第十三話
なぁ。
お前の笑顔は連れてかない。
ずっと笑っててほしいから。
俺は涙を持っていく。
だから俺が死ぬことで 泣いたりなんかしないでほしい。
覚えていてほしいのは 死んでいくことじゃないんだ。
生きてたことだよ。
ずっと一緒に 生きてたこと。
「医者がなんか、帰れって…。」
「絶対明日も来るからな。」
裕弥も耕介も泣きはらした目だった。
見たことねーの。あは。
はは…。
「…ん。」
明日 なんて 俺には。
ないこと多分、何処かで感じていた。
それでも出来るだけ自然に笑った。
「じゃあね。」
それに安心したように、耕介が言って背を向ける。
裕弥が一度だけ振り返って、小さく笑ってまた俺に背を向けた。
一気に静まりかえったそこに、すぐに母さんと父さんが入って来る。
おわ。
もしかして、ずっとこの外にいたのかな。
「和俊…今夜はお母さん達、ずっと此処にいても良い…?」
母さんの言葉に、俺は小さく笑った。
表情で表すことでしか、もう、返事も出来なくなってた。
気付けば視界もぼやけていた。
ボーっとしていたのか、寝ていたのか分らなかった。
ただ体が、ほんとに自分のものじゃないみたいで。
「…。」
ふわふわ 浮いてる。
「…よ、る?」
「和俊…起きた?もうすぐ朝よ。窓もないから、分んないね。」
母さんの即答が返って来る。
その声を聞いた途端何でか眠たくなって、母さんは起きた?と聞いたけど、やっぱり自分はボーっとしていただけだったと悟った。
眠い。