まさかの帰還成功
目を開くと一番に見えたのは自分の部屋の天井だった。
「・・・」
外からは気持ちのいい日差しがさし、小鳥のなく声が聞こえる。
時計を見ると朝の8時を指していた。
まるでさっきまでが長い夢のようであったようなきがした。
起き上がると自分の横にオプスキュリテとリュミエールが眠っている。
どうやらあれは夢ではなかったようだ。
それはそれで少しがっかりだ。
♪~
突然携帯が鳴りだした。
携帯を見てみるとメールが二十件も届いている。
メールの内容は母や父さんからだ。「どこにいる?」や「大丈夫か?」などの安否確認メールだ。
ともかく僕は「大丈夫今帰った」とメールを送り、ぼくのよこでねていたふたりをおこした。
「うーん・・・は!」
オプスキュリテはがばっと音を立てて起き上がると周りを見回した。
「こ、ここどこですか!?というさっきのはいったい!?」
・・・まあパニックになるだろうね。
リュミエールはゆっくりと起きて目をこする。
「おなかぐー」
なんだろう、この二人の温度差…
「えっと…まあともかく体洗ってからにしようか」
これは二人に会ってから思っていたことなのだが、この二人多分何日もお風呂に入っていない。
さて、二人をお風呂まで連れて来たはいいが、まあ当然お風呂の使い方を知っているはずがなく、僕が二人の体を洗うことになってしまった。
2人が湯船につかっている間に僕は妹の部屋に行き着なくなった服を入れる場所をあさる。
さすがにあの二人をあの部分部分が溶けてしまっている服をそのまま着せるわけにはいかない。
「お、あったあった。」
服の山から出してきたのは、クロのゴスロリとシロのゴスロリだ。
勝手に持っていったら怒られそうだが、僕が作った服だし問題ないだろう。
それと適当に選んだ下着を持って風呂場前まで行く。
さっき下着入れをのぞいたときに明らかにやばそうな下着があったからそれは後で燃やしてしまおう。
2人を風呂から上がらして、体をしっかりと拭いてあげてからドライヤーで一気に髪を乾かして服を着せる。
まさかお隣さんに子供の面倒を頼まれて覚えたのがこんなとこで役に立つとは…
さて、次の問題はこの二人に何を食べさせればよいかだ。
冷蔵庫を開けてみると魚の缶詰とイカナゴとマヨネーズだけ、冷凍庫を見れば冷凍ごはんの山、床下収納にはフルーツの缶詰と半分位空になっている漬物の壺…まあおにぎりっくらいしか作れないな。
冷凍ごはんをすべて開けて皿に乗せ、ラップをかけて電子レンジに。
その間にツナ缶を開けてマヨネーズでシーチキンマヨに。
温め終わったご飯は全体的に塩をつけた手で一度混ぜ、一個一個おにぎりにしていく。
具はシーチキンマヨにイカナゴ、おかかに柴漬け、福神漬けに梅干し、細かく切った沢庵にきゅうりの漬物などなど。
のりは日本人にしか消化できないという話があるのでのりはまかない。
まあそんな感じでおにぎり百二十個!(明らかに作りすぎたな・・・)それを二人が座っている机の上に置く。
初めは何かわからず見つめていたが僕が一つ食べてみせると二人は食べ物だと分かり食べ始めた。
さて、二人が食べてる間に僕も風呂に入ってきますかね。
「ふぅ・・・」
僕は体を洗い終えて湯船にゆっくりつかった。
疲れがお湯に溶けていくような感じがする。
こうやってくつろいだのは三日ぶりだ。
このままこっちの世界にずっといてもいい気がするけど姉のことが心配だ。
妹のほうは多分アマゾンに一人取り残されても生きていけそうだが、姉は下手すると一日何も食べないだけで死んでしまうかもしれない。
姉は昔っから非常に体が弱いため十分歩くだけでそのまま地面に突っ伏し、直射日光に当たっているとすぐに
肌がただれ、月に一回は病気になるような人だ。
いちよう今年で成人を迎えたわけだが、当然働き先が見つからず家で引きこもりの小説家をやっていた。
初めは向こうの世界に連れて行かれたのは姉か妹のどちらかかと思っていたが、どうやら姉も妹も両方が行方不明らしい。
まあ、姉のほうははっきり言って勇者というよりも魔法使いって感じだろう。
風呂から上がって体を拭き終ると二階の自分の部屋に行き、服を探した。
ガラ!
「おう、朝倉広海、入る…」
窓があく音がしてみてみると、金髪のつんつん頭の男がいた。
「・・・」
ぶふぅ!
男は鼻血を吹いて窓の外に倒れていった。
「え?ぇー・・・」
鼻にティッシュを詰めた金髪頭の男は僕らと向かい合うように座っていた。
「いやーわりいわりいまさか着替え中とは思ってなくてな。」
男は笑いながらそう言うとお茶をすする。
「はあ・・・ところでどちらさまで」
「あー、そういや言ってなかったな。俺の名はスサノオまあもう会うことねえカモしんねいけどよろしく。」
スサノオ?だれそれ?どっかで聞いたような気がするけど・・・
ああ、あの電話の主か。
電話の通知を見てみると確かにスサノオと書かれていた。
「あれ、でも声が違うような…」
「ああこれ?」
スサノオは自分の体を指さした。
「こいつは俺とは全く別、単にそこらへんでバイク走らせてた男だ。まあ、擬態っていうやつだな。そんじゃあ能力説明の続きすんぞ。」
スサノオさんは何処からかホワイトボードを出してくる。それをみてオプスキュリテは驚いたようだ。
「そういやさっきから気になってたんだがそいつらなんだ?」
「えっと、人拐いから救った少女AとB?」
まあこの設定で間違いないかな?
「あー、異世界の子供か…」
スサノオさんはポケットから携帯のようなものを出し何かを検索し始める。
「ふむふむ、まだ向こうのほうがバランス的にでかいな。まあ大丈夫だろう」
携帯を閉じるとマジックで天使と悪魔の力についてとホワイトボードに書き始めた。
「えっとそんじゃあはじめんぞ、まず天使たちが持つ能力からだが…」
4時間後・・・
「っとまあ以上の112が天使全員の能力と悪魔全体の能力だ。」
え、とまあだいぶ説明省きましたが、まあ簡単に言いますと天使は世界に良いことをし、悪魔は悪いことをする、そんな感じだ。
天使が一方的に良いほうに持っていけばいいんじゃないかという話にもなりますが、よすぎると世界が収縮され
てしまいすぐに滅び、悪くしすぎると逆のことが起こるらしいです。
「くぅ・・・」
「zzz」
自分の左右を見るとオプスキュリテとリュミエールは僕にもたれかかって眠っていた。
「ついでにこれも教えておくが、神と悪魔と天使になれる人数が決まっていて新しい神や天使、悪魔を向かい入れるにはどこかに座があいていなけりゃならない。」
「え、それじゃあ僕がなったということは、まさかお亡くなりになられたとかそういう…」
「いや、単なる休暇」
すごく嫌な雰囲気になる理由だと思ったから恐る恐る聞いたけど違うらしい。
「いやー大変だった、あの爺ずっと働きまくってちっとも休もうとしねえからこっちも大変でさ。800年くらい休まずに働き続けるわ、人の仕事奪ってまでしようとするわ、強制休暇日数150年分ためてるわでさあ。まあ今は人間になって休暇無理やりとらしてるが、あの爺のことだからどっかで働いてんじゃねえのかって思えてくんのよ」
うわー・・・その神様一体どんだけ仕事の虫なんだろうか。というよりも、それもう仕事が趣味みたいな感じになっ
てません?
「っといけねえ、どうでもいいこと話しちまった。」
そういってホワイトボードをきれいにし、次の議題を書く。
「んじゃ次は、固有能力についてだが、天使と悪魔にはそれぞれ固有能力があり、大体は創造系、自然系、破壊系、にわかれてる。まあ、たまにレアケースもあるがそれはどうでもいい。ほい、こいつもて」
スサノオさんは今度は黒い紙を出してきた。
「これは?」
「こいつは”異能絵紙”と言って能力を調べるもんだ。ほれ、持ってみ」
紙を受け取ると、紙に三つのなんらかの模様が描かれた。
黒いフォークと青い星とピンクの鳥居の中に十字架が書かれてる模様、規則性見当たらないんですけど・・・。
「能力三つってことは天魔だな。能力的には・・・破壊の色で、フォーク?こっちは創造系で星だから空間製作か?もうひとつは・・・・・なんだこれ・・・?」
スサノオさんは僕から異能絵紙を受け取るとぶつぶつと何かを言っていた。
「んー・・・ちょっとレアケースが出たみたいだから鑑定すっから結果出るまで待て」
「はあ・・・えっと次は?」
「まあいちよう必要事項はこんだけだ。あとのこまごまとしたのとかはこいつを読んで調べろ」
そういって今度は辞書のような暑さの”天使の奨め”と”悪魔の奨め”と書かれた二冊の本を渡された。
「それにしてもいいのかお前?」
「えっと何がでしょう?」
「だってよ、こっちに戻ってこれたんだから別にずっとこっちにいてもいいんだぜ?」
たしかにそれもいい
でもやっぱり心配なんだよね…姉さんが。
「行きますよ、探している人がいるんで」
「…そうか、ならわかれ言いたい奴に言って来い。俺はひとまず帰るぞ」
そういってホワイトボードをかたづけて窓から出ていこうとする。
「あ、その窓は」
確か防犯用窓・・・
バチバチバチ!!!
「ぎゃー!!!!」
「・・・」
「ふにゃ!?」
「!?」
今の悲鳴を聞いて二人も起きた。
というか借り物の体なのに大丈夫なのだろうか?
とにかく黒こげになったスサノオさんを自分のベッドまで運び寝かせた。
第四話までは自分のブログに乗せていたものなので続けて投稿します