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第18話 魔物

すみません。短めです。

余裕があれば、明日、もう1話更新出来ると思います。

 鶏卵騒動のあった翌日。鳥小屋を作り終え、中には手に入れた鶏が四羽放たれた。急な環境の変化に戸惑っている感じもするが、とりあえず大丈夫そうだ。この中に後日マーロンさん経由で手に入る予定の二羽も入る。それでもまだ小屋の大きさには大分余裕がある。


「ついでに鶏も増やせれば鶏肉にも困らなくなるからね」


 とは美月姉の談だった。

 美月姉が懸念していた臭いに関しては、美陽姉が鳥小屋周辺に結界を張ったので周囲に臭いが漏れることはない。鳥小屋そのものの臭いはどうしようもないらしいが……

 鳴き声に関しても、屋敷の周囲に遮音結界が張ってあるらしいので、こちらも屋敷周辺に迷惑がかかることはないらしい。


 こうして鶏卵騒動も落ち着き、昼食を取り終えた俺たちはリビングでまったりしていた。


「そういえばバタバタしていて聞きそびれたんだけど、青銅ブロンズランクってアイアンランクとどう違うんだ?」

「簡単に言ってしまえば、受けられる依頼の報酬が上がるわね。勿論その分難度も上がるけど」

「まあそれは分かる。他には?」

「特徴的なのは青銅ランクからは依頼を同時に二つ以上受けられるってことね」

「言っていることは分かるんだけど、例えば?」

「商人の護衛でAからBという街へ行くっていう依頼を受けるついでにBの街への届け物の依頼を受けるとか、Bの街近くで出没している害獣退治の依頼を受けるとかがよくあるケースかしらね」

「成程ね。ついでの依頼も一緒にっていうパターンか」


 青銅ランクって言ってみれば初心者から中堅へ移る頃だから精力的に活動するんだろうなぁ。うちもそんな感じになっていくんだろうか?

 俺も本格的にこっちの文字を読めるようにならないとな。


「害獣退治で思い出したんだけど、今まで猪やら猿やら鹿やらの害獣は見てきたんだけど、所謂魔物と呼ばれている奴って見たことないんだよな。確かこっちの世界には魔物っているんだよな」

「いるわよ。と言っても私もまだ見たことはないんだけどね」

「魔物ってどんな存在なんだ?」

「瘴気を取り込んでしまった野生動物って言うのが一般的な考え方のようね」


 瘴気かあ、なんだか異世界っぽい響きだ。


「日本、というか地球で言うところの瘴気って悪い空気とか悪い水って意味なんだけど、こっちの世界では澱んだ魔力というところかしらね」

「澱んだ魔力?」

「そう。こっちの世界は空気中に魔力が含まれているけれど、その魔力に、例えば動物の死骸や排泄物から発生するガスや、水の流れが無くなってしまった沼の汚水や汚泥なんかが混じって澱んでしまったのが瘴気なの」


 なんとなくイメージは出来る。


「その瘴気を体内にとり込んでしまった野生動物が魔物と呼ばれる存在なのよ」

「とり込む?」

「そう。空気中の瘴気を吸い込んでしまったり、瘴気のついた木の実や草を食べたりとか、瘴気に汚染された水を飲んだりとか、瘴気を体内に入れてしまうと、大抵の個体は瘴気の毒性に耐えられなくて死んでしまうの。でも、稀に瘴気を取り込んでしまえる個体が存在するの」

「つまり瘴気に耐えられる強い個体が魔物になるってわけか」


 見方を変えれば、リスキーなパワーアップみたいな感じだな。「これを飲めばお前は死ぬかもしれないが、耐えられれば飛躍的に強くなるだろう」なんて漫画でよく見たことがあるぞ。


「強い弱いというよりも、相性らしいわよ。それがこっちの世界の所謂生物学者たちが出した答えね」

「生物学者っているんだ」

「そりゃあいるでしょ。でも、まだ判明していないことも多いらしいわ」

「それってどんな事?」

「今のところ魔力を取り込んだ獣は、種族ごとに同じ変化をするのよ。角が生えたり牙や爪が伸びたり。普通なら個体ごとに違う変化をするのが自然て感じがしない?」

「確かに、そうだな」

「でも、猪だったら牙が伸びる。鼠は大型化する。あっ、そうそう、馬は角が生えるんだって、ユニコーンだよ、ユニコーン。あっ、でも私たちはユニコーンを捕まえても乗れないか。もう処女じゃないし」

「……そういうことを言うなよ。大体あれは俺たちの世界の伝説だから」


 たまにぶっ込んでくるよな、美陽姉は。


「とにかく、どんな個体でも種族ごとの変化を逸脱しないのよ。でもヒントはあるの」

「それは?」

「魔物化した個体が子供を作ると、その形質は子供に受け継がれるの」

「ああ、遺伝子とかその辺の話?」

「恐らくね。こっちではまだ遺伝子の概念が無いから研究が進まないでしょうけど、多分瘴気が遺伝子に影響を与えているんだと思う。だから種ごとに同じ形質変化を起こすんだと思うわ」

「納得出来るような、出来ないような……」


 一応の説得力はある気がするが、結局は机上の空論だからなのか、イマイチしっくりこない。そんな考えが表情に出ていたのか、美陽姉がフォローを入れてくる。


「良いんじゃない? 私たちは学者じゃないんだし」

「そんなもんか。そういえば、魔物化した動物も子供作れるんだ?」

「ええ。これも種ごとに違うんだけど、魔物化が激しい種はその分、繁殖力が落ちていくらしいわ」

「逆に魔物化が少ない種は繁殖力は衰えないと?」

「ええ。なんか世界がバランスを取っているような気がするわね」


 バランスかぁ。こっちの世界には神様っているんだっけ?


「それと、こっちの方が難問なんだけど、魔物の中に私たちが知るところのゴブリンに似た魔物がいるの」


 ゴブリンかぁ。スライムと並んで雑魚モンスターの代名詞みたいな奴だな。


「あれっ、ちょっと待って。おかしくないか?」

「大地も気が付いた? 野生動物が瘴気を取り込んで魔物化するのなら、ゴブリンは一体何が瘴気を取り込んだって話なのよ」

「そうだよな。えっ、まさか人間?」


 俺の問いに首を横に振って否定する美陽姉。


「人が瘴気を取り込んで魔物化したという例は無いらしいわ。耐性が高いらしくて体調を崩したり、寝込むことはあっても魔物化はしないみたい。それに浄化魔法で体内の瘴気は消せるらしいし」

「だとすると、ゴブリンは一体何が魔物化したんだ?」

「それが生物学者たちを悩ませている最大の難問なのよ。ゴブリン以外にも人型の魔物はいるらしいけど、勿論、それらのルーツは判明していないらしいわ」

「魔物のルーツか。まあ今の俺たちが考えても仕方がないことだよな」

「まあそういうことね。というわけで、美陽おねえちゃんの魔物講座はこれにて終了です」


 そう言って美陽姉は隣に座っている俺に抱き着いてきた。所謂「大地分の補充」らしい。何が良いのか分からないが、俺は俺で気持ちが良いので、されるがままになっている。



 翌日、依頼を探しにギルドへ向かうと、いつも以上にギルド内が騒がしかった。


「何かあったんですか? フローネさん」

「それが…… 魔物が出たみたいなんです」

 

 噂をすれば影が差す――。 でもないだろうが、昨日、話をしたのと魔物の出現は関係ないよな?

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