【男の娘082】帰り道の途中の道草2
今回のお茶会の収穫は色々とあった。その中でも助かるのが転送ポイントをフルーテス領の城門の外にだけど設置出来たのが大きい。
出来れば港にも行って設置出来れば良かったんだけど、お父様とマッシュ兄さんとの約束もあるからね。緊急事態には使えるんだけど、普段使いに使えないのがとても痛い。
「アカネお姉様。ショトウナーワに行く時は私も連れて行ってもらえますか?」
「・・・・」
説得を手伝ってくれるから、連れて行ってあげたい気持ちはあるんだけどね。この世界の船旅がどんなものか分かってないし……。空の旅なら魔物は出ないから安心なんだけど、海の上はね。安全性が担保出来そうにない。
ティムにペガサスになってもらって飛んで行くのが一番なんだけど、お目付役としてマッシュ兄さんが来ることになるし、今回の空の旅が二人のりなんだ。それ以上の距離の海の上の移動なんて3人で出来るわけがない。
空を飛んで行くにしても、途中途中で休憩を挟む必要があるだろう。その時に仮に無人島に降りたとしても、休憩をしていたら、進行方向がわからなくなってしまう。
少しでも方角がずれてしまえば、目的地から大きく離れてしまい見当違いの場所についてしまう。そんなことをしてしまえば、この領地に戻ってくるのも厳しくなってしまう。
迷子の果てにお家に帰れなくなるのはダメだ。特に海の外は、言葉が同じか分からないし、警察っぽい組織があるかも分からない。たとえあったとしても、その人達が私達の領地を知っているとは限らないってことだよね。
まー私の場合は、空間を飛んで移動出来る魔法があるから、よっぽどのことがない限りは大丈夫なんだけど……。距離と人数や重さの移動がどれだけ可能か分からないのが頭の痛い所だね。
これもショトウナーワに行くので有れば、実験してどれくらいまで行けるのかテストしておかないと、いざという時に使えない魔法に成り下がってしまうかもしれない。
「ごめん。キャロットちゃん。流石に連れて海の向こうに行くのは無理かな。」
自分でキャロットちゃんにこんなことはいいたくない。言えばブーメランで自分に返ってくるからだ。お父様の気持ちがよく分かる。
こんな可愛くて、綺麗な娘を自分も行ったことのない旅に連れて行くなんて無謀すぎる。そんな危険な目に大切な愛娘を行かせる訳がない。しかも、お父様がそんなに長いこと領地を離れるわけにはいかない。
マッシュ兄さん一人なら、勉学のため一人で行かせる許可も降りるだろう。私もマッシュ兄さんとティムがいて、ギリギリOKが出るか出ないかという所だろう。
キャロットちゃんは、一ぺんの迷いもなくNOの言葉が返ってくるだろう。それに、もうアボート君と婚約もしたので、危ない橋をわざわざ渡る必要もないのだ。
フルーテス家に嫁ぐ形で必要な知識、技術、社交性を身につける方が優先順位は高いだろう。これを私に置きかえると、余計に厳しい気がしてきたな。はぁー、お父様どうやって説得しようかしら?
「はぁー、やっぱり流石にそこまでは無理ですよね。分かりました。でも、お姉様がショトウナーワに行けるように、お父様の説得は私も手伝いますね。」
「うん、キャロットちゃんごめんね。そしてありがとう」
空を飛んでの旅は、見たことのない景色を見るのでとても楽しくあっという間に過ぎていった。
「あっ、お姉様、お母様が洗濯物を干してますわ。お母様〜」
キャロットちゃんが、お母様に向けて手を振っている。
いやいやそれは空の上だと危ないよキャロットちゃん。腰紐付けてるけど、体勢崩したら私もきっと落ちちゃうから二人揃って真っ逆さまだよ。
お母様もキャロットちゃんの声が聞こえたのか、空を見上げて手を振ってくる。
ティムが少しずつ、高度を落として着陸した。腰紐を解き、キャロットちゃんがゆっくりと降りて、お母様がキャッチするように下で手を広げて待っている。
「お母様ただいまですわ〜」
キャロットちゃんが鐙を蹴って、ジャンプし、お母様に抱きついた。お母様は、
「おかえりなさい。キャロットちゃん、アカネちゃん。さっ、長旅お疲れ様。お家に入ってゆっくりなさい」
私もペガサスから降りた後に、
「ぼふん」
ティムが子供形態に変化する。
「母御殿、我もただいまなのだ。うー、お腹が空いたのだ〜」
「ティム様も娘達の送迎ありがとうございます。お疲れでしょうから、中に入ってゆっくりして下さい。今日は、ティム様のお好きな唐揚げですよ〜」
「なぬ、唐揚げとな。じゅるり。ふふふふふっ、それは晩御飯が楽しみじゃな。それまでは我慢してお腹を空かせておくことにしよう。空腹の方が余計に唐揚げは美味いからな。」
食いしん坊ティムここに現れり。まーいつも通りの光景だね。空腹に勝る調味料無しとは、また名言が出たものだな。後は、愛情は料理の最高の調味料かな。お母様の料理は特殊な調味料がふんだんに使われているから、文句なく美味しいものね。
「お母様、ただいま」
私もベジタル領恒例のハグをお母様とするのであった。




