ギルド スノープリンセス2 勇者編 反逆⑤
「ゲートアウト。魔道機関正常。各部オールグリーンです」
本当に宇宙の海で通用した。
「ねぇさま、ルート確認完了」
「ねぇさま、航行プログラム入力です」
ルピとルカも普通にしている。魔道兵器セイレーンは、宇宙の海対応型だったようだ。
「最大加速です!目標フォボス!」
セイレーンが言うと、本体は4連恒星系へ向け加速した。
「思ったよりスムーズだぞ」
ああ、だが、これからだろうな。ルートが1本道だから、狙われやすくなる。
リリスが重要施設に簡単に近寄らせてくれるとは思えない。戦闘は覚悟の上だ。
セイレーンはフォボスへの進入ルートを進む。燃え盛る恒星の間を進み、いよいよ恒星系内部に入って行く。
「ねぇさま、フォボスの直接観測まで10秒」
「ねぇさま、各センサーをフォボスへ向けます」
重力場の影響で、フォボスを観測することができなかったが、ここまでくれば・・・
「魔道シールド展開!武器システム起動です!」
セイレーンが叫ぶ。フォボスは武装した『ハリネズミ』だった。砲台がハリネズミの針のように飛び出し、原形が分からない程。
「魔道機関出力最大!ルピ、ルカ、武器管制任せます」
セイレーンが指示をした瞬間だった。
「ねぇさま、魔道機関内部に異常重力感知」
「ねぇさま、異常感知周辺に魔道シールド展開です」
ルピとルカの声の直後、船体が大きく揺れた。
「ねぇさま、第2ブロック格納庫、武器システム制御室にも異物出現」
「ねぇさま、本体内部の異物にシールドします」
立て続けに船体は大きく揺れる。
「なんだぞ?何が起こってるぞ?」
「セイレーンピンチ。ハウル私守れ」
「どうしたのかな~やばいのかな~」
「チビレーン全機射出。偽装信号発信!本体はランダム航行に切り替えます!」
セイレーンは指示を出すと、慌てる俺たちに冷静に言う。
「敵は私の心臓部に直接攻撃を仕掛けてきました。ルピとルカの対応が早く、被害は出ていません」
セイレーンは落ち着いていた。
チビレーンはセイレーンの攻撃型艦載機のようなもので、直径が3mほどの小さなセイレーンだ。『偽装信号』を出すことで、本体と同じ信号を出し、敵の索敵に『本体が複数』あるかのように見せることがでる。
「これは、空間転移システムでござるか?」
トーレフの言葉にセイレーンは『たぶん』と言い頷く。
セイレーンは受けた攻撃を瞬時に理解し対策を打った。
チビレーン100機を出し、偽装信号で本体との区別をできなくした。
敵には101機のセイレーンが見えている。数を増やすことで、攻撃を受ける確率を下げ、ランダム航行でロックオンを避けたのだ。
「ねぇさま、進路上にエネルギー反応多数」
「ねぇさま、敵攻撃機と認識です」
「チビレーン各機散開!迎撃します!本体からは援護射撃開始!」
対応が早い。
セイレーンは『人の心を持った兵器』として作られ、人の目を避けながら800年間、海の底に居た。
800年の間、海の底でセイレーンは、兵器としての自分の存在意義を考える。
そして、『兵器の価値は強さ』との答えにたどり着く。
ならばどうすれば強くなる?『火力』か『防御力』か『性能』か・・・・
セイレーンの出した答えは『戦略』だった。
どんな火力も、どんな防御力も戦略で勝る相手には勝てない。たとえ性能差があっても戦略で差を埋めることができる。
『戦いにおいて最も重要なのは戦略』
との考えに達した。
あらゆる状況を想定したシュミレーションを行い、架空の敵との戦いを繰り返す。
蓄積されたデーターが、セイレーンの強さになる。
「ねぇさま、フォボスから攻撃きます」
「ねぇさま、回避航行任せます」
ルピとルカは、本体からの攻撃に加え、100機のチビレーンの操縦をしている。回避航行はセイレーンが担当する。
セイレーンはフォボスの砲台の動きを観測し、撃つ前には着弾点の計算を済ませる。1手早く回避行動に出れるが、負担は大きくなる。
「マスター、ハドロンブラスターを使います」
セイレーンは、一撃で勝負をつけようと考えた。
「できれば証拠が欲しいぞ。リリスの関与を示す証拠と、魔笛の研究に使われていた機器の確保だぞ」
ああ、最終的に俺たちが乗り込んで、研究者を捕まえるのがベストだ。
「それは分かります。しかしフォボス内部に生命反応はありません。現状では私の負担が大きく、後5分ほどでCPUが焼き切れて機能を停止します」
それは不味い!制御器のセイレーンが機能停止したら本体も・・だ。
「それに上陸は危険と判断しました。生命反応がないこと、過剰な防衛システムを持つことから計算して、マスタ―達の上陸後に、自爆の可能性が98%あります」
た、たしかにだ。下手に上陸し内部に進めば、自爆され全滅まである、
「良いぞ、セイレーン!魔道砲を使うぞ!一撃でケリをつけるぞ」
マスタ―であるアリスの許可をとり、セイレーンはハドロンブラスターをフォボスに打ち込む。
フォボスが爆発炎上。文字通り跡形もなく破壊された。
証拠の確保は難しいが、これでリリスの牽制にはなるはずだ。
「ケインさん、女神ポケベルに大量のメッセージが・・・『564』などの悪意のあるものまであります」
天界も騒ぎ出したか。
「無視しろ。このまま地球へ向かう!」
俺たちは最大の目標、地球のハイパーブラックホールの消失作戦に移る。




