第十二話
耕介も裕弥も泣いていた。
手を取り合いながら、一体どのくらい泣いただろう。
体の何処にこんな水分あったのかなってくらい、涙は止めどなく溢れた。
…人間って体中の水分、半分くらいなくなったら死ぬんじゃなかったっけ?
三分のー?あれ、ニだっけ?
…あ。
あ!?何、大事なこと忘れてんの俺!
泣いて泣いて泣いて、ムードだらけだったその病室で、俺は一人手を離して二人を呼んだ。
なんか分んないけど、笑えてしまった。
「かば…ん、」
俺は裕弥に、事故の時に持っていた鞄を持って来てもらった。
良かった。あったんだ。
もう鞄さえグチャグチャになってんのかと思った。
耕介が中を開けて、指輪を取り出してくれた。
傷一つ入ってないじゃん。
奇跡だ。
「それ…渡して…。」
もー。
何やってんだろ、ほんと、俺。
「約束の日…海に行くつもりだったんだ…。」
うん、約束いっぱいしたのに。
ぜーんぶ破っちゃうんだよな。ごめん。
「海?こんな寒いのに…?」
「はは……、ん……。ほら、海が一番…雰囲気出るじゃん?」
ぷ。
笑えるよなぁ、ばっかみたい。
うん。それ、本気だったなんて。
「日曜日にさぁ…朝からバイク飛ばして……海行って、プロポーズでも…て……。」
ああ そうだ。
「シャレになんね…日曜じゃなくて良かった…。」
そうだ、お前を、後ろに乗せて。
あ、れ。
良かった。良かった。良かった。
良かった?
こんな痛いのに。
こんな苦しいのに。
「あいつが無事で……かった……ッ。」
良かったよ。お前は 生きてる。
生きてて。