僕の異空間世界
目を開くと雲一つない晴天の空が見えた。
太陽の光がまぶしく、日射病になりそうなくらいだ。
そして風が吹くたびに目が痛く口がじゃりじゃりする。
体を起こし周りを見てみると、はてしなく続く砂漠が広がっていてだいぶ距離が離れた場所に森が見える。
どうやら異世界に戻ってこれたようだ。
でもなんでまた砂漠なんだろうか?
確かこっちに来る前に写真を写した場所を想像したはずなんだけど・・・まあ今度は森が見える距離
だからいいかな?
「おーい二人とも起きろ」
僕は横で寝ているキュリテとエールを起こす。
「あうー・・・あちゅいです・・・・」
「・・・」ぐでぇー・・・
まあそうだろうね、こんな砂漠でゴスロリ着てたら暑いよね…
仕方ない、あれを使うか。
「異空間能力起動」
赤い目の模様がついた黒い門のようなものが現れる。
僕は二人を抱えてその扉の中に入っていった。
門の中にはピンク色の花を咲かせる桜の木が並ぶ森が続いていた。
「ふわぁ~涼しいです~」
森の中に一軒の小屋があった。中にはベッドが三つと箪笥と本棚が置かれていた。
僕は二人をベッドの上に乗せると再び砂漠に出た。
門から外に出てくると周りが少し暗くなっていた。
空を見上げると空は白い煙…いや、雲に覆われていた。
砂漠なのに雨が降りそうなほど厚い雲、そして少し湿気た空気…。
ぽつぽつと雨が降り始め、地面に落ちた雨水は白い湯気を上げて蒸発していく。
雨は突然ざざぶりになって・・・あ、熱い?
どうやら雨は砂漠の温度のせいで高温になってしまっているようだ。
周りは湯気で方向が分からないくらいに真っ白になっている。
僕は急いで異空間に逃げ込む。
ふう・・・まさか砂漠で雨が降るとは予想外だった。
まったく生物がすみつかないのも納得できる。
「メェー」
近くで羊のような鳴き声が聞こえたきがした。
「メェー…」
「・・・」
茂みの中から体長160センチくらいの大きな真っ白な毛の羊が出てきた。
向こうの世界でも見たことがないっくらい真っ白の毛の羊、さわってみたらとてもふわふわしていて
毛を少し指を通してみるとなんの抵抗もなくすっと通る、毛を一本を両手でつまみ引っ張ってみるけ
どちょっとやそっとじゃ切れそうにない。
もしこの毛でできた毛糸があれば相当な値段で売れるだろう。
足のほうをなでると結構しっかりとした馬のようにしっかりとしているのがわかる。
もしかするとこいつは羊とは別の何かかもしれない。
乗れ、もしかして乗っても大丈夫かも…
乗ってみると馬のような乗り心地にふわふわのクッションがついているようだった。
「めー♪」
羊(?)はパカパカとうまいこと木を避けながら走っていく。
馬のような脚力に、羊のような毛、本当によくわからない生物だ。
「ガァーーー」
突然目の前にライオンが飛び出してくる。
羊(?)は木の上に飛び乗り機を飛び移っていきライオンを避ける。
す、すごい・・・
この子ならば移動手段に使えるかもしれない。
この子の名前を考えてあげるか・・・馬に羊…よし!
「ホープ、よろしくホープ!」
「めー♪」
ホープはさらにスピードを上げてどこかへ向かっていく。
ホープに乗って走っているとホープはキュリテたちがいる小屋の前に止まった。
小屋の前では二人が犬と遊んでいる。
いやよく見るとオオカミ・・・
「ってええ!?」
「ふわ!?」
あれってもしかしてニホンオオカミ!?
キュリテは僕の声に驚いたようでこっちを向く。
「い、いつからいたんですか!?」
あれ、まさかこっちに気づいてなかった?
「ところでその子どこで拾ってきたの?」
ニホンオオカミの顎を撫でるとすごく気持ちよさそうに目を細める。
これは狼というより犬だね。
「エールちゃんが連れてきました。」
「きゃんきゃん!」
ニホンオオカミ(と思われる)はパタパタと尻尾を振りながら鳴く。
まあおとなしそうだから大丈夫だろう。
「まあかまれないようにね…」
僕は小屋に入って服を脱ぐ。
さっきの雨のせいで服がぺったりとしていて気持ち悪い。
服を脱いだ時に横にある鏡を見ると、お腹周りが細くなっているような気がする。
ちゃんと毎日食事をとっているけど・・・やっぱりもうちょっとお肉を食べたほうがいいかな?
そういえばさっき雨に降られたのに髪が乾ききっている。
少し跳ねると体についていた水滴がすべてぽたぽたと落ちていく。
おお、これは便利…。
箪笥を開けてみると中には長袖シャツとジーンズが一着入っていた。
着てみるとジーンズはぴったりだけれど、シャツはお腹周りがかなりぶかぶかだった。
仕方がないからシャツの端を一ヵ所くくり、ぶかぶかだったしゃつを調整する。
少しへそが出るけど気にしないでおこう。
僕は先ほど脱いだ服を外に干した。
さてこれからどうするか、さすがにまたあの雨の中に出る気にはなれない。
仕方ない、この異空間内の探索でもしようかな?
僕は明日は晴れるといいな、と思いつつ北の方向に向かって歩き出す。
しばらくあるくと、ひろい湖があった。
湖はとても澄んでいてきれいで、いろんな魚が泳いでいて水を飲んでいる鳥もいる。
湖の真ん中のほうにはなえれて陸部分があり、そこで何かがいるのがわかるけど、何なんだろうか?
ちょっと行ってみてみようかな?
「天使の力120番”水歩”起動」
僕は靴を脱いで、右足のつま先から水面に乗せる。
つま先をつけた水面から波紋が広がっていった。
ゆっくりと足の裏全部がつくように足を水面につけていく。
右足の裏には、ひんやりと冷たく気持ちい感触が響く。
続いて左足を乗せる。
水に乗るのは少し変な感覚だ。
氷の上に乗るよりも優しい冷たさで、バルーンハウスのような不安定な感じではなく、もっとしっか
りした感じだけれどやわらかい足の裏に感じる感触、初めて感じる不思議な感触だ。
僕はゆっくりと散歩をする歩調で歩いていく。
ぴちょん、ぴちょんと足を上げるたびに足の裏から滴る雫が水面に落ちる音の響きが心地よい。
離れた陸がしっかりと見えるところまで来るとなにがいたのかが分かった。
寒い人の住むことができなく、どこの国でもない氷の島に住む飛ぶという能力を捨て泳ぐという能力
を手に入れた鳥、ペンギンだ。
数匹のペンギンが湖の中に飛び込んで、魚を取って陸にある穴に帰っていく。
「キュウ!」コテン…
あ、一匹こけた。
ペンギンは跳ねて湖に戻ろうとする魚をがんばって捕まえようとするけど、なかなか捕まえることが
できない。
がんばれ、がんばれ。
そこに別の鳥が飛んできて、その魚を鷲掴みにして飛んで行ってしまった。
「キュウ・・・」
「・・・」
がんばって生きていきなよ、ペンギン君。
僕は次の場所に向かった。
森を歩いているとワイヤーのようなものが見えてきた。
指で軽く押してみるとピンと張られた糸のように簡単に曲がり、離すと元に戻る。
上を見てみるとそのワイヤーのようなものが何なのかわかった。
見たこともないほど巨大なクモの巣…
すには何匹もの鳥が引っ掛かっていてさっきペンギンから魚を奪っていった鳥もいた。
鳥は頑張って蜘蛛の巣から抜け出そうとするけど、よけいに絡み付いていくばかりだ。
一匹も虫が引っ掛かっていないところを見ると、大きな虫はこの蜘蛛以外いないのかもしれない。
体長二メートルくらいある蜘蛛が巣にのぼり引っかかった鳥たちを食べていく。
真っ赤な血がしたたり落ち、蜘蛛の巣と地面に生えている草を赤く染め、骨や羽根の残骸が落ちてく
る。
蜘蛛は鳥たちを食べ終わると、口から白い液を出し、横糸を溶かし血も落としていき白い縦糸だけの
状態にすると新しい横糸を張っていく。
地面にたれた白い液を触ってみると少し粘々して怪しいほど甘いにおいを発していた。
しかしとくに溶けるようなものでもないようだ。
少しハンカチにつけて水で流すとその部分だけ色がなくなった。
生物には害のない漂白剤、便利だね…
僕は白い液を小瓶に入れると、鋏を取り出し縦糸を切ろうとする。
多分これも何かの役に立つだろうからね。
ぺきぺきぺき・・・
糸が切れる代わりに鋏が・・・
これ持って帰るのは難しそうだな。
僕は縦糸をあきらめてさらに森の奥へと進んだ。
一時間ほど進むと今度は川が見えてきた。
川の向こう岸は一面のお花畑、さらにその向こうにはまだ森が続いている。
花畑には何種類ものアゲハ蝶が飛び、いろんな色のいろんな花が咲いている。
ものすごくメルヘンな感じがするはずなんだけれど、なぜかそんな感じがしないのは川のせいだろう
か?
川の何が変化って?
川が真っ赤なんですよね…
三途の川?
しかもボートまであるからさらに怖い。
そのせいで一見メルヘンな”お花畑”が”死の世界につながる川”に早変わり。
わらえないな・・・
近ずいてみると強い鼻に来るツーンとした刺激のあるにおいと少し肌がひりひりするこの感覚、これ
ってもしかして・・・・。
指を赤い川につけてそれをなめてみると口の中に刺激のある味覚が広がった。
「!!?」
こ、この川、ハバネロ以上に辛い唐辛子エキスを濃縮したような川だ!
僕は持ってきた水を勢いよく飲み干したが、まだ口の中がひりひりする。
これはこれで嫌だな・・・
それに横でこんな川が流れているのによく花が咲いているものだ。
僕はボートに乗って赤い川を渡る。
さて、この先にどうやって行こうか?
一面に花畑があるせいで歩くことができない。
よし今度はあれを使ってみよう。
「天使の力86番”空中散歩”」
体が浮いて固いコンクリートに立ったような足の裏の感触がする。
あ、そういえばさっきの湖で靴おいてきたままだ。あとでとりに行こう。
僕は空中を勢いよく走りだす。
空中散歩は30秒という時間制限つきで、もう一度使うには10分程度時間かかる、さっき湖で使わ
なかったのはこのためだ。
ちなみに水歩のほうは、一日に三時間分まで起動(深夜零時になると強制リセット)なので少しゆっ
くり使用していても大丈夫になっている。
花畑をこえてさらに進んでいくと大量の赤い目のついた真っ黒な壁があった。
明らかに怪しい。
ためしにそこら辺にあった石を投げてみる。
にゅ!
壁から壁の模様と同じ柄の腕が伸び、その石をつかんで投げ返された。
「にゃ!?」
あの壁の目はたんなる模様ではなくしっかりと見えているらしく正確に投げて当ててきた。
「・・・」
少し触ってみようと思って手を伸ばしてみるとまた手が伸びてきて握手をして元に戻る。
もしかするとこの壁には意識があるのかもしれない。
「こんにちは」
ためしに声をかけてみた。
返事がないただの屍…へぶ!?
また壁から手が伸びてきて今度はデコピンをした。
もしかすると心を読んでいるのかもしれない。
にゅ・・・
突然黒い腕が伸びてきて僕を捕まえて壁に引きずり込もうとする。
「え、ちょ!?」
そのまま壁に引き込まれ視界が真っ暗になった。
目を開くとそこはさっきまでいた世界とは全く違った。
白黒の雰囲気の違う森、ここも僕の世界の中なのだろうか?
ふと空を見上げるとそこにはゲームでも見たことのないドラゴンが飛んでいた。
―オプスキュリテ―
お兄ちゃんが森に探検に出てからかなり時間がたち、少しお腹がすいてきました。
もしかして何かあったのかな?
「遅いね…」
「・・・」こくこく
エールちゃんは何もしゃべらないので、少し暇です。
そういえばこの家に本棚があるけどどんな本があるんだろう。
私は赤い本を一冊取出し開いてみた。
”呪われたリンゴ売りの少女”題名からしてあまり明るい話ではなさそう、そう思ったけれど内容は
ハッピーエンドの結構いいお話でした。
「ただいま」
本を読み終るとやっとお兄ちゃんが返ってきました。
お兄ちゃんはボロボロの姿です、いったい森の中で何があったんでしょうか?
聞いてみると「ちょっと変わったドラゴンに襲われた」そういっていつものように笑顔で言いました
。
この世界にはいろんな変な生き物がいましたけどドラゴンもいるんでしょうか。
「それじゃあすぐお昼作るね」
そういってお兄ちゃんは料理を始めました。
できればでいいのでコメントをください