【男の娘102】反撃開始 その3
「アカネ、キャロット無事か?兄さんが助けに来たからにはもう安心だ。」
マッシュ兄さんは、急いでゲートから飛び出てきて、鍬を構えて辺りを見渡した。
「敵はどこだ?レディアント家の不貞な輩はどこにいる?」
剣持ってピンチの状況なら、様になってたんだけどね。でも、マッシュ兄さんが来てくれてとっても嬉しいかな。
「ふふっマッシュ兄さん助けに来てくれてありがとう。レディアント家の人たちなら、きっと今は外で海水浴してるよ。」
「んんっ?」
マッシュ兄さんの思考が追いついてこないので、不思議そうな顔をしている。
「アカネ我も助けに来たぞ!」
ティムが胸を張ってそう言ってくる。ドラゴン形態ではなく、子供形態で来た様なんだよ。
「ティムも助けに来てくれてありがとね。大豆の茹でたものの手配もありがと。お陰で、ピンチを脱出することが出来たよ。」
「ふふん、勿論だとも。それでリリムや。ちゃんと役にたてておったかの?」
「お祖父様、リリムちゃんはちゃんとお役にたったのです。ねぇ、アカネちゃんです。」
「ティムちゃん。ちゃんとリリムちゃんは私の身辺警護してくれましたよ。」
「ふむ、キャロットよ。そうか。よくやったなリリムよ。」
幼い容姿のティムがリリムちゃんを撫でている光景は、パッと見怖いものがあるんだよね。
放心状態が終わったのか、マッシュ兄さんが近寄ってくる。反対側からキャロットちゃんもやってきた。
「アカネお姉様、見事な作戦でしたわ」
「キャロット、アカネ、怪我はないか?」
マッシュ兄さんが心配そうに聞いてくる。
「うん。大丈夫だよ。ほら、この通り。」
私は寝巻き姿でくるっと1回転する。
「そうか、アカネはなんともなさそうだな。元気そうでよかったよ。キャロットはどうだ?」
「お兄様、私も大丈夫ですわ。ほらっ、この通り!」
キャロットちゃんもパジャマ姿で、その場でくるっと1回転して、ニコッと笑ってみせた。キャロットちゃんがマジ可愛いわ。お家にお持ち帰りしたいくらいだよ。
って、一緒に住んでいるから持ち帰る必要はなかったね。でも私が結婚したり、キャロットちゃんがアボート君と結婚して一緒になると、離れちゃうからな〜。
今この時の至福を思う存分味わうとしましょう。
「アカネ、大事な話があるんだが少しいいか?」
「どうしたのマッシュ兄さん?まだ、レディアントさん達捕まえてないし、ほら私も寝巻き姿だから。」
「いや今がいいんだ。アカネ。この機を逃すとまたいつ言えるか分からなくなる。」
「うん、分かったよ。なら、大丈夫だよ。人のいない所に移ろうか?」
「いや、大丈夫だ。キャロットもその場で、聞いていてくれて構わない。」
私は大事な話というので、ひとまず深呼吸して気持ちを落ち着けた。さて、マッシュ兄さんのこの機会でしか話せないお話って一体?
「アカネ、アカネが好きだ。義理の兄妹とかそう言うのではなく、一人の女性として、アカネのことが好きだ。結婚して下さい。今回、アカネとキャロットが攫われたことでよく分かった。アカネが突如いなくなったことで、胸が張り裂けそうだったんだ。また、こんなことが僕の知らない所で、起きて欲しくない。アカネは僕が一生守るんだ。」
「お兄様……」
キャロットちゃんがうるうるとした目でマッシュ兄さんを見つめている。ぱちぱちと小さいながら拍手をしながら。
告白を通り越して、既にプロポーズに突入か。マッシュ兄さんにこんなこと言われるなんて、思ってもみなかった。凄い嬉しい。私もマッシュ兄さんが好きだし、でも………。
「マッシュ兄さん。マッシュ兄さんの気持ちとても嬉しいわ。でも、ごめんなさい。今はその気持ちを受け取ることは出来ないの。ほんと、ごめんなさい。」
マッシュ兄さんがどれほどの勇気を出してくれているか分かるわ。もしかしたら、これで家族の関係すらもこれまでと同じ様にはいかなくなるかもしれない。
私だったらきっと出来ていないと思うの。
「アカネ、理由を聞いてもいいか?」
「ごめんなさい。理由は話せないの。別にマッシュ兄さんのことが嫌いだから断るとかじゃないのよ。好きだと言われたのは、とても嬉しいし……。」
「うん、分かった。困らせてごめんな。嫌いでないことが分かったらほっとしたよ。」
私はもしかしたら、ずるいことをしているのかもしれないんだよね。でも、私は私でちゃんとケジメをつけてから進めたい。私が言い出したことだから、これだけは何としてもやらないと。甘える訳にはいかないんだよ。
「なら、また今後は、仲の良い兄妹として宜しくな。」
マッシュ兄さんはそう言って照れ臭そうに右手を差し出してきた。私はその手を両手で握りしめた。
よかった。ぎこちなくなるかと思ったけど、関係性は変わってないみたい。
「こちらこそ、改めて宜しくね。マッシュ兄さん。」




