クラス丸ごと転移したけど別に争う必要は無いと思う 2
とりあえず、生徒六人は自分達の能力をお互いに確認する事にした
実際に能力を使っての確認である
「はっ! 能力の確認? ばかじゃねぇの? そんなことしたら弱点だってばれんじゃネェかよ! お互い殺し合いするかも知れネェのに、そんなことできるわけねぇーじゃん!」
「たしかに、加藤の言うとおりだ。だが、この場では得があるんだよ、ばーか」
「そのとおりかもしれないけどさぁ。殺し合いなんてせず、助け合う未来もあるわけだろぉ? ボクぁーそのほうがいいと思うなぁ。そんなに不安なら、まずはボクが能力を見せるよ」
「内籐はにこにこしながらそういった。きっとあいつは本当に能力を見せるだろう。そうすればクラスの雰囲気は変わる。そこで、オレも能力を見せる。偽装したものだけどね」
言葉を発してからいちいち動きを止めてモノローグっぽいものを挟んでいる男子を、女子達はうろん気な目で眺めている
「なにやってんのアンタら」
「え? クラス転移モノあるあるごっこ」
「オモシロイヨ」
「あほなことやってないでさっさと確認するわよこのボケ!」
「「「はーい」」」
とはいえ、神様に能力を貰う時に既に全員確認済みだ
お互いの能力の確認、というか、実際に使ってみた感じの確認というのが正しい
「じゃあ、まず委員長の内籐」
「ボクのは植物操作。種を一気に発芽させたりできるよ。あと、武器にしたり、相手に植え付けた植物を発芽させたりも可みたい」
短期間で品種改良なども出来るらしい
植物を「操作」する
正にそんな能力だ
「しょせん草じゃない」
「おもったぁー!」
「おめぇ、真っ先にしぬやつのせりふだぜそれ。草甘く見んな。毒のある草とかあるだろうがよぉ」
「ここ異世界だしねぇ。色々な草もあるんだよぉ。マジックマッシュルームとか」
「それ草じゃないし、方向性間違ってるし……」
「つまり攻撃にもつかえるってこと? なら使えるわね」
「だよねぇー!」
「なんなのもう、うちの女子勢マジ怖い」
「今に始まった事じゃないじゃない」
男子が肩を叩きあい、慰めあう
さめざめと泣く男子の背中は、哀愁がただよう
「で、つぎ。加藤」
「オレのは、“千秒間の擬物品創造”。魔力を消費して何かを作ることが出来る。ただし、それはあくまで偽物で、存在を維持できるのも十六分四十秒だけ。形状が維持できないほど破壊されると消えてなくなる。モノによって必要な魔力も変わるから、そもそも作れないものもある」
「クソ使えないな」
「消える武器なんて武器じゃないわ」
「ありえないよねぇー!」
「まぁまぁ。かんがえてみなてぇー。銃とかだって作れちゃうんだよぉ?」
「おお。作れるぜぇ」
それを聞いたとたん、女子三人の目の色が変わった
何かいいだす前に、加藤は釘を刺す
「いっとくけど、俺の手から離れると数十倍の早く消えてなくなるからな。てめぇーらの武器なんざつくんねぇーぞ」
「まあ、そのかわりブルドーザーとかも作れるみたいだしねぇ。ベンリには違いないよぉ」
「何だ」
「びみょーい!」
「期待させるな、ボケが」
「ホントなんなの。コワイ」
「じゃ、男子は最後、斉藤ねぇー」
「はいはい。えー、オレのは“説明しようっ!”だね。モノを聞かれたとき、神様のデータベースに瞬時にアクセスして、そのことについて応えられる。ただアクセス制限があるから、応えられる範囲が限られてて、それ自体が分からない事もある」
あんのじょう、女子の顔が曇った。
ゴミくずでも見るかのような目が、斉藤に向けられる
というか事前に知っていただろうに、なぜそんなめをむけられるのか
理不尽というのはすぐそこにあるものらしい
「クッソ使えないじゃない」
「きもぉーい!」
「存在自体が無駄だな」
「ほんっと容赦ないよねぇ、アナタガタ」
「あのなぁ。コイツがいれば食い物やら物の価値。道具の使い方からなんだって大体わかんだぞぉ?」
女子達はすごさがいまいち分からない様子だ
斉藤は少し考えた後、指を立てる
「初めて新宿駅に行っても迷わないし、食べてもいないお菓子の味がわかるよ」
「なにそれすげぇ!!」
「やばぁーい!」
「なんだ神か」
分かってもらえたが、斉藤はさめざめと泣いた
他の男子は静かにその肩を叩く
悲しみを共有する事で、人の絆は強くなるのだ
「で、ボクらはこれでオッケーとして。女子のほうね。雪ちゃんから行く?」
「そうね。私のは魔剣よ。炎や氷なんかで出来た剣を作り出すことが出来る。あとそれに付随する身体能力強化」
「なにそれこわい。超暴力的」
「身体能力強化って。もともとたけぇーじゃねぇーかよ」
「うっさいわね。アタマカチ割るわよ」
雪はいったらマジでやる系女子なので、男子達は黙った
まだ命は惜しいのだ。
「じゃー、つぎはウチねぇー! うちのは、鉱物とかぁー、土とかを操るのぉー。飛ばしたりぃー、身にまとったりぃー!」
「月子の能力なら天然素材でパワードスーツを作れるってことだね。あとロボットっていうか、ゴーレムみたいな?」
「でけぇのか。無茶苦茶だなぁ」
「これでぇー、コブシとか作ってぇー、なぐりつけるのぉー! 相手チョーひきにくぅー!」
「やだー。ちょーうれしそーでこわぁーい。タスケテー」
「ムリです」
なんだかギャルっぽい口調な気がする月子だが、発想は野生児のそれだ
伊達に銛突きが得意なわけではない
「最後は花かぁー。どんなのうりょくなんだっけ?」
「私のは、サイコキネシス。自分に距離が近いほど強い力を発揮できる、不可視の力場だ」
「花ちゃんの、つよそぉーだよねぇー!」
「単純明快だけど、単純に強いタイプだよね」
「おっかねぇな」
「おやおやぁ? コレはまずいかもよ?」
声を上げたのは、内籐だ
植物操作能力で周囲を警戒していたようなのだが、何か変なものを捉えたらしい
曰く、二足歩行のブタみたいな顔のヤツ、だとか
「オークじゃん」
「やだぁー! 陵辱とかされるぅー! やられる前に殺すしかないよねぇー!?」
「そうね。エロゲーに出てくやつとか生きるカチないし、チリも残さず焼き払いましょ」
「まてまてまてまて。オークって言っても、ソッチ系じゃないかもしれないでしょう? 落ち着こうよ」
「うッさいわねこのクサレ能天気野郎! そういう慎重ですアピールいらないのよ! とりあえず殺すわ!」
「極論過ぎる……。そうだ、斉藤! てめぇーオークについて説明しろやぁ!」
こういうときは斉藤の出番だ
「ああ。このあたりのオークは、大体エロゲーみたいな感じで女の人を苗床にするみたいだね」
「なにそれまじちょう洒落にならねぇーやつじゃねぇーかよ。内籐、コッチ近づいてんのか!?」
「まっすぐ来てるみたいだねぇ」
「じゃあ、決まりだな。とりあえず、全殺しだ」
「だよねぇー!」
「アンタ達、レディーファーストなんだから最初はアタシたちに譲りなさいよ!」
女子三人はそういうと、それぞれに戦闘準備を始める
その動きに躊躇は無く、襲ってくるであろう相手への恐怖は無い
実は六人ともそれぞれに色々な島に渡り、動物に襲われたり、動物の解体をしたりした経験がある
法律で禁止されているからおおっぴらにはいえないが、狩りもしたことがあった
離島の野生児なのだ
「どうしよう。全然戦いたくないからスルーしちゃう気満々だけど、コレって最初はやっぱり男の子の仕事じゃない?」
「ほっとけ。獲物奪ったらこっちにおそいかかってくっからよぉ」
「こわいよねぇ」
初めての戦闘で、オーク十匹という群れに襲われたのだが、女子三人が圧倒的力で制圧したのは、この数十分後である
女子の名前は「雪月花」になりました いえい
さて、名前・一人称・キャラクター・能力です
内籐・ボク・へらへらしてる・植物操作(植物をさまざまに扱える)
斉藤・オレ・普通っぽいオタク・説明しようっ!(誰かに何かを聞かれると、世界の記憶からデータをダウンロードできる 制限があるので絶対にすべてわかるとは限らない)
加藤・俺・ヤンキーっぽい良識人・千秒間の擬物品創造(チューニっぽい名前の能力 千秒間の間だけ魔力で物品を作り出せる)
雪・アタシ・凶暴・魔剣(様々な魔剣を作り出せる また、それを扱う身体能力)
月子・ウチ・ギャルっぽい口調に見せかけた野生動物・大地の武装(岩や土などの大地に関わるものを身に纏い武器とする その延長で、クロスボウのように扱い飛び道具としても使用可能 名前も含めて、月子本人は性能をよく理解していない)
花・私・ドsめがね委員長・サイコキネシス(単純明快でこの以上なく凶悪な能力)