざまぁ
魔王ざまぁ
勇者っていうか、研究者に押しつぶされてやんの
まあ、ほかの連中は家族がいるしね
オレ別に大切な人とかいないし
よかったんじゃないの、コレで
せめてオレのかっこいい銅像は残せよ
「へいへいへーい!」
なになに、だれよ
「神様でーす」
おそろしくかるい
「別に他の人見てないしね。気取ってても話し進まんし。はい、でね! あのー、お礼をしようと思って」
なにくれるんですか 現金?
「欲しいの?」
すごくいらいないです しんじゃったし
「あのー、神の一柱になるか。人生をやり直すかみたいなのどう?」
うわー 後半魅力的 天涯孤独ってわりと辛かった
「じゃあ、それでいこうか? きちんと親兄弟姉妹がいる暮らし」
いいなぁ あこがれですわぁ
「ただ、ちょっと時間が千年後とかになるけど」
知り合いもいなくなっていいんじゃないですのん? 未来の世界
「けっこうけっこう。ほかにご要望は?」
モテタイ
「それは神の力でも…転生より難しいかな…」
そんなに!? いやいやいや! 異性に持てるだけよ!?
「…ごめん…」
どんだけ!? オレ顔はよかったじゃん!? そこそこ!! そのスペックで一つ!
「確かに君顔はよかったけど、モテタ?」
てめぇ! 神様でもいっていいことと悪いことがありましてよ!?
「あのー、コレについては本当にあれ、申し訳ないんですけど。その辺はー創生とか? 世界を作りかえる的なーなのがー、必要になるんでー。そういうのが得意な? 神ならあのー、ワンちゃんあるかなーって。でもほら、私そういうのムリだから」
努力! そこは努力しよう! なっ! ほら! ハーレムとはいわない! もてよう! な!
「大変遺憾です」
政治家かっ! 政治家かよ! もてたいだけなのにそんなに!? オレのもてなさそんなに!?
「うん」
一言で切るのやめてぇ!?
「さ、そんなわけでお時間となりました。それでは勇者、えーと…勇者よ! 使命を終えたその魂を癒すため、新たな時間へと旅立つのだー」
お前オレの名前忘れただろいま! てめぇーぜってぇー教会にウンコ投げ込んでやるからなっ! ウンコ! 覚えとけよ!!
そんなことが、千年ぐらい前にあった
正確には千七年まえだ
オレは現在、七歳児になっている
性別はついてるほうでお馴染み、男だ
元々男だったのでありがたい
この時代では、オレの生きていた文明が滅びてしまっている
魔法も随分違うものが繁栄している
二歳から少しずつ記憶が戻ってきて、今、正にこのとき、前世の記憶が全て戻った
んだとおもう
たぶん
きっとそうだと、思う
良いんだそんなもんテキトウで
とにかく、俺の知ってる魔法と、この時代の魔法は別物だ
まあ、千年も経てばそうなるか
この時代の魔法も面白そうだし、いいか
前の知識が通用しないのはザンネンだが、使えないわけじゃないし
ちなみに、この時代から見た旧文明は、なんかすごい魔法を使っていた時代的なイメージになってる
オレに言わせればただ方向性が違うだけで別にどっちも同じぐらいだと思う
木工職人と石材職人の違いみたいなもんだろう
どっちもすごいよ職人さん
まあ、それよりもだ
今記憶が完全な形になったと思われるのだが
それよりも大事なことが現在進行形で行われている
「うめぇー! すいかうめぇー!」
「にーちゃーん! ぼくにももっとちょーだいよ!」
「うっせっ! 抱えて運んだの俺だろ! 少しやっただけでもありがたく思えボケ! 暑いからスイカちょーうめぇー!!」
弟と一緒に畑からかっぱらったスイカを食っているのだ
スイカやばいウマイ
死にかけな長老が育てている畑からかっぱらってきたのだが、アノジジィ死にそうなくせに甘いもの系作らせたらクッソうまいな
「こらぁああああ! このクソガキャー!!」
やべぇ、ジジが追っかけてきた
魔法の事とか考えてる場合じゃねぇ
捕まったらムッチャ殴られる
「うわぁあああ! にーちゃーん!」
「泣くなばーか! おらはやくにげんぞ! チクショウ、スイカ半分もて! 食いながら逃げれば軽くなっていくはずだ!」
「さっすがにいちゃん! あったまいー!」
そうだ
今は逃げなければならない
あのクソジジィ、殴る時だけ往年の輝きを取り戻しやがる
結局とっ捕まってしこたま殴られたあと説教された
いつか背後からけりを入れてやるぞあのジジィ
さて
魔法のことについてである
オレの得意とする魔法は、魔法の品物を作り、それに魔法を流し込み発動させるものだ
たとえば剣を作る
そこに炎を出せ、という命令を刻む
魔力を篭めると、火が出る
そんな感じだ
命令の内容によって形状は違う
準備に時間がかかるのが特徴といえば特徴だろう
なにせ道具を作るのには、専門の技術と知識と道具が必要になる
個人で使うような火炎を出すもの
地面に転がってる石を高速で飛ばすものなどは、個人で持ち運べるレベルのサイズではある
だが、城を一撃で吹っ飛ばすとかそういうものになると、とてつもないデカイ道具が必要になる
具体的には投石器ぐらいだ
それに、魔力もクッソ必要になる
あと、オレの時代の魔法は無から有が作れない
氷のツララとか飛ばす魔法は、水を用意する必要がある
レーザーッぽいのとかも、日光とか光のクリスタルとかを媒介っていうか消費しないと使えなかった
その代わり割りと火力はあったんじゃないかな
オレの時代の魔法道具は、今この時代では「消失魔法道具」としてすごい値段で取引されてる
王家とかが所蔵してるんだそうな
なんでも技術が消失してるから作れないんだと
そりゃそうだ
作れるやつも知識もなきゃ、メンテも出来ないだろうしね
でもどうやって使ってるんだろう?
使い方はわかるのかしらん?
まあ、いいや
で、今の時代の魔法
コレがすごい
何がすごいってアナタ
呪文を唱えるんだよ
呪文となえて魔力篭めるだけで、魔法が発動するのだ
オレの時代では不可能とか夢物語といわれた「詠唱魔法」だよ
お伽噺の中だった魔法がここに実現していた
正直、魔法の性能自体はオレの時代のやつの方がいい
空中戦用魔法兵器に載れば、ぶっちゃけ個人でドラゴンと戦える
この時代なら、スゴイ実力者20人がかりになる仕事だ
だけど
だけどよあなた
逆に考えてみてよ
生身の人間がドラゴンと戦うのよ?
そりゃ、剣とかは持つさ
それにしたってお前、人間がばーって掌から魔法撃つんだぜ?
考えられる?
手間隙と金をたっぷりかけた兵器をまともにやりあう人間、しかも素手
もう未知の世界だね
この時代の人間超怖い
そんなの一握りだとか、そういう次元の問題じゃない
そういう人間がいること自体が問題なんだよ
ていうか
ていうか、そうだよ
もっと怖いのがあれだ
この時代の魔法は、無から有を作るんだよ
いや、違うのかもしれないけど、俺にはそうとしか見えなかった
たとえば、「生活魔法」とかいって誰にでも使えるらしき、村の勉強小屋的なところで、教師役のおっさんから習った魔法
掌から水を出すのだ
どばーって
じゃばーって
コレのおかげで、村では井戸は畑用のものしかない
おかしい
ぜってぇー頭おかしい
人間の手から水が出るって…!
火はまだ分かる
なんかこう、実際の火とは違うものだから
過熱した魔力がそういった色に発光して云々とか
でもこの時代のヤツラ、って言うか俺も含めてだけど、呪文唱えただけで水噴くのよ!?
絶対なんかこう、アレだよ!!
それにほら、召喚術とかも使うんだよ!
なんだよ召喚って! 怖いよ!
オレの時代には奇跡の類って言うか、やっぱり実現不可能っていわれてたのに!
いや、まあ、落ち着こう!
ここは未来だっ!
未来技術っぱねぇ!
まあ、そんなわけでアレだ
俺に言わせれば古代魔法とか消失魔法とかいわれているあの頃の魔法よりも、今の魔法の方がよっぽどいかれている訳だ
そんなわけでオレは、近所の鍛冶屋のとっつぁんから失敬してきた鉄の板を、川っぺりで加工していた
どういうわけだとか突っ込んじゃうやつ
女の子のもてないぞっ!
はい
ね
はい、とにかくね
鉄を叩いて形を変えるってのは、本格的にやらなきゃ割りと簡単だ
石を積み上げてトンネルを作り、そこで炭とかを焚く
風が上手く抜けるようにすると、割と高温になる
こいつに火箸とかで鉄板を入れて、ハンマーで叩けばいい
今回オレはデカイ釘もくすねてきていて、それを押し付けて線と穴をつけている
鉄の板に線を引き、穴を空ける
今の時代の人間が見ても何のこっちゃ分からないだろうが、コレは簡易な魔法道具だ
「にーちゃーん。なにつくってんだよぉー。腹減ったよぉー」
「俺も減ってんだけど、我慢しろ! おもしれぇーもん見せてやっから、っと」
完成した板は、土をかけて冷やす
待つ事しばし
近くの川でとった魚を残り火で焼いて食い、全て食い尽くしたあたりで、板を取り出す
まあ、急造品なので性能は贅沢は言うまい
オレはそいつに魔力を乗せる
すると、それにあわせて光の刃が現れた
伸びた長さは、30cmぐらいだろうか
如何にも中途半端な長さ
用意してあった木の枝を切りつける
切れ味はまぁまぁか
長くは使えないだろうが、一年ぐらいは使える、と、いいなぁ
「うをぉおおおおおお!? にいちゃんなんだそれ!? すげぇー!!」
「これはな。伝説の勇者が持っていたといわれる光の剣だ」
「まじで!?」
「嘘に決まってんだろばーかおまえ、ただのナイフだよ、ただの。お前だって作れるっつーの。簡単な魔法だっつーの」
「えー!? 魔法ってファイヤーとかショックボルトとかでしょ?」
そういった魔法は村でも教えられるおっさんがいた
というかぶっちゃけ、うちの村は開拓村でモンスターとかもっさりいるので、魔法が覚えられる奴はガキでも魔法を教わる
オレは今七歳なので教わらないが、もうしばらくしたら教わるだろう
そして
コレは内緒なのだが
うちの弟は既に攻撃魔法が幾らか使えるのだ
恐ろしい事に、この弟は大人が唱えていた呪文を空で聞いて覚え、魔力の篭め方も自力で学習したのである
末恐ろしいガキだ
オレと一歳違いなのだが、前世で魔法の天才といわれたオレよりもすごいんじゃなかろうか
まあ、オレの場合は勉強してた秀才ですけど
この弟のすごいところは、その魔法を食い物を得ることに使うところだろう
育ち盛りはとにかく腹が減るのだ
ちなみに、弟に魔法を使わせているのはオレだった
作戦参謀というやつだろうか
そしていうまでもなく、このナイフも何を隠そう飯を得るために作ったのだ
「まあ、そういう魔法もあるけど、こういうのもあるんだよ。コイツぐらいの威力があれば、いも食えるぞ。いも」
「ええ!? マジで!? すっげぇー!」
芋というのは、村の周辺に生息する「ツタニンギョウ」と呼ばれる生物の事だ
植物なのだが、ツタで作った出来損ないのニンギョウのような形状をしている
自分で動いて日の光を浴びながら、水場で水を補給したりするアクティブな草だ
千年前にはいなかったんだけどなー
まあ、今いるモンスターの大半は千年前には見たことなかったけど
で、だ
そのツタニンギョウの中にはサツマイモっぽい芋があるのだ
それがしこたまうまい上に、腹にたまる
だが
「お前の魔法だと威力がありすぎるし、武器になるようなものを持っていくとかーちゃんに危ないって殴られるだろ」
「とーちゃんにもなぐられるね」
「あと、ねーちゃんにもな。一番いたいのはねーちゃんだが」
「ねーちゃんタマけるんだもん…あれはないよ…」
正に非人道の極地である
いつか仕返ししてやるからなあのクソねーちゃんめ
片思いしてる警備のロイにいちゃんにあることないこと吹き込んでくれるわ
まあ、いまはそれはいい
「とにかく。このナイフならツタニンギョウぐらい切れるはずだ!」
ツタニンギョウは2mぐらいでクッソデカイが、動きはノロイ
ただ、むっちゃ堅いのだ
魔法で吹っ飛ばすと芋が無残な事になり、芋を安全に取り出すには刃物が必要なのだ
生半可なヤツじゃムリだが、コイツなら事足りるはず
なにせ対魔獣用ゴーレムの主兵装にも使っていたやつの小さい版だもの
「すっげぇー! これでいもくいほうだいだぁー! さっすがにいちゃん、かしこい! えらい!」
「ふっはっはっはっは! コレで芋は全てオレたちの手中だぁー!」
何を大げさなと思うかもしれないが、成長期の腹の減り方は異常だ
食欲にすべてを支配され、世界を滅ぼしかねない勢いがある
だが、食糧難は今ここに解消されたのだ
芋はオレたちのものである
「ギャギャ!」
「ギャギャギャギャギャ!」
「なんだ弟よ、品のない笑い方をするんじゃない」
「ボクじゃないよにいちゃん」
「じゃあ、だれ…」
ふりむいて、オレは固まった
そこにいたのは、六匹ぐらいの緑の子鬼
ご存知ゴブリンの人たちだったのだ
ヤツラは凶暴で理不尽
食欲と殺戮衝動だけで動いてるようなステキな生物だ
良く村の畑を襲って、警備の人に倒されてる定番モンスター
だが、一般人では勝てない類のヤツである
何でこんなところにこんなヤツが
いつもは村の周りを回ってモンスターを退治してる、警備の人が倒すか追っ払うかしてるはずなのに
くそ、サボりやがったなアホ警備め
確か今日はジョンソンところのアホ息子だったはず
結婚して浮かれてやがんのかあのやろう、後でタマに蹴り入れてやる
ゴブリンの人たちは、どうやら魚の臭いに釣られてやってきたらしい
香ばしくて美味しかったよ
臭いだけで満足して帰らない?
むりかー
だめかー、やっぱりオレラのほうにくるかぁー
ゴブリンさん達はやる気満々だ!
「にーちゃぁあーん!」
「情けない声出すなバーカ! お前考えてみろ! ここでやられたら大変なことになるんだぞ! かーちゃんに怒られるんだ!」
「ひぃいいいいい!!」
ゴブリンよりもかーちゃんの方が怖いのよ
飯とか抜きにされるしな
うわ、想像しただけで寒気が…
実はオレタチがゴブリンに囲まれるのは、二回や三回ではない
その度に弟に派手に魔法を使わせて吹き飛ばしていたのだが、それをやるとまたクッソおこられるのだ
かーちゃんに見つかるから
なんとか隠密裏に事を済ませる必要がある
丁度よい武器もあるし
「お前強化魔法使えるだろ! 俺にかけろ! ナイフできるから! ゴブリン!」
「あぶないよにーちゃん!」
「だから強化しろってんだろうがぁ! オレ生活魔法しかつかえねぇーんだぞ! いいか、お前に近づいてきたやつは小さい魔法で追っ払えよ! 間違ってもエクスプロージョンなんてぶっ放すな!」
「でもにーちゃぁーん!」
「飯抜きにされるぞ」
「任せて。ありったけの強化魔法で援護するから。ボクに近づいてきたのは追っ払うから、止めは刺してね」
「おお、たのむぞ!」
頼もしい弟でなによりだ
食い物がかかると、人間は普段以上の力を発揮するものなのである
結局ゴブリンは全て倒し、戦いは無事にオレタチの完全勝利に終わった
生まれ変わる前は研究者だったとはいえ、一応勇者やるために軍隊訓練も受けていたのが役に立った
だが、まさかそのときの様子をねーちゃんに見つかり、しこたま殴られた挙句
かーちゃんに告げ口されて、飯抜きになるとは
このときのオレタチは想像もしていなかったのであった