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第13話 ゆうべはお楽しみでしたね

※今回はH方面の話になります。直接的な表現は可能な限り避けていますが、

苦手な方、不快に思う方は、ご容赦下さい。

最悪、この回は読み飛ばしても全体としては支障が無いようにしたつもりです。


また、H方面と言っても別にエロに重点を置いているわけではありませんので、

いやらしさを期待されても、がっかりされると思いますのでご注意下さい

 結論から言うと、やってしまった。


 俺は美陽姉と美月姉のことが好きだ。勿論家族としてではなく女性として。――釣り合うとかは別にして――

 だけど優柔不断この上ないことだが、二人のどちらかを選ぶことが出来なかった。いや、究極の選択どころの話じゃないだろ、こんな二択。

 いや、分かっている。何でお前が選ぶ側なんだって言われるのも分かっているんだ。

 でも、二人が俺に好意を抱いているのは紛れもない事実なんだ。――俺なんかのどこが良いんだというのは別にして―― これは俺の自惚れではないはずだ。


 日本にいたときもずっと思っていたことなんだが、俺がもし、二人のどちらかに告白すれば、その日から付き合うことになっていたのは想像に難くない。クラスメイトなんかにも同じようなことを何度も言われたことがあるので、傍から見てもそういう感じだったんだろう。

 一方で、選ばれなかった方のことも考えてしまうと、ますますどちらかを選ぶということが出来なくなっていた。

 だからと言って、どちらかを選べないから三人で付き合います、なんてのは現代社会で許されるはずもなく、二人の両親にだって申し訳が立たない。だから俺たち三人は、ずっと微温湯の関係を続けてきていた。


 俺だって男子高校生として、普通に性欲だってある。ここだけの話、二人のことを考えて自分を慰めたことだって一度や二度どころの話じゃない。


 昼間、こっちでは一夫多妻が有りと聞いて箍が外れた、吊り橋効果、据え膳食わぬは何とやら、疲れナントカ……。

 理由を付けようと思えばいくらでも付けられるが、とどのつまりは性欲に負けたんだ。あんな美女二人が好意丸出しで、しかも半裸に近い状態ですり寄ってきて、手を出さないなんて事出来るか!


 二人を大事にしたいという気持ちは勿論ある。が、それとこれとは話が別なんだ。男は心に棚を作れる生き物なんだ。



 煩悩の赴くまま二人に手を出してしまった俺は、二人の身体に見事に溺れてしまった。三人での行為は数時間に及び、汗やらなにやらでベタベタになってしまった身体を綺麗にしようと向かった風呂場でも行為が再開された。そして部屋に戻るといつの間にか綺麗になっていたベッドで更に事に及んだ。


 夜が明けるころ、文字通り精も根も尽き果て、俺たちは三人でそのまま泥のように眠った。



 目を覚ますとベッドには俺一人だけだった。夢……じゃないよな。窓の外を見るとすっかり薄暗くなっている。逢魔が時というやつだ。いや、今時逢魔が時なんて言わないか。中二病かよ。

 眠りにつく前、空が白んでいたのを覚えている。一体何時間寝ていたんだ。


 意識がはっきりしてくるにつれ、昨晩のことが頭に思い浮かんでくる。

 合意の上だったとはいえ、とんでもないことをしてしまった。二人に謝らないと。俺は急いで着替えてリビングへと降りて行った。


 リビングには二人の姿は無かったが、すぐ隣のキッチンから良い匂いがしてくる。美月姉はキッチンか。

 キッチンでは美月姉がいそいそと料理を作っている。美陽姉もテーブルに座っていた。

 俺がキッチンに来たことに気が付いた二人が声をかけてくる。


「やっと起きたの、大地」

「大地ちゃん、おはよう。よく眠れた?」


 二人とも、昨日までと何も態度が変わっていない。俺に気を使ってくれているのか。

 俺は二人に近づき、深々と頭を下げて謝罪の言葉を口にする。


「美陽姉、美月姉、本当にごめん。謝って住むことじゃないのは分かっているけど……」


 それ以上は言葉が続かなかった。二人のことはかなり理解している方だと自負してはいるものの、こういう状況で二人がなんて言うかまでは、流石に想定外だ。殴られることは覚悟しているし、最悪この家を追い出されるまであるかも…………。

 勿論、それだけのことをしてしまったんだから、二人がそう決めたのなら俺はそれに従うまでだ。


「「?」」


 二人は俺が何に謝っているのか分からないという様子でお互い、顔を合わせている。そして今度は俺の方を見て訊ねてきた。


「「何のこと?」」


 これは俺に気を使っているわけではない。本当に俺が何で謝っているのか分かっていない顔だ。


「何のことって、昨夜のことだよ。その……」


「ああ、ゆうべはお楽しみでしたね」


 ニヤァといやらしい笑顔を浮かべてそんなことを言ってくる美陽姉。俺は思わず腰が砕けそうになるが、なんとか踏みとどまった。っていうか、それは当事者が言うセリフじゃねえ。


「昨夜の大地ちゃん、凄かったわ……」


 両手を赤らんだ頬に当て、恥ずかしそうにそんなことを言う美月姉。やめてくれ、一体何を思い出しているんだ。


「そうじゃなくて――」

「大地!」


 俺の言葉を遮るように、少し強めに美陽姉が俺の名前を呼んだ。


「大地の言わんとしていることが分かったわ」


 美陽姉の言葉に隣に立っていた美月姉も無言で頷く。


「大地、あんたは私たちに謝るようなことは何もしていない。っていうか考えてみなさい。そういうつもりの無い女が、あんな時間にあんな恰好で男の部屋に行くと思う?」

「ええと、それは…………」


 美陽姉の言わんとしていることは分かる。でも俺は二人を大事にしたいって――


「私たちを大事にしたいって思う大地ちゃんの気持ちは嬉しいわよ。でも、それって私たちの気持ちのことは考えてくれた?」


 俺の頭の中は筒抜けなのか、俺の考えていることに対して、美月姉が問いかけてくる。


「私としてはむしろ、あの状況で手を出されなかったとしたら、そっちの方がショックよ」

「そうよ大地ちゃん。謝ってもらうどころか、私たちは大地ちゃんとこういう関係になれて、今凄く嬉しいのよ」


 二人は俺の答えなど待つつもりもなく、自分たちの気持ちを素直に伝えてきた。なんて言うか、俺にとって都合が良すぎないか、この展開は……。


「それとも大地は私たちとこういう関係になったことを後悔しているの?」

「いや、それだけは絶対に無い」


 これははっきりと伝えなければならない。いくら俺でもそれくらいは分かる。


「確かに三人なんてアブノーマルなのは確かだけど、私も美月もお互い納得尽くだしね。大地が気にしないのなら、私はこの関係のまま続けていきたいんだけど?」

「私も美陽と同じ気持ちよ。大地ちゃんはどうなの?」

「……俺も、三人一緒が良い」


 俺は一体、前世でどんな徳を積んだんだろう? こんなに幸せなことがあっても良いんだろうか。それともここで一生分の幸運を使い果たしたんだろうか? 明日死ぬのかな?


「じゃあ、この話はこれでお終い。……じゃなかった。大地、昨日もしてる最中に何度も言ってもらったけど、やっぱりちゃんとした言葉で聞きたいな」

「あっ私も。お願い大地ちゃん」


 二人が俺に言って欲しい言葉……。確かに昨日はなし崩し的に始まってしまって、ちゃんと伝えていなかった。俺は改めて二人に向き合い、言葉を紡いだ。


「美陽姉、俺は美陽姉を愛している。これからも一緒にいて欲しい」

「うん、よろしくね、大地」

「美月姉、俺は美月姉を愛している。幸せにすると誓うよ」

「ありがとう、大地ちゃん」

  

 こうして俺たちは、この異世界の地で三人一緒の恋人同士となった。

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