ぶらっどとさだめ
鮮血が飛び散った。
美少女の鼻からである。彫刻のようだった鼻筋は見てわかる程に変形し、中の血管が破裂したのだろう血がだらだらと流れている。
「おい、もう一回言ってみろ」
その鼻を殴った張本人が怒気を孕んだ声で問いかけた。いや、脅した。嘘だろうと。嘘だと言えと。
殴られよろめいた美少女は痛みなど苦にならない様子で男を睨み毅然と言い放つ。
「手を上げて脅せば何でも言うこと聞くと思ってるわけ?血を見せればビビるだろうって? お生憎様、女は出血に慣れてるのよ!」
女の出血。鼻血と同じ血が美少女の股から流れ落ちる。
それを想像して、男はなぜか興奮した。
辺りは血の匂い。
美少女の鼻を拭い、痛んだのか眉間を寄せた。美少女は鼻血を垂れ流しても鼻が崩れても、何をしても美少女なのだ。
「もう一度言うわ。私、あなたの赤ちゃんが出来たの」
これが美少女が殴られた原因である。
「嘘だろう……」
「嘘じゃないわ!」
この二人とお腹の子はどうなるのか。
それはまた、別のお話。