木枯らしが鳴らす風鈴
おとなりのおじいちゃんが亡くなったんだって。
いつもおじいちゃんが日なたぼっこしていた縁側には、まだ風鈴が下がったまま。
木枯らしが、りんりんとその風鈴を鳴らしている。
お母さんが言ってた。
みよりなしの生活保護者は市が火葬場にお願いしてくれるんだって、タダで空に送り出してくれるなんていいわね、って。
おじいちゃんは亡くなって、火葬場っていうところからお空に行ったんだ。
おとなりのおじいちゃん家にぼくが遊びに行っていたことを、お母さんには言えなかった。
夏休みは給食がない。おなかがすいて、縁側でお茶を飲んでいるおじいちゃんをじっと見ていたら、おじいちゃんは一緒にお茶を飲もうって誘ってくれた。ぼくのごはんはたまにしかないから、甘いお菓子がすごく美味しかった。おじいちゃんは自分の分もゆずってくれた。
そのうち、学校がない日はお昼ごはんも一緒に食べさせてくれるようになった。
りんりんと風鈴が鳴る。
すごく暑かったあの日、風鈴が鳴ると涼しくなるんだよ、っておじいちゃんが言って、縁側に風鈴をかけた。でも音じゃあ涼しくならないよってぼくは不思議に思って言ったけど、おじいちゃんはそう感じるものだよ、って笑った。
寒い風が吹いた日、近所のゆうくんはお母さんが買ってくれた新しいもこもこのパーカーを着てきた。寒いでしょう、って言ってくれたんだって。
うらやましがったぼくに、おじいちゃんは手袋をくれた。大人のだから大きくてごめんって謝ってたけど、小さい手が冷たいなって言って、しわしわの硬い手でぼくの手を包んでくれたのが嬉しかった。
木枯らしが吹いたらすぐ冬がくるよ、っておじいちゃんが言ってた。おじいちゃんのいない家。縁側には片付けられない風鈴が残っている。
ぼくと同じ。おじいちゃんにおいていかれちゃった。
りんりん、りんりん、強く鳴ってる。
りんりん、りんりん、きっと風鈴もおじいちゃんがいなくて悲しんでいる。
お母さんに入ってなさいって言われて閉じこめられた押し入れは、暗くて狭くて、もうずっと戸は開かない。
あんたは火葬だってタダじゃないのよ、ってお母さんが言ってた。
おじいちゃんは亡くなってお空に行った。
ぼくはお空に行けないのかなあ。また、おじいちゃんに会えるといいなあ。




