表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

恋唄

千本木さんと二人で心理テストをやって、とある問題でお互いの名前を挙げたら、その答えが「それはあなたの好きな人です」だった!?

作者: 間咲正樹

「ねえねえ畠中(はたなか)くん、これ面白そうだからやってみない?」

「ん?」


 とある昼休み。

 今日も千本木(せんぼんぎ)さんと二人で、校舎裏のベンチで弁当を食べていると、不意に千本木さんがスマホの画面を見せてきた。

 いつの間にか千本木さんは弁当を食べ終えている。

 結構な量があったのに、相変わらず食べるのが早い。

 その割にはスレンダーな体型をしているし、いったいカロリーはどこに消えているのだろう?

 スマホの画面には、『無料心理テスト』という文字が表示されていた。


「へえ、心理テストか、確かに面白そうだね」

「じゃあ早速やってみよー。えーと、何何、『あなたは雪山で一人遭難してしまいました。ですが、偶然見付けた洞穴に入ると、そこにはあなたの知り合いがいました。それは誰でしょう?』だって」

「うーん、知り合いかあ」


 この時、パッと俺の頭に浮かんだのは――。


「俺のじいちゃんかなあ」

「私は、妹かな」


 ああ、千本木さんは中学生の妹さんがいるって言ってたもんね。


「では答えを発表します。『それはあなたが一番信頼している人物です』だって」

「ああ、それ合ってるわ。俺のじいちゃんメッチャ物知りでさ、困ったことがあった時は、まずじいちゃんに相談することにしてんだ」

「へえ、畠中くんのおじいちゃんカッコイイね! 私も合ってるな。私の妹はね、私と違って凄くしっかりしてて、頼りになるの。むしろ妹のほうがお姉ちゃんみたいだねってよく言われる。ハハ」

「そうなんだ」


 妹さんの話をする千本木さんは、とても嬉しそうだ。

 妹さんのことが本当に好きなんだな。

 美しき姉妹愛――微笑ましい。


「じゃあ次の問題いくね。えーと、『あなたは弓矢で的を狙っています。その的にはある人物の名前が書かれています。その人物とは?』だってさ」

「的に名前かあ」


 うーん、そうだなぁ――。


「俺は……千本木さんかな」

「あっ、奇遇だねー。私も畠中くんだったよ。ハハ」


 ほほう。

 てことは、答えは『仲のいい人物』とかかな?


「答えは何かなー。…………えっ」

「?」


 途端、スマホの画面を見つめる千本木さんの顔が、耳まで真っ赤になった。

 おや? 千本木さん?


「どうかした?」

「あ、うーん、こ、答えはね、『それはあなたの好きな人です』……だって」

「――!!」


 なっ!!?


「ふ、ふーん。まあ、これはあくまで心理テストだしね」

「そっ、そうだよね! あくまで心理テストだもんね! ハハ」


 あまりにも気まずいので、お互い何となく目を逸らしてしまう。

 クソッ、全身から変な汗が出てきた……!

 千本木さんから臭いって思われたらどうしよう……!

 ここは話を逸らさねば。


「あ、他にはどんな心理テストがあるの?」

「あ、うん、じゃあ次の問題いってみるね!」


 真っ赤になった耳を掻き上げながら、スマホの画面に目を移す千本木さん。

 よし、上手く逸らせたぜ。


「えーと、何何、『あなたは長い一人旅の果て、一軒の民家に辿り着きました。その民家には、とある人物が一人で住んでいました。その人物とは?』だそうです」

「民家に一人で……」


 パッと頭に浮かんだ人物の名前を、言っていいものかどうか一瞬躊躇したが、ここで下手に噓をつくのも、逆に意識してるみたいで恥ずかしいもんな。

 正直に言おう。


「俺は……千本木さんだよ」

「わ、私も……畠中くん、かな。ハハ」

「――!」


 またしても……!

 どうか今回は、変な答えじゃありませんように……!


「答えは、何だった?」

「え、えーっとね……。ひゃあっ!?」

「千本木さん!?」


 千本木さんはさっき以上に顔を紅潮させ、頭から湯気を噴き出してしまった。

 今度はいったい何がッ!?


「……千本木さん?」

「あ、うん、ゴメンね! えーと、こ、答えはね、『それはあなたが将来結婚したいと思っている人です』だって……」

「けっ……!?」


 えーーー!?!?!?


「そ、そそそ、そうなんだあ」

「い、いやあ、まさかまさかだよねー。ハハ」


 くうううううう、メッチャ恥ずかしいいいいいい!!!

 もう千本木さんの顔、まともに見れねーよッ!

 話題を……!

 話題を変えなきゃ……!!


「よ、よし、大分温まってきたね! この流れで、じゃんじゃん次の問題いってみよう!」

「そ、そうだね! うん! 次いくね、次!」


 自分でも何言ってるのかよくわかってないけど、テンパってるのは千本木さんも同じみたいで、目をぐるぐるさせながらスマホの画面に目線を戻した。

 セフセフ。


「次の問題が最後みたい。えーと、『あなたは森の奥で、イチゴが栽培されているビニールハウスを見付けました。そのビニールハウスには、所有者の名前が書かれています。その名前とは?』だって」

「イチゴのビニールハウス……」


 何だか嫌な予感がプンプンするが、かといってやはり噓をつくのは気が引ける。

 覚悟を決めて、正直に言うか……。


「俺は……千本木さん、です」

「私も……畠中くん、ですね。ハハ」


 何でお互い敬語になってるんだろう……。


「して、その心は?」


 そして何で俺は武士みたいな話し方になってるんだろう……。


「はい、えーと、その心はですね……。あぁ……」

「……!?」


 遂に千本木さんは諦観の籠った表情で、天を仰いだ。

 千本木さん……!?


「……発表します」

「は、はい、よろしくお願いします」


 くう!

 静まれ俺の心臓ッ!


「答えは、『それはあなたが今、キスをしたいと思っている人物です』だそうです」

「キッ……!!」


 そっ……ッッ。

 そうきたかァ~~~ッッッ。

 ……これはもういい加減、自分の気持ちを認めるしかないみたいだな。

 俺の千本木さんに対する、この気持ちを――。


「……どうする?」

「え? ――!!」


 その時だった。

 千本木さんが俺の手に、そっと自らの手を重ねてきた。

 千本木さんッ!!?

 そして千本木さんはボソッと、こう言った。


「キス、してみる?」



作中の心理テストは適当に考えたものですので、信憑性はございません。

ご了承ください。

普段は本作と同じ世界観の、以下のラブコメを連載しております。

もしよろしければそちらもご高覧ください。⬇⬇(ページ下部のバナーから作品にとべます)



2022.6.26追記

挿絵(By みてみん)


「長月 おと」様からファンアートをいただきました!

誠にありがとうございます!!!

長月 おと様の


「【書籍化準備中】聖剣乙女は愛しい騎士のために無双する」


https://ncode.syosetu.com/n5378hg/


も、是非ご高覧ください!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バナー
(バナー作:「石河 翠」様)
(女の子はPicrewの「ゆる女子メーカー」でつくられております)
https://picrew.me/image_maker/41113

バナー
(バナー作:「砂臥 環」様)
― 新着の感想 ―
[良い点] う、わーーーー!!!? うらやましすぎるんゴーーー(´;ω;`) [気になる点] 畜生、オイラもこんな学生生活を送りたかったです!!(血涙) [一言] めちゃくちゃ読みやすく面白かったです…
[一言] ファンアートおめでとうございます。 いやー、良かった。ここまで引っ張っておいてオチがあったらどうしようかと。 ハッピーエンドで終わりましたね。
[良い点] にゃはあ~(〃▽〃)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ