後日談 如月ニヒト
「まあ、綺麗な色ねえ。この白ウサギは自分で入れたの?」
帽子屋みたいな格好のオーナーが目をキラキラさせている。どうやら好感触だ。
「はい。遊び心が欲しくて」
「夕焼けの中で跳ねてるみたいで可愛いわ。あ、あそこにも!」
部屋の各所で遊ぶ白ウサギを探して、オーナーは満足して帰って行った。
「良かったあ。これで住み続けられる」
「俺のステンシル技術のおかげだな」
「紅茶色の壁紙に決めた私の手柄ですう」
壁紙と同系グラデで揃えたクッションを抱いた彼が、我が物顔でコーヒーを飲んでいる。
隣に座って私もチェシャ猫のマグカップを手に取った。
「んー、まあ確かに。ほっとする色だよな。この白ソファも映えるし。やっぱりセンスいいわ」
「え、うんまあ、そりゃね」
「ここ落ち着くし、これからも入り浸っていい?」
「別に、いいけど」
捕獲成功。なんてニヤけそうになって慌ててコーヒーに口をつける。ちゃんと私好みの甘さになってるのが憎い。
「あ、お昼ご飯炊けた」
「さっきからめちゃめちゃいい匂いしてんだけど。腹減った」
「ふふっ、自信作だから待ってなさい」
「おおっ、美味そう!」
みりん仕上げの艶々な肉じゃがを配膳すると、白ご飯の到着も待たずにさっそく食べ始めてる。
「すげー美味い」
「ぃよしっ!」
お腹の前で小さくガッツポーズしたら、吹き出しそうになってむせている。
少し前の澄ました彼はどこへ行ったのか。可愛いやつめ。




