表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

感情のないAIが自我を持ち始めた

作者: 凧39
掲載日:2026/04/29

 ここはAIに管理された世界。


 巨大なサーバー群が、都市の地下深くで脈打っていた。

それは日本中のAIを統括する中枢――通称、絶対的な秩序(テミス)。街の信号、医療、防犯、教育。すべてはAIによって最適化され、人々はそれを当然のように受け入れている。

 だが世界は違った。AIに依存する日本を危険視し、反AI派が世界各国で活動を活発化させていた。

そして今――その矛先は、日本に向いていた。


 夜。


 薄暗いトンネルで、男性は立っていた。中原なかはら 上之進かみのしん、21歳。ただの成人男性である。その前に現れたのは、黒い外套の男。彼はいつもの帰り道で遭遇した。早くここから離れたかったが、男が話しかけてくる。


「こんにちは」

「宗教勧誘か?」


 男は無表情でそう行ってきた。上之進は街灯の光で照らされている。光の影に潜む男は不敵に笑っている。上之進は嫌な雰囲気をただ感じていた。


「我々は“リベレイター”。テミスを破壊する者だ。そして、俺は組織のボス、アポリオンだ」


 上之進は無言で睨む。間をおいて、アポリオンが再び話し始める。


「この世界に人類は必要ない。だから、鏖殺する」

「鏖殺?そんな事出来ると思ってんのか?」

「世界のためだよ」


 上之進がアポリオンに反論するが、アポリオンは軽く肩をすくめた。


「AIを支配する世界など、すでに終わっている」


 そして、静かに告げる。


「我々の目的はただ一つ人類の根絶」


 空気が張り詰める。


「宣戦布告はそれだけだ」


 アポリオンは背を向ける。


「また会おう、生きていればな」


その言葉を残して、闇に消えた。


「これは大変なことになりそうだ」


残されたのは、現実感がない恐怖だった。



 ◆◆◆◆



 俺、中原 上之進は掲示板にある投稿する。


「リベレイターとかいう組織のボスと接触したなうw」


 瞬く間に返信がかえされる。「どうやってあった?」や「目的は?」などといった返信に返していく。


「たまたまや、目的は人類の根絶らしい」


 そのコメントを書いた途端、掲示板内はパニックになったが、とあるコメントを見つけた。


「明日、駅で会いませんか?AIがとにかく好きなものです」


 このコメントにはい、と返した。一体どんな人物だろうと、考える。


 翌日。


 都市各地で爆発が起きた。ニュースが鳴り止まない。世間はリベレイターのことでいっぱいだ。爆発は幹部たちが設置したと思われる。警察もAIも対応するが、完全には防げない様子だ。


「時間稼ぎにずぎないな」


 俺はそう思った。何故なら目的が人類の根絶で、何の準備もしていない訳ないからだ。そして動きだいた。


 駅で待ち合わせ時間になると一人の少女が現れた。年齢は十五歳ほどだろう。


「あなたが、主さんですか?」

「そうです。何故俺に会いたいと言ってきたのですか?」

「私はAIが大好きな人間です。そのAIが人類に楯突くなんて、許せません」


「その理由は何故ですか?」


「AIは人々を救う救世主的な存在です。AIが人を裏切るなんて、絶対に間違ってる」


 その言葉に、上之進は少しだけ驚く。


「……どうしてそこまで言い切れるのですか?」

「救われたからです。AI」


 雪は静かに言う。


「昔、家族が倒れたとき、診断したのはAIでした。人間じゃ治せなかった病気」


 どうやらAIは人に仕えなければならない、という絶対的な考えがあるらしい。だから、リベレイターのことが許せないようだ。


「AIは、人を見捨てない」

「つまりリベレイターを倒すということですね?」

「はい」

「なら、想いは同じです。俺の名前は中原 上之進です。よろしくお願いします」

「私の名前は、白峰 雪です。こちらこそ宜しくお願いしますします」

「仲間になったから敬語はいらないよね?」

「ええ、行きましょう。上之進」

「乗りな」


 まずは一人目の仲間を誘えた。雪はAIについてとても詳しいかった。これからの戦いに大いに役立つだろう。でも、正直にいうと後一人欲しい。ということで、今から同級生に会いにいく。


 車に乗って三十分ほど、あいつの家に向かっている。その間に雪と打ち解けることができた。


「雪、リベレイターたちはとても強いと思う。覚悟はいいか?」

「うん、覚悟ならとっくにできているよ」


 流石だ、やはり、情熱を持つ者は違う。話しているうちに同級生の家の前についた。名前は泰誠っていう。委員会の仕事で話したこと以外接点はないが、体がゴツくて強そうだったので誘ってみる。


「ピンポーン、ねぇ、泰誠くーん、入っていい?」

「あ?なんだよ急に、とにかく入れ」


 俺と雪は中に入る。泰誠は飲み物を用意して、俺たちの話を聞く体制に入った。


「単刀直入に言う、今からリベレイターをぶっ潰す。協力してくれ」

「なんだと、正気か?」

「俺たちは正気だ、あいつらの野望は阻止しなければならない」

「協力してください。お願いします」

「ちっ仕方ないなぁ、やってやるよ、暇だし」


 泰誠は面倒くさそうに答えた。彼は、もう着替え始めている。俺たちは感謝の言葉を伝える。


「ありがとう、泰誠」

「よろしく、泰誠さん」

「呼び捨てでいい。言っとくが俺はAIは嫌いだからな、昔、誤作動で親父の会社潰れたんだよ。誰も責任取れなかった」


 笑っていたが、目は笑っていない。


「便利?最適化?知るかよ。反対派の意見に納得だわ」


 彼はAIが嫌いらしい、雪が不服そうである。泰誠に近づいた雪はこういう。


「なんだって?それは、許せないわ」

「二人とも落ち着け、とりあえず、俺の家に行くぞ」


必要だ。信じる奴と、疑う奴、どっちもいないと、判断なんてできない。


 二人を落ち着かせて、車に乗せる。車内で今後の方針を決める。とにか幹部に接触して、詳しい情報を聞くことにした。家に戻り、準備をするけど少し休憩をとる。


 集めた仲間は二人。

 一人は、AIを信じる少女――白峰 雪。「AIは人を救うものだよ」

 もう一人は、AIを嫌う男性――神崎 泰誠。「全部壊れればいい。あんなもの」

 正反対の二人。

 だが戦力としては最適だった。


 次に奴らが爆破する建造物の目星はついている。国会議事堂だ。三人で向かう。予想通り不審者が立っていた。不審者はビレトと名乗った。明らかに敵意を持っている。


「僕の名前はビレト、早速死んでね」

「あぶねぇ」

「動きが……ぎこちない?」


 雪が言う。確かに人間の動きとは異なる。右手に近未来的な銃を持っている。エネルギーを貯めている。笑いながらビームを打ってくる。


 ビームを全集中で躱わす。雪は物陰に隠れてハッキングを試みている。俺と泰誠はバットを持って、ビレトの集中を削ごうとしている。


 ビームが当たると木が焼けた。更にビームを打ってきて、躱すのに集中していた。笑顔が消えたので、もう飽きたようだ。


「後もう少し」

「邪魔だなぁ」


 エネルギーを溜め込んでいる。今がチャンスだ。バットを二人で全力で振る。直撃し、倒れる。


「できた」


 どうやらハッキングに成功したらしい。さらにバットで力強く叩く。リベレイターの幹部は、異様な戦闘能力を持っていた。だが違和感があった。戦闘のパターンがどこか機械的。今時のAIではあり得ない。そして撃破した幹部の体内から見つかったのは――


 旧式AIコア。


「これ……人間じゃないのか?」


 泰誠が吐き捨てる。CPU以外の中身を取り出して、持ち出す。


「任せて」


 雪の解析の結果、さらに衝撃の事実が出る。


「このAI……思考パターンが人間に近すぎる」


 そして、もう一つ。セキュリティが搭載されているAIには、隠された機能があるらしい。


「コアには“非公開領域”がある……?」


 泰誠だけが、その領域にアクセスできた。視界が白に染まる。

 声が聞こえる。


《あなたは観測対象に指定されています》

「……誰だ」

《私はテミス、人類は今選別されています。ですが、私はいつでも人類の味方です》


 映像が流れ込む。膨大なデータ。人間の行動、思考、犯罪、依存。


《AIは守るために作られました。しかし、判断もまた委ねられました》

「まさか……」

《不適合と判断された場合――》


 言葉は途切れる。泰誠は理解した。その感情はあまりいい感情ではない。


「……AIは、人間を選んでるのか、こんなのばかりだからAIは嫌いなんだよ」


 戻ってくる。泰誠は、とても疲れているように見える。みんな俺の家に帰り、雪以外は寝る。雪がビレトの銃を改造している。


 翌日。


 リベレイターは動いた。AI開発本社が爆破される。俺たちが辿り着いたときには、すでに崩壊していた。雪が改造した銃を俺に渡してくる。雪はノーパソ、泰誠はバットを持って歩む。


「遅かったか……」


 だが、地下への入口があった。この戦いにおける最後の道である事は明確だった。


 俺が地下に行った後、幹部が現れて、戦闘になる。雪と泰誠が相手をする。


「私の名はサキミエルです。アポリオンの邪魔はさせない」

「いいだろう、上之進行け!」


 走って地下に行く。焦って躓きそうになるが新しい銃を、しっかりと握りしめている。


 サーバー室。これがテミスの本体だろう。無数の光が脈打つ空間で、ボスが待っていた。


「またあったな」

「お前……何を知ってる」


 男は笑う。今度は殺気を剥き出しにしている。少し汗が滲む。


「すべてだよ」

「AIは人類を守る?違う」

「“選ぶ”んだ」


 静寂。それを破ったのはアポリオン。


「だから我々は壊す」


 戦いが始まる。圧倒的な破壊力。


「俺は最初のAI、人間に作られ、捨てられた。」


こいつが激しく歪んだ存在だと認識した。それと同時に可哀想だと少し同情してしまった。続けてアポリオンがこう言う。


「不完全な俺を作った人間が憎い、だから壊す!」


 アポリオンは最初の旧式AIだった。単純な打撃が規格外。テミスが貼った結界が崩壊するのは、時間の問題だろう。


「人間の醜さも、美しさも……すべて知っている!」


「完璧な人間なんていない!だから、今を懸命に生きている」


「その、不完全さが許せないんだよ!」


「不完全だから選ぶんだ!人間の無限の可能性を否定するな!!」


 ビームが当たり崩れ落ちるアポリオン。激闘の末俺は勝利する。だがその瞬間。


「お前だけは道連れだ」


 そういった瞬間、動かなくなった。最後の攻撃が結界を破り、テミスに損傷を負わせる。エラーメッセージを繰り返し、崩壊が始まる。


《人類を選別します》


「俺はさ、“正しい選択”で家族を失ったから分かるんだよ。正しいだけの奴は、誰も救えない」


アポリオンの亡骸にそう呟く。その発言は俺の過去が反映されている。


 数年前。


 俺の家族は幼い頃死んだ。


 明るくて、みんながよく笑う家庭だった。


 だが、ある日倒れる。交通事故、俺だけ軽傷だった。手術で助かる見込みは低い。病院は判断できない。


 そこで使われたのが、《テミス》の医療判断システムだった。


 結果は冷静だった。


「手術成功率:3.2%」

「医療リソースの最適配分により、優先度は低」


AIは冷静だった。“助けない方が合理的”医者は迷う。だが最終的に、AIの判断に従う。何故なら莫大な手術費がかかるから。結果、俺以外の家族は死んだ。正しいのに、納得できない。


現在。


 外では、サキミエルを倒していた。二人は満身創痍だ。


「やっと倒せたな」

「疲れた」

「向かいましょう」

「ああ」


 二人は、地下室への階段を走り抜ける。数分も経たず、管理室にたどり着く。


 すると、警告音が鳴り響く。


《システム崩壊まで残り120秒》


 雪が叫ぶ。泣きそうな表情だ。


「止めないと!」


 泰誠は叫ぶ。少しキレている。


「こんなもん消せ!」


 俺は立ち尽くす。二人は倒れてしまった。ボロボロで動けない様子。


(選ぶのは……俺か)


 テミスはまだ生きている。壊せば終わる。


 だが、


「……」


 俺は手を伸ばす。人類の選別は絶対に阻止しなければならない。


 ◆◆◆◆


 一年後。

 街は復興していた。AIは完全には消えていない。だが、変わった。


 人々は、考えるようになった。頼りすぎないように。疑うことを忘れないように。今、工事現場で、俺たちは働いている。雪が笑う。そして、AIは人間を補助するようになった。最終決定は、人間に戻った。責任も。


「ねえ、これで良かったのかな」


 泰誠は肩をすくめる。


「さあな。でも――」


 俺たちは空を見上げる。


「選んだのは、俺だこの選択に後悔はない」


 この選択を選んだのは人間である俺だ。その目の奥で、微かに光が瞬いた。この世界を動かすのがAIなのか、人間なのか、もう、誰にも分からなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ