最弱賢者、剣を研ぐ
いつも読んでいただきありがとうございます!
いつになるかはわかりませんが、今度出す奴の先行配信版です!
「なぁ、知ってるか?」
「何を?」
「この街に、来たらしいぜ」
「それってまさか!」
「ああ。あの‘‘最弱賢者サマ‘‘だ!」
男たちが「マジかー!」と大笑いする。
その横を通行人である俺が通り抜ける。
(まったく、聞きたくなかったなぁ……こっちだって仕事なんだよ!)
巷で噂の‘‘最弱賢者‘‘。噂によると、
そいつは、金なし。授与できる魔法無し。ダンジョン等のクリアのカギになるような知恵無し。これと言ったレアなアイテム無し。
立ったひと振りのさびた剣を引っ提げて、街を転々としている。
とのことだ。全く好き勝手に言ってくれる。
「……確かに、俺にはこのさびた剣以外ないけどさ?そこまで言わなくたって、来てくれたらちゃんと全回復してあげてるじゃん。しかもただで。それだけでも結構いい仕事してると思うけどなぁ……あーあ。『賢者はパーティーに入っちゃダメ』なんて誰が決めたんだよもう」
俺、アゼロ ラザミナはその最弱賢者その人である。
このフルへリア暦70年に生まれた俺は、4歳で賢者になり、一振りの剣を与えられた。これがまぁさびている。
この現代のどんな鍛冶師に持っていこうが、どんな上位の浄化魔法、再生魔法等々をかけようがちっともさびは取れない。
4歳のころだったのであまり覚えていないのだが、この剣を授かった時に、何か言われた気がする。最初の方は何度も親に聞かされたから覚えている。
‘‘汝、己の神器に頼るな。道行く冒険の者たちに力を与え続けろ‘‘
この後に何か俺の人生を変えてくれることを言っていた気がしたが、何せ親が覚えていないんだ。俺が知る由もない。
全く、こんな賢者生活はもうごめんだ!
賢者ってもっと、尊敬されるものなんじゃないの?だって、大賢者と名高い、オラード チュード(女)様は一般市民にまで敬愛され、尊敬され、その……ちやほやされてるじゃん!
「何で、俺ばっかり……」
「もしかして、賢者様ですか?」
俺はふと声をかけられた方を振り向く。
するとそこには、――16~17歳と言ったところだろうか?――女の子が立っていた。
「そうですが何か御用ですか?」
「えっと、」
かなり可愛らしい女の子は少し口ごもると、
「えっと、弟のけがを見てもらいたくて」
「ああ、はい。伺いましょう」
早速この街での初仕事だな。
俺は気を引き締める。まぁ俺、ヒーラーじゃないし、魔法も回復が多少得意なだけで全然だしあんまり大きな傷じゃないと良いなぁ。と思ってしまう今日この頃だった。
・・・
幸いにも弟さんはただのかすり傷だった。これくらいなら俺にでも治せる。
「え?もう治ったんですか?」
治療後女の子が目を丸くした。
「はい。どうかされましたか?」
「いやだって……」
いやいや、だってもなにも、ただのかすり傷だろ?
ヒーラーならもっと一瞬で治すぞ?
「あ!お金!」
女の子は慌ててお金を出そうとする。
「いやいらないですよ?私、賢者ですから」
「でも……」
「いいんですよ。さて、ほかに御用はありますか?」
「いえもうないです」
「そうですか。では、お大事に」
俺はそう言い残し、その場を去る。
「あの大賢者のオラードさんでも治せなかったのに……」
女の子はどうやら冗談が好きらしい。
帰り際に聞いた言葉を俺はそう解釈した。
「さてと、教会に急ぐか」
俺は、寝泊まりするところと、荷物を置くため、教会に急いだ。
最弱賢者は今日も今日とて金がないので、教会に止めてもらうのだ。一応、話はついているからな。
にしても、この剣、やけに重いんだよなぁ……。
こうして、俺のこの街―――テロスでの生活が始まり、
そして、教会で、とうとう嫌になったのでひとまず
300年後に転生した。
つまり、一日で俺のテロスでの生活が終わった。
最弱賢者が死んだというニュースは全く広まらなかった。
あーあ、最後まで俺なんて興味ないってか。一応、名残りでこの剣も一緒に飛ばしてもらったけど、さて、どこに着くかなぁ~
第1話 最弱賢者 死す 完 第2話へ続く
・・・
案外、転生―――つまり死というのは怖くなかった。(まぁ痛みがなかったからかもしれないが)
俺の意識は眠るように吸い取られ、気づけば寝起きのような気分で、地面に転がっていた。ひんやりと冷たい。石だろうか?俺はゆっくりと起き上がる。どうやらこの体は前世より(29歳より)若いと見える。俺はそんな体を少し起こして気づく。
「ここ、洞窟か?」
呟きに答える者はいない。一応確認として、その辺に生えている植物に、成長魔法をかけてやった。効果は健在。魔力や魔法が消えた世界じゃないらしい。
「300年か。」
改めて思う。なぜ三百年なのかというと、そこまで逃げれば、普通に暮らせると思ったからだ。人助けは割と好きなのだが、どうしても、あの見下された感が気持ち悪い。それはもう気持ち悪い!
「さてと、」
前世とは違う声で、虚空に呟く。
「まず出口を探さないとな」
俺はいっぽを歩きだす。新しい世界で、普通に生きるために。
・・・
んで、困った。
まさか、俺の洞窟探検スキルがここまで低かったとは……。
しかし!その辺に生えてる草が薬草なの何で⁉
「う~む」
俺は大いに困った。
「ウ”ゥゥゥゥ」
とその時何かが聞こえた。
唸り声?何かの鳴き声?呻き?それともほかの何か?
俺はふと振り返る。するとそこには、簡単に言うとゾンビがいた。
ゾンビとは300年前ではアンデット系の魔物の最弱種である。
確か対処法は……
「生のエネルギーだったよな?」
アンデット――――つまり「死んでいる」ため、物理攻撃は通りにくい。しかし、魔法による攻撃や申請魔法等による、生のエネルギーの取りすぎ(植物で言うところの根腐れかな?)なんかによって倒せたりする。
と、いうことで、俺の氷魔法で……
「そこのあなた!離れて!」
へ?
瞬間視界が真っ赤になった。
炎か……。
炎ぉぉ⁉
ふざけてるのかな?いやだってアンデットって炎耐性あるし。死んでるのにさらに殺してどうするの⁉
「あなた大丈夫?」
さっきの炎を放ったであろう少女が、俺に駆け寄ってきた。
「いやいや、君何してんの⁉」
「はい?ああ。混乱してるのね」
「いや違いますから!元気ですから!ぴんぴんしてますから!決めつけないでくださいよ!」
「あ、え?あっと……ごめんなさい……?」
「何で疑問形⁉」
彼女と俺の押し問答はたっぷり2分くらい続いた。
とその時、彼女が倒した(思い込み)のゾンビが現れた。今度は仲間も連れて2体になっていた。
「な⁉」
彼女は驚いていたが、俺にとっては当たり前だ。一時期は300年前でもかなり恐れられたアンデット系の魔物があんな炎なんかで倒せるわけがない。
「嘘……どうして?」
困惑する彼女に俺は当たり前の知識を一つ。
「いやいや、普通に考えてですよ?死んでるやつをさらに殺せますか?」
「何の話?」
「あいつの倒し方ですよ!」
「え?何であなたが?失礼ですけど、所属を確認しても?」
「そんなことしてる間に来ますよ」
「え?」といいつつ彼女が振り返った先には、すぐそこまで迫っていたゾンビの姿があった。
慌てて構える彼女を見て、また炎か?と心配になった。
シャァァ――――――
彼女は腰の剣に手をかけ、引き抜く。どうやら、こいつでさっきの炎を出したらしい。いやしかし、300年前にはあんなのはなかったなぁと俺は一人感傷にふける。
そうして、彼女は案の上炎を放とうとする。
え?炎を放とうとする?え?
「だからダメだって!」
俺は盛大な魔力の無駄使いをしようとしている少女を慌てて止めた。
「ちょ!危ないでしょ何考えて」
「ちょっとそこで見てなさい!」
俺はあの彼女が言い終わらないうちに大きな声で注意した。
「あの!これは私の仕事です!民間人は下がってて……」
「素人はそこで見てください!」
またもや彼女の言葉を遮る。
今度は流石におとなしくなったようだ。
「はぁ……フリエール」
無詠唱で発動可能な氷魔法を俺はゾンビに叩き込む。場に凍てつくような寒気が走り轟音が響いた。そして、2体のゾンビは、あっけなく散った。
「ほら。アンデットには氷か神聖の魔法。わかりました?」
一応賢者なので、知識は人よりは持っているはずだ。
「あなたは一体……?」
彼女の問いに俺は頭を抱える。
「えっと、そうだな……賢者って言うのも違う気するし……そもそもこの時代にまだ賢者とかいるのか?……うーん、まぁ、今のところは、しがない放浪人のアゼロとでも思ってもらえれば幸いです」
「放浪人?」
彼女の目が細くなる。え?俺なんか言った?
「放浪人ということは、無職ということですか?」
「はい。今のところ」
「無職の人間にそんな力が使えるはずがありません!貴様!‘‘ハイコープス‘‘だな!」
ハイコープス(?)って何だろう?
いやさ?いきなりそんな専門用語言っても分かんないし……あ、さっきの仕返し?もしかして、俺が余計なこと言って、けっこう怒ってる?
俺は、どうやって、誤解を解こうか悩んだ。悩んだ末に、
「分かりましたよ。嘘つきました。俺はアゼロ=ラザミラ。しがない転生者で、前世では最弱賢者やってました!」
またもや、彼女がぽかんとする。
そう。これが、俺とこの少女――――リアーマ=イグニとの出会いだった。
第2話 炎の少女 完 第3話へ続く
・・・
転生者。
300年前ではよくいたものだ。何とかの魔人の生まれ変わりとか、勇者の生まれ変わりとか。
しかし、現代においてはそんなことはないらしい。その証拠に転生者と聞いたリアーマはぽかんとしている。
「いまなんて?」
「だから、俺は転生者で」
「いや、その後です」
後です?当てがはずれたか……?
「えっと、前世では最弱賢者やってました……?」
「賢者って言いました?」
「ああ、はい」
「うそ……」といって、リアーマが口を手で押さえている。
「賢者がどうかしました?」
「予言……」
「予言?」
俺が聞くと、彼女が恐る恐る予言(?)を口にした。
「‘‘暗がりにいでし賢者、一振りの剣で世を救わん‘‘って予言があって……」
暗がり=洞窟
賢者=俺?
一振りの剣=俺の持ってるさびた剣?
ってこと?
「あなたが予言の賢者様だったのですね!」
「ちょっと待った!」
「え?」
俺はここぞとばかりに事実を突きつける。
「俺はさっきも言った通り、有力な知恵無し。付与できる魔法なし。渡せるアイテム無しの最弱賢者だ!そんな俺が予言の賢者なわけあるか!」
「でも!今この世界は窮地に立たされているんです!お願いします!」
ここまで言われると……。
「分かったよ……でも期待はするなよ?」
「あ、ありがとうございます!」
こうして、俺は、‘‘最弱賢者‘‘から‘‘予言の賢者‘‘にランクアップしたのだった。(まぁ、最弱なことに変わりは無いけど)
さて、俺とリアーマは洞窟の出口にたどり着いた。
いやいやしかし、灯台下暗しとは本当によく言ったものだ。(直上に出口があるとか分かるか!)
とまぁ、なんだかんだ言って、俺は洞窟を出た。
「あ~……」
俺は開放感にあらがえずに伸びをしていた。
「そういえば、賢者様はいつからあそこに?」
「ん?少し前からかな?あと、賢者様じゃなくてアゼロって呼び捨てでいいよ」
「そんな!」
「賢者様って言われ方あんまり好きじゃないんだ……」
「あ。わ、分かりました」
リアーマが察しのいい子で助かった。
確かに賢者である以上、賢者様と呼ばれるのは仕方ないのだが、俺の場合、冷やかしの時にしか聞いたことがないので、あまりいい思い出はない。
「んで、これからどうするんだ?」
「はい。とりあえず、私の街で事情をあらかた説明しますね」
「ああ。頼むよ」
「じゃあ、乗ってください」
乗る?何に?
そう思う俺をよそに、リアーマは‘‘空間をつかんだ‘‘。
バサァ!
俺は目を見張った。透明マントっぽい奴をはがしたと思ったらそこから、何やら車輪のついた乗り物
が出て来たのだ。
「これは……?」
「ヴィークルです。ご存じありませんか?」
「そりゃ、300年前にそんなものないからね⁉」
「なるほど……なら、街を見たらもっと驚きますよ?」
リアーマの言葉が気になる俺なのだった。
・・・
さて、得体の知れない乗り物にまたがり、揺られること数十分。
洞窟のあった森を抜け、俺たちは道路にやってきていた。
「どうですか?風が気持ちいいでしょ?」
「そうだな~」
ああ。懐かしいな。オラード様に風魔法を教えてもらった時みたいだ。あの時は、風魔法をコントロールできなくて、思いっきり‘‘空に落ちた‘‘っけな……。
「もうすぐ街に着きますから」
「あいよ」
ブゥーン……
エンジン音が響く。どうやら、あの炎の剣と同じく、動力魔法陣で動いているらしい。その部分をなぜエンジンと呼ぶのかには少し興味があった。
が、すぐに失せた。
「見えましたよ!」
リアーマの呼びかけに俺はふと顔を追上げる。
「ここが私がくらす移動型都市。フィフスオフェオシティです」
そこには船にも、ただ栄えた都市にも見える、都市があった。
「私たち人類が、コープスに立ち向かうための最後の砦です」
第3話 予言と現実 完 第4話へ続く
・・・
ヴィークルの停止音が辺りに響いた。
「到着でーす!」
リアーマに促され、俺はヴィークルから降りる。
俺は辺りの光景に感嘆する。
―――まさか、人類がここまで進歩しているとは……。
辺りには金属でできた建物が立ち並び(ビルというらしい)、道路には先ほどにヴィークルやそれ似たものであふれている。
これが、現代の街……か。
「行きますよー?」
リアーマに言われて、俺はハッとする。
「ごめん。で、どこに行くんだ?」
「私の家です。正確には寮ですが」
・・・
「ここが私たちの寮です」
俺は今、寮なるものの前にいる。
「一応確認するけど、ここに俺が入ってもいいのか?」
「え?」
何でもないように小首をかしげる彼女を横目に俺は辺りを見回す。
どこに目をやっても、女、女、女、男の影も形もない……。
そしてその全員がこちらに並々ならぬ疑いの視線を向けている。正直今すぐに逃げ出したい。
「問題ないですよ?」
「ほんとに?」
「はい?」
「本当に何も問題ないのか?」
「何ですか?しつこしですよ?」
叱られてしまった。
流石にリアーマからもあの視線を食らうと生きていけない気がする。
「分かったよ。初めてだからちょっと気になっただけだよ……」
「じゃあ、行きますよ?」
俺は諦めてうなずいた。
寮に入ってからも女性からの異様なものを見るような視線はやむことを知らなかった。
この嵐が去ることを切に名がっているといつの間にか、6004号室の前に着いた。
「どうぞ。入ったらすきに座ってください」
「お、お邪魔します……?」
そこか実に整理整頓が行き届いたいい部屋だった。300年前の教会の部屋を思い出したのは言うまでもないだろう。あそこもここも白を基調とした清潔感のある部屋だった。何だろう?すごく落ち着く。
「あの、大丈夫ですか?」
「何が?」
「その、えっと……アゼロさん、泣いてますよ?」
「え……?」
俺は瞬間、言葉を失う。静寂の世界が広がる。そして、遅まきながら自分の頬を伝う、生暖かいものの感覚が全身を駆け巡る。
――――――後悔、か。
「いや、大丈夫だ。すこし、昔を思い出してな」
「そうですか……」
リアーマは本当にいい子だと思う。俺の過去について、気を遣ってくれているのだろう。
「ささ。本題に入りましょう?私の話の前にアゼロさんからお願いします。話せる範囲でいいので……」
「お気遣いありがとう。でも、やっぱり全部話すよ。長くなるけど大丈夫?」
「はい」
それから、俺は今までの全てを話した。
4歳で賢者になったこと。しかし、最弱だったこと。嫌気がさして、転生を決意したこと。
そのすべてを、彼女はちゃんと聞いてくれた。
「なるほど……そのオラードさんという人は転生していないんですか?」
「してないと思うけど、どうかしたの?」
「いやその、また予言の話で……」
「ほう」
「私たちが苦しめられている、コープスと呼ばれる怪物の親玉が、‘‘オラーダ‘‘であるって予言にあるんですよ。似てるから気になっちゃって」
「そうか。でも、大丈夫だと思うよ?あの人は聖人そのものだし」
「そうですか……それならいいんですけど……」
「さ、俺は話しは終わりだから次は君の話を聞かせてくれ」
「はい、分かりました!あと、私のことはリアとでも呼んでください」
「分かったよ。リア」
・・・
聞いた話を整理しよう。
1、この世界は何百年か前に突然発生した、コープスと呼ばれる異形と戦っている。
2、コープスは、群れを成す習性があり、その圧倒的な数の暴力で人類の半数以上を殺してしまった。
3、人々は‘‘オフェオシティ‘‘という武装都市を各地に建設し、そこに立てこもる形で束の間の平和を得て
いる。
4、コープスは不死身であり、追い返すことはできても、完全に倒しきることはできない。
「つまり、俺って……」
「はい。人類初のコープス討伐者です。おめでとうございます」
「あ、ありがとう?って、この世界魔法があるのに何でそのコープスとやらを、討伐できないんだ?」
「魔法?なんですか、それ?」
え?魔法無いの?
「じゃ、じゃああの剣は?」
「あれはシュヴァルトと言って、‘‘魔術‘‘を行使するための媒体みたいなものですよ」
「へぇ~」
どうやら、300年も経てば魔法も変わってしまうらしい。
魔術か……。
俺は一人カルチャーショックを受けてしまった。
「では、アゼロさんがさっき使っていたのが、」
「ああ。魔法だよ」
「すごいですね!媒体もなしに発動できるなんて!」
「俺、向こうでは本当に最弱だったんだけど……」
流石に女性に、しかもこんな美少女に褒められたら、照れるので勘弁してい叩きたいものだ。
「それで俺の処遇はどうなるんだ?」
俺はずっと念頭にあった疑問を聞いてみた。
俺は、はたから見れば単に変な人なので、これからどう生きていけばいいか分からなかった。
「一応、私が保護しようと思っているんですが?」
「ああ。なるほど……ってちょっと待ったぁ!」
「あまり大声を出さないでください!」
叱られてしまった。
でもさ?男女が一つ屋根の下で暮らす?言語道断!そんなことがあってたまるか!絶対いろいろダメだろ!
「何ですか?私と一緒、嫌なんですか?」
その返しは犯則だろ?
「嫌そういう訳では」
「なら、私が保護します!これは決定事項です!」
「はい……」
この子思ったより押しが強いな……。
と、言うことで、なんやかんや時間は過ぎ、夜になったので寝ることになった。
・・・
「おやすみなさい」
彼女が寝室に入って、俺はようやく安堵の息をついた。そして猛烈に困惑している。
どうしてこんなことに……。
俺はついさっき、リアーマとの同棲生活が始まった。何とかソファーで寝ることを勝ち取ったが下手をすれば一緒に寝る羽目になっていただろう。
「はぁ……なれないな人と話すのは」
俺はベランダに出て、(一応錯覚魔法を全身にかけて)深呼吸をした。300年後の空気は少し汚れたのだろうか?昔のようなすがすがしいものではなかった。
しかし、それはそれで300年の時を俺の感じさせた。
この世界では、俺は最弱とは言われないように頑張ろう。そう心の中で思った。
第4話 300年の決意を片手に 完 第5話に続く
・・・
翌朝、
「おはようございます!アゼロさん」
「どこの新妻だよ……」
「え?」
リアーマがキョトンとする。
「ご、ごめん。忘れてくれ」
「は、はい」
彼女の顔が徐々に赤く染まっていった。
「朝ごはん、できてますから」
ほんと、どこの新妻だよ……と俺は再度思うのだった。
・・・
「うまいな。この、スープ(?)」
俺は300年前には食べたことのない朝食をほおばっていた。
「お口に合ってよかったです」
リアーマがニコッと笑う。全く、心臓に悪い。
「今日の俺はどうしたらいいんだ?」
「そうですね……ひとまず、役場に行きましょう。住民登録をしないといけないので」
じゅうみんとうろく?初耳だ。
「ああ、えっと住民登録って言うのは、この町に住むために必要な物なんだけど、ほら住所とか」
なんかよくわからんが必要らしい。
「何となくわかったよ」
「う、うん。じゃあ、行こ」
・・・
役所にて、
「じゃあ、この書類に記載を」
「分かりました」
なんかよくわからんが書類をもらった。
これを書けばいいらしい。
―――しかし、俺が知ってるのは旧字体らしいからな。現に今、全く読めない。こんな時は、
解読魔法を発動して、何とか読むことができた。
「手伝おうか?」
「助かるよ」
俺はリアーマの助けを得て、何とか書類を埋めることができた。
「じゃあ、これ出して来て」
「ああ。」
俺は書類を提出し、これで終わりと思った矢先、
「じゃあ私からはこれ」と、リアーマから謎の書類を渡された。
「これね、私の学校への届け出」
「学校?」
がっこう、学び舎のことだろう。しかし、どうして?
「ここに入って、一緒に生活しない?」
「いいけど、ほんとのところはどうなの?」
挙動で何となくわかった。こいつ、何か隠している。
「ほんとのところはね、コープスと戦うのって大体私たちなの。私たちにはこれが発現するから」
そう言って、リアーマは腰の剣に触れる。
―――シュバルトだっけ?それって発現式なんだ。
俺は意外と大事なことを知った気がした。
「それで、予言の賢者かもしれない俺手伝ってほしいと」
「ええ」
「分かったよ」
「へ?あ、ありがとう!じゃあ、ここにサインして」
「ああ」
―――アゼロ ラザミナっと
すらすらとサインをして、今度こそ事務処理は終わった。
「そういえば、家にあるあのさびた剣さ、研いでみる?」
「無理なんだ。あの剣のさびは取れないんだよ」
「それって、300年も前の話でしょ?一緒に戦ってくれるお礼に私が研いであげる」
確かに、300年も経っていれば技術の進歩とかでいけるのか?
俺はそんな最後の希望をつかまずにはいられなかった。
「ぜひお願いするよ。でも、やり方だけ教えてくれ」
「自分で研ぐの?」
「まぁ、自分のだしな」
そんなこんなで、俺はあのさびた剣を研ぐことになった。
この時俺は知らなかった。この剣が後に化け物と呼ばれることを。
第5話 最弱賢者 剣を研ぐ 完
先行配信版 完
読んでくれている皆さんへ、
もしも、
「面白かった」
「ドキドキした」
「次回が気になる」
と思ったら、下にある評価で応援よろしくお願いします!
(やり方、☆☆☆☆☆を★★★★★に変えるだけ!)
よかったら、感想も
「面白かった!」
「グット!」
など、書いていただけると、すごくモチベが上がります!なので、どうか、よろしくお願いします。
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