第八話
「…。」
医者は、母さんと父さんに話があるって言って隣の部屋に入った。
暗い部屋だなぁ、なんかやだ。
こわい。いたい。きもちわるい。
おれ 死ぬ?
…死ぬの?なぁ、誰か。
誰か!
『かずとし。』
…香澄…。
香澄、あいたい…。
…や、だめだ。
だめだ、こんなとこ、見せらんない。
やばい。
目を閉じたら、死んでしまいそうになる。
ぐるぐる、頭回る。
痛 い。
「三村君、ごめんな。体気持ち悪いだろう、今拭くから。」
男の看護士が話しかけてきた。
拭くって…。
そいつは、俺の着てるものを脱がせて丁寧に体を拭いてくれた。
…やめろよ、気持ち悪い。
いやだ。
悔しい。
こんなんも自分で出来ない。
そう か。
俺はどのくらい眠り続けてた?
その間ずっと 体についてた気持ち悪いもの。
口に酸素送るやつ?とか…あとケツも気持ち悪い…。
そりゃ、寝てる俺がトイレ行けるわけないけど。
悔しい。
悔しい。
悔しい。
それを声に出来ないことが また。
「…ッ。」
泣きそうになった。
もういっそ死んでしまいたいと思った。
「和俊…っ。」
母さんと父さんが帰ってきた。
悲しい顔?
ああ やっぱ俺 死ぬの。
「和俊、大丈夫?どこか痛いところない?」
バカだな…痛いよ 全身痛い。
でもそれより、悔しい。
トイレも行けない。
風呂にも入れない。
汚いとこ全部見せて 全部世話してもらわなきゃなんない。
悔しかった。
恥かしかった。
こんなんなら、死にたい。
もう死んでしまいたい。
ただの晒しもんじゃん。情けねー。
「和俊?」
死にたい 死にたい。
苦しい!しんどい!
もう…嫌だ……。
「し…ぃ……っ、悔し…。」
どんなに苦しくても、それを吐き出す術もなかった。
悔しさに 拳わ握り締める力もなかった。
何だよ俺。
第一声がそれかよ。
親不孝もんだぁ…ごめん…。
ごめん 母さん 父さ……。
母さんは泣いた。
父さんはそれを支えるように立っていた。
俺はそんな二人に目を向けながら、やっぱり生きたいって思った。