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第23話 美陽の魔法講座 物質変換魔法編

 美陽姉の転送魔法による生き物を生きたまま転送するという改良は遅々として進んでいないらしい。天才の名を欲しい儘にしてきた美陽姉にしては珍しい事だ。

 今は気分転換という名目で、リビングで俺に凭れかかっている。所謂「大地分の補給」という奴だ。

 この程度のことで美陽姉に元気が戻るのならお安い御用、というか、俺の方が美陽姉の身体の柔らかい部分とか仄かに漂ってくる甘い香りとかを堪能している気がする。勿論、夜の方もそれなりの頻度で営んでいるけれど、それはそれ、これはこれだ。


 話が変な方向に逸れたが、気分転換とか発想の転換とかになれば良いかと思い美陽姉に質問する。


「なあ、美陽姉。前から聞きたかったんだけど、裏庭の兎小屋とかを作った魔法って、あれ何?」

「うーん? あれは、そうね物質変換魔法ってところかしらね。ちなみに私のオリジナル」

「物質変換?」


 漫画とかでもあまり聞かない魔法だな。


「そう。自分の魔力を物に変えているの」

「魔力を物に変える? イマイチ良く分からないな」

「実際にやってみた方が早いわね」


 そう言って美陽姉はテーブルの上に小さい魔法陣を展開させた。


「これが物質変換魔法の魔法陣。これに魔力を込めると……」


 いつものように魔法陣が美陽姉の魔力に反応して輝き出す。そしてその光が魔法陣の中央へ収束し、やがて光の中から出てきたのは小さい木製のような人形……。ひょっとして俺がモデルか? 


「あれっ? 付与魔法の時は魔法陣に色々書き込んでいたようだけど、この魔法はそういう事しないの?」

「魔法陣を書き換えて物を作ると、複雑過ぎて細かい部分まで巧く作れないのよ。だから魔力を込めるときに、どんなものを作りたいかイメージすると、そのイメージ通りの物が出来上がるって魔法に改良したの」


 なんか、さらっととんでもないことを言われた気がするが、その辺は美陽姉だからとしか言いようがないか。


「凄いな。どんなものでも作れるの?」

「イメージ出来ればね」


 イメージかぁ。センスが問われそうだ。少なくとも俺には美陽姉ほど精巧なものは作れなさそうだ。美陽姉が作った俺の人形を見ながら、そんな事を考えた。


「この魔法、美陽姉のオリジナルって言っていたけど、他の魔法使いは使えないの?」

「魔法そのものはそんなに難しいわけじゃないわよ。オリジナルの部分はイメージしたものがそのまま出来上がるって部分だけね」

「ああ、そういうのは何となく難しそうだな」

「まあ難しいのは確かなんだけど、この魔法が一般化していないのは他に欠点があるからなの」

「欠点?」

「使用する魔力量が大きすぎるの」


 そういって美陽姉は俺の人形の頭を指先で軽く弾いた。人形はコロンと転がり、そのまま霧のように霧散してしまった。ああ、俺の人形が……。


「見ての通りよ。ちなみに今の大地人形には平均的な魔法使いの保有魔力量を込めてみたわ。それだけの魔力を込めても強度はたかが知れているの」

「えっ、でも兎小屋って確かかなりの強度とか言っていたよな」


 確か金クラスの冒険者たちが束になっても傷一つ付かないとかなんとか……。

 

「あの小屋はアルのために私が全力に近い魔力量を込めたからね」


 美陽姉はもう少し分別というものを身に付けた方が良いんじゃないか。いや、アルは確かに可愛いけれど。というか美陽姉の魔力量、本当に常軌を逸しているな。


「五人分くらいの魔力を込めると、なんとか実用レベルくらいの強度になるかな」


 そう言いながら再び魔法陣に魔力を込めると、今度は二体の小さい人形が現れた。これは美陽姉と美月姉だな。綺麗というより可愛い感じだ。こっちは転んだくらいでは消えたりしないくらいの強度がある。頭部をツンツン突いてみても壊れる様子はない。


「せっかく作ったんだし、部屋にでも飾っておいて」

「そうするよ」


 美陽姉から渡された二体の人形を受け取る。机の上にでも置いておくか。


「でもさ、それほどの強度が必要じゃない場合なんかには使えるんじゃないの? 例えば戦闘中の囮とかさ」

 

 有名ロボットアニメに出てくるダミーを思い出した俺は美陽姉に話してみた。


「使えなくもないわね。ただ、やっぱり魔力の消費量がネックよね。強度や見た目にこだわらなくても良いのなら、態々物質に変える必要ない気がしない? それなら魔力をただ出しただけでも十分囮にはなるわよ」

「そうか。そういう点でも一般化しないってことか」


 上手くいかないものだな。


「私たちの場合、色々と特殊だからね。今まで何でもあったところ(日本)から何もないところ(異世界)に来ちゃったからね。我慢するっていう手もあるけど、私の場合は手段があったからね。必要に駆られてってところかしらね」


 美陽姉のことだから「必要に」という部分に「俺のため」という要素がかなり占められているのだろうと言われなくても分かる。本当に恵まれ過ぎているな俺は。



「ちなみにいつも付けている下着なんかも、この魔法で作っているわ。この前の水着もそうね」

「いや、そういう情報は良いから」

「そうは言っても、この魔法の良いところは手触りなんかも好きなように出来るところだからね。大地好みの下着だって作れるんだから。デザイン含めてね。着て欲しい下着があったら、言ってくれればすぐ作るからね」

「…………えーと、はい、分かりました」

「そこは「そういうの良いから」じゃないんだ」


 コロコロと笑う美陽姉。良い感じに気分転換出来たのかな。この程度の事でも美陽姉の力になれたんだろうか。

 そんな事を考えていたら、ふと、とあることを思いついてしまった。


「なあ美陽姉、この魔法で作ったものって付与(テンチャント)は掛けられるの?」

「出来るわよ」

「じゃあさ」


 断られるか、怒られるか、まあ言うだけなら只だ。


「伝説の聖剣、作ってみようぜ」

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