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17番(童話)

作者: n.kishi

 野球が大好きな中学1年生のひさしは、隣町にある野球の強豪校に電車で通っています。中学進学祝いに両親から買ってもらったクロスバイクで毎朝駅まで行き、電車で通学します。ひさしは日本人大リーガーの大山選手が大好きです。駅の駐輪場では憧れの大山選手の背番号17番にあやかり、17番のラックを目指しますが、そこにはいつもシニア用の電動アシスト3輪車がとまっています。仕方なく別のラックにとめることになります。

 ある日、17番が空いていました。ひさしは「ラッキー!」と言いながら、17番に自転車をとめます。次の日も、また次の日も、17番にとめることができました。

 それから1週間ほどたったある日、ひさしは例の電動アシスト3輪車に乗った人を駐輪場の入口で見かけます。年配の女性でした。その人は駐輪場に入ると、迷うことなく17番に向かいます。同じタイミングでひさしも駐輪場に入り、別の通路で17番に向かいます。ふたりは17番のラックの前で立ち止まり、顔を見合わせます。最初、女性はけげんな様子でひさしの顔をのぞきこみましたが、そのうち状況を把握したように、「おにいちゃんも大山選手が好きなの? 私も大好きで、大山選手の試合があるときは、いつもうちのおじいさんとテレビで応援してる。でも、おじいさんが先月隣町の病院に入院して、毎朝電車で着替えを届けに行ってるの。それがね、先週わたしがぎっくり腰になっちゃって行けなくなった。でもきょうはすっかり良くなり、これから着替えを届けに行くところなの」。女性はそう話しながら17番のラックから離れて、隣の隣、17番と同じ低い位置にある19番のラックに「よっこらしょっ」と言いながら自転車を入れようとしています。その様子を見て、ひさしは女性に声をかけます。「どうぞ、17番に入れてください。僕は18番に入れます。背番号18番の山崎選手も大好きです」と言いながら、ちょっと高い位置にある18番のラックにクロスバイクをヒョイと持ち上げて入れます。女性は「まぁいいの? わるいわね」と言いながらもとてもうれしそうにいつもの17番に自転車をとめます。電動アシスト3輪車とクロスバイクが17番と18番のラックに仲良く並びました。

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