表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巫女と剣と魔王の娘  作者: 朱椿姫
ハテの森
2/40

自分チート、でも世界は甘くない…


二日間走り続けてやっと森が見えてきた。


飲まず食わずの断食 (というかなかった)をしている状態だが怖いほど疲れていない (おなかすいたけど…)これが天使と悪魔の力なのだろうか?


さらにスピードを速くして森へと向かう。



一時間後・・・




やっとのことで森につき、いずみをみつけた。


「やった、水だ!!」


のどがカラカラだから早く水が飲みたかった。


「あっ・・・」


水がほしいがあまり足元を全然見ていなくて木の根で足をつまずかせる。


そしてそのまま近くにあった大岩におもいっきり頭をぶつけた。


 

ガン!!




「いたたたた・・・」


僕は足を水につけながら額に水を飲んでぬれた手を当てる。


非常に額と足がひりひりする。


頭は先ほど岩にぶつけたせいで痛い、多分天使か悪魔の力がなければ死ねていたかもしれない。


さっきこけたことで分かったことがある。


まず、天使と悪魔の力でかなり体が頑丈になっていること。


普通の状態なら、下手をすればさっきので死んでいたかもしれない。


そしてもう一つ、力がかなり上がっていること。


先ほど頭をぶつけた岩が完全に砕け散り岩があった地面に小さなクレーターのようなものができている。


元の世界にいたころは、木の板(五ミリの厚さの)を割る程度が限界だったけどそこらへんに生えている木を板チョコを折るように素手で折れるほどまで力が上がっていた。


ちゃんと力加減をしないと多分触ったものを何でも壊してしまうかもしれない。


で、足の裏がひりひりするのは多分砂漠を二日間走り続けていたからだ。


まあ、はだしで砂漠を二日間はしりつづけていて火傷していないのが驚きだ。


普通なら裸足で立っているだけでもやけどできる。


どうやら熱にも強くなっているようだ。


泉を覗き込んで自分の顔を確認するが額が赤く(さっき頭を打ったせいで)なっているが全然肌が日に焼けていない、むしろ天使と悪魔の力を手に入れる前より肌がきれいになっているような気がする。


それにしてもお腹すいたな・・・


さすがに二日も何も食べていないときつい。


周りには一切食べられそうなものが見当たらない。


泉は底のほうがはっきり見えるほど澄んでいるが魚はおらず、木の根もとにはキノコが生えているが、ピンク色に発光しており食べたら死ねそう。


「・・・」


何気なく近くに落ちている石を口に入れて噛んでみる。



バリバリ、ゴリゴリ・・・



かたさ的には簡単に噛み砕けるが…うん、まずいな。


石を吐き出して口の中をすすぐ。


はあ、お腹すいたな・・・




『きゃーっ!!!』


突然森から悲鳴が聞こえた。


俺は急いでその声のする方に走り出した。




少し先の方に二つの首の黒い犬が何かを追いかけている。


その向こうにはローブを羽織った人が二人見える。


僕は地面をけってさらに加速した。



―エリス―


私は霧の森の調査のためメイドのルピシアと共に大分深い所まで来ていた。


本当は下の方の人がする仕事なのだけれど60年ほど何もして来なかった女神が突然ヒューマン側に祝福の力を使い、魔族側が有利だったのにこのままではまた魔族が独立戦争前の奴隷としての時代が再来してしまうからということでみんな戦争の準備で忙しく戦争には直接参加出来ない、なので私がこの森の異変の調査に向かうと言ったのだ。父はそれにひどく反対したがいろいろと無理を言い魔王軍内でも中の上くらいの戦闘能力を持つメイド長を一緒に行かせるという条件で承諾を得た。


調査の内容はこの森に出現した大量の黒い大蜘蛛だ。


大蜘蛛は各地で不規則に表れヒューマン、魔族、魔獣、虫など生物を次々と食い荒らし去っていく、私はその蜘蛛の巣らしきものがあるとのことでここまで来たのだけれどまったく見つからず探し続けていた。


「ねえルピシア、本当にこの森なの?」


「はい、そのはずですが・・・」


ふと後ろのほうから足音のようなものが聞こえた。


黒くもかなと思い後ろを振り向くとそこには霧ができていた。


この霧は全く関知能力のきかない魔力の塊のような霧でこの霧はこの森でだけ観測されている。


その中から突然オルトロスが飛び出してきた。


「きゃーっ!!!」


ルピシアはその声に反応して剣でオルトロスを両断した。


「大丈夫ですかエリス様!?」


「ええ、でもあなたの剣が・・・」


「あれま・・・ちょっと力入れすぎたようですね」


今入れた一撃で剣に大きなひびが入っている。


霧の中からもう一匹オルトロスが出てくる。


「エリス様はしって!」


私たちはオルトロスから逃げ始めた。


しかしオルトロスのほうが微妙に早い。


私は木の根につまずいてバランスを崩して木に肩を強くぶつけ肩の部分の布がやぶれ血が流れる。


「エリス様!」


ルピシアは私の横に立ちひびの入って折れそうな剣を構える。


もうだめ誰か!



「はあー!!」



誰かの声が聞こえたと思ったとたんヒューマンの女性がオルトロスにおもいっきりとび蹴りを食らわせた。


オルトロスの体ははじけ肉の残骸になった。


どうやら私たちはこのヒューマンに助けられたようだ。


「えっと・・・大丈夫ですか?」


―広海―


大丈夫かと聞いたがどう見ても肩のところを怪我している。怪我はそれほどひどくはないようだけど傷口から菌が入って大変なことになる可能性もある。


「ちょっと失礼」


俺はそう言って彼女の怪我している肩に手を当たらないくらいの所で治れ!と念じてみた。


すると時間を戻しているように怪我が治っていく。


しかも傷だけではなく破れた服までも修復してしまった。


なにこれ、どこのチートキャラ?


メイドの人はお嬢様(多分)の怪我していた肩の部分に手を触れて傷が残っていないか確かめる。


「・・・完治している・・・貴方いったい何者?」


グウ~


気の抜けるような奇妙な音が鳴る。さすがに2日間飲まず食わずはきつい・・・。


「えっと・・・転移魔法に失敗した単なるガキです」


魔法がある世界(予想)だからそう答えてみた。


ールピシアー



ヒューマンはもしものことを予想して持って来たエルフ族の中で食べられている非常食と水を飲んでいた。はっきり言ってあれは味も臭いも無い。


多分エルフ族は小麦の味を楽しんで食べるのだと思うのだがはっきり言って何か工夫しなければ食べれた物ではなかった。


それを嫌な顔一つせずに食べているのを見るとよっぼど空腹だったことが予想できる。


それにしても不思議なヒューマンだ。お嬢様は魔法で正体を隠しているが私は姿を変えることが出来ないからそのままの姿でいるのにまったく恐れた様子がない。


「いやあ、ありがとうございます、助かりました」


ヒューマンはたべおえるとれいをいう。結構害のなさそうなヒューマンだが演技かも知れない。


「改めまして僕の名前は朝倉広海です。いやあもう一時はどうなるかと思いましたよ。餓死してしまうかと思いましたよ・・・」


「そうですか、それはよかったです」


お嬢様、あなた警戒しなさすぎです。


「ところでアサクラ殿はお強いようですが、戦闘型の冒険者ですか?」


「いえ、たんなる学生ですよ」


学生ですと?最近の学生はAクラスの魔物を狩れるのか?少し前はCクラスでさえ集団でなければ倒せなかったのに。


「ところで二つ聞きたいのですけどいいでしょうか?」


「はい、こちらは命を救ってもらった身ですそれくらいならいいですよ」


何言っちゃてるんですか!?もし軍事機密とか聞かれたらどうするのですか!


「ありがとうございます、なら一つめなのですが



   異世界からの来訪者について何か知りませんか?」


「っ!」


「異世界からの来訪者!?」


これは良いことをきいてしまった。


異世界からの来訪者が来るのは大体魔族を殺す為の道具としてだ。


前回一人で四天王の二番目の強さを誇るコキュールを倒した。


神め、私たちを全滅させるつもりでいる気だな


「それは少し分かりません、ごめんなさい。でもそれって本当ですか?」


「そうですけど?まあ、3日前に来たばかりですから」


なるほど、道理で話が出回ってないはずだ。


しかし何故このヒューマンはここまで詳しいのだろうか?


「それでもう一つのほうは・・・」


「えっと、街ってどの方角に在ります?」


「えっと・・・ルピシアわかる」


「はい、確かここから南南西の方角だったと思います」


「ありがとうございます、それでは星の導きでまたお会い出来ることを」


そう言ってヒューマンは走って行った。


南南西ってあっちであっているだろうか?


そう思って風の魔法で方角を調べる。


南南西・・・合っている




‐ 広海 ‐


南南西の方角に向かって走り続けて丸一日、あるのは木ばっかりですすんでいるかすらわからない、方角も確認しないで適当に走ってきたがこっちであっているのだろうか?


「ひゃっ!!」


突然何かに足を引っ張られ中吊りの状態になる。


「ギェェーーー!!」


雄叫びのような鳴き声とともに近くにあった茂みが動き出し、無数の蔦のようなものが伸びだした。


どうやら植物に擬態するモンスターだったようだ。


蔦は体を舌でなめるように撫でまわし服をじわじわと溶かしていく。


「っ!」


このままでは溶かされて食べられてしまう、とっさにその蔦を引きちぎって距離をとった。


「ギェェェェ!!」


「!!」


着地した地面が突然盛り上がり地面から無数の蔦が飛び出し体に巻き付いてきた。


蔦は体の隅から隅まで撫でまわしていく。


「っ!この!!」


腕を縛っていた触手を引きちぎると近くの木を地面から引き抜き本体(だと思う)に投げつけた。


モンスターに木が突き刺さり、蔦が締め付ける力がだんだん弱くなり蔦から解放された。


「・・・」


モンスターを倒したからお金か何かが出るか?と期待をしてみたけど何も起こらない。


まあ普通でるのはゲームの中くらいか。


さて困った。さっきのモンスターのせいで服のほとんどが溶かされてしまい着ることすら出来ない布切れになっていた。


さすがにこの格好で森を歩くのはまずい。


「おいそこのお嬢ちゃん」


声のしたほうに振り向くとそこには体が大きめのローブの男がいた。


というかお嬢ちゃんって年齢的にも性別的にも無理だ。


はっきり言ってこの背の高さと女性ぽい体つきがそう思わせた原因かもしれない。


「おとなしくつかまりな、そしたら痛い思いしなくて済むぜ」


え、何?この人もしかして人さらいか何か?


「にしても今日はついてるな俺、まさか上玉が三人も手に入るなんてな」


はい、人さらい決定!


まあこの人の身ぐるみはがすっくらいは問題ないだろう。


そいつとの距離を縮め、頭を軽く殴ってお辞儀のような体勢にさせ相手の太ももらへんをつかみ足を持ち上げ、自分の太ももに相手のかをおはさみ跡は重力に任せて頭から落とす。


「ぐはっ!」


男は泡を吹いて気を失う。


食らわせた時に首がぐきって音を立てたような気がするが気にしないでおこう・・・


それにしてもなんでこの人こんな幸せそうな顔で気を失っているんだろうか、話に聞くMってやつかな?


まあそれはおいといてっと


いそいそと人さらいの服を脱がしていく。


グキ・・・


「あっ」


人さらいの腕が曲がってはいけない方向に曲がった。


「・・・」


まあいっか



5分後…


やっとのことで服(下着以外)を脱がし終わり、その服を着た。


服を脱がすのに四回ぐらい骨が折れたけど・・・まあいいだろう。人に触るときの力加減は大たいわかったし。


服はサイズ的にかなり大きくぶかぶかでそして汗臭い・・・。


ちゃんと体を洗ってたのか?と聞きたくなるくらいだ。


このまま街に行こうと思った時、ふと男が言っていたことを思い出す。


確か「にしても今日はついてんな俺、まさか上玉が三人も手に入るなんてな」とか言っていたような気がする。


近くをしばらくうろうろと探すと一台の檻のついた馬車を見つけた。


檻の中には黒髪で赤目の少女とピンク色っぽい髪で水色の瞳の少女がいた。


二人の格好は違うがどちらもドレスのような服を着ている。


服がところどころ溶けているのを見るとこの二人もあれに襲われたようだ。


となるともしかするとあのモンスターはあの男に飼いならされていたモンスターだったのかもしれない。


「よいしょっと」


檻は鉄でできていたが、結構簡単に折る(というかちぎれた?)ことができた。


「ひっ!」


その行動を見て黒髪の子は少し驚いたようだ。


ファーストコンタクトに失敗したかな?とりあえず


「やあどうも、君たち二人に選択肢を上げるよ、一つ このまま檻の中にいて売られるのを待つ、一つ ここから逃げて街を目指す、ひとつ 僕と一緒にどこへ目指すかわからない旅をする。」


「えっと・・・」


黒髪の少女は考え込んだ。


その間にピンク髪の少女は選択肢を選べたようで僕のところに来て手を握る。


これはもしかして選択肢三?


「これは三つ目のかい?」


「・・・」


ピンク髪の子は無言でうなずく。


これは意外だ、まさか冗談半分で行った選択肢三を選ぶなんて・・・。


「えっと・・・それじゃあみっつめので・・・」


おっとそうなるか。まあいいけどね。


「それじゃあよろしく、僕の名前はヒロミ、まあ好きなように呼んでね」


「えっと・・・わたしは”オプスキュリテ”といいます・・・」


「・・・”リュミエール”」


グギュールルル・・・


「・・・」「・・・」「・・・」


三人ほぼ同時にお腹が鳴った。そういえば昨日のあれ以降何も食べていない。


「おなかぐー・・・」


「あうー・・・」


「おなじくだね・・・」


馬車の中に食料があるだろうと探してみた。


しかし食料どころか水も出てこない。


「これ・・・たべれる?」


リュミエールが何かを引きずってきた、それは先ほど僕が服を奪った人さらいだ。


「食べるとこ少なそうだから置いとこうか」


本気でそんなまずそうなもの食べる気になれない。そんなやつ獣のえさになればいいんだ。


さて、どうするか・・・


♪~


真夏の夜の夢が近くで聞こえた。


「ひゃ!」


オプスキュリテは手に持っていた水色の物体を落とした。それは僕の携帯だった。


それを拾い上げて携帯を耳に当てる。


「はい?」


「よお、お前が朝倉広海で合ってるか?」


「会ってますがなんでしょう?」


「たんに睦月の変わりに天使と悪魔の説明するだけだ、睦月に頼まれなかったらこんなことしねえのによ・・・。」


「いいか、一回しか言わねえからしっかりと聞けよ!まず天使の力で便利なやつだが転移能力だ。こいつは1日一回しか使えねえけどイメージしたとこなら何処でもいける次は・・・。」


「ちょっといいですか?」


「なんだ?こっちには時間制限があるから早く言え。」


「いえ、あの・・・もしかしてそれ使えばそっちに戻れるかもと」


「・・・よし、やってみろ」


そう言って電話が切られた。


「・・・」


そう言ったはいいが問題はこの二人だ。


さすがに二人をここに置いていくのはまずいだろ・・・


「・・・」


まあどうとでもなるか


「ねえ、一つご飯を食べられる場所あるんだけどそこに行く?」


「!いく!」「!」


二人は同時に反応を見せた。


さてそれじゃあやってみますか。


携帯で周りの風景をとってから二人と手をつないで自分の部屋の中を強く想像した。



できればでいいのでコメントください

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ