ギルド スノープリンセス2 勇者編 オラシオン①
勇者ランク、堂々1位の登場です。ケインたちはどうするのか?
「あの子たちも、笛の力に屈した、と言うことですか」
王宮から、遠くの山を見ながらヴィーナスが呟く。
「ケインさん、逃げることをお勧めします。オラシオンに勝てる者はいません」
それが正解だろう。でも、逃げ回っていても何れは見つかる。
「一度手合わせしておくぞ。どれ程の物か、見ておくぞ」
アリスが言う。俺も同じ意見だ。
「迎え撃つ!全員戦闘態勢だ!」
俺の指示で、全員が表に出る。
「ヴィーナス様、申し訳ありません。できる限りの抵抗はしましたが、笛の力に負けてしまいました」
いかにも好青年のオラシオンは、ヴィーナスの前に膝ま付き、礼儀正しく言う。
「私たちは、そのケインと言う男を殺したくて仕方ありません。この欲求に抗うことができません」
並んで言うのがオラシオンの妻『ヘーゼル』。
「ティナの旦那様になる方です。ケインさんは殺させません。どうしても・・と言うのであれば、担当女神として、あなた達を『敵』であると私は宣言します」
ヴィーナスは布団を被ったまま、前に出ると強く言う。
オラシオンとヘーゼルが立ち上がる。
「ケインさん、あなたには申し訳ないと思っている。世界を守る勇者を、世界を守っていた私が手を下すと言うことに、私は自分が情けない。だが、この欲求には逆らえない」
「私たちのターゲットはケインさん、あなただけです。他の方には危害を加えません。どうか私たちに殺されてください」
正面から堂々と『俺だけが狙いだ』と宣言し、隠すことなく『他の方には危害を加えない』と言う、オラシオンとヘーゼル。
凛とした態度、礼儀の正しさ。確かに王道勇者だ。風格も俺とは比べ物にならない。
「いいぞ、ケインが相手をしてやるぞ。蘇りし勇者オラシオン、どっちが上か、勇者ケインのチームとして、正々堂々と戦うぞ。現役の強さを見せてやるぞ」
アリスが言い返す。
「そうしてもらえると助かる。勇者ケイン、尋常に勝負だ」
オラシオンは腰の剣を抜く。聖剣触死は怪しく輝いた。
「先に謝っておくぞ。ヴィーナス、ごめんね♪だぞ」
アリスはヴィーナスに一言謝った。
「アリスさん、私に謝罪は必要あり・・・」
と言った瞬間、セイレーンの魔道砲がオラシオンたちと、軸線上にいたヴィーナスを襲う。
「お母様!!!」
ティナが叫ぶが、ヴィーナス程の神女神なら死にはしないだろ。
「ヴィーナス様、お怪我は?」
勇者オラシオンは無事。しかもヴィーナスを守る余裕まであった。
「不意打ちとは勇者らしからぬ行為。あなたは勇者のプライドが無いのですか?現役最強勇者ケイン」
ヘーゼルは俺たちを睨みつける。
「不意打ちにも対応してるって聞いたぞ。パーフェクトキャンセルがどれ程のものか、見ただけだぞ」
アリスがヘイヘイと言う。
「私のことは聞いている、と言うことですね。では、この聖剣触死についてもご存じ」
オラシオンが聖剣触死を高々と掲げた瞬間・・・・
「ケインさん、死んでください!」
一瞬で俺の前にオラシオンが現れ、剣を振るう。だめだ!避けられない!
「ケイン!!」
アリスも反応できなかった。だが・・・
「婿殿!!」
アイリスが俺を突き飛ばす。聖剣触死は俺の胸の上を素通り。
「・・・ママ・・・」
しかし、突き飛ばしたアイリスの袖を切り裂いていた。
「タ、タイムだぞ!ティナ時間を止めるぞ!」
アリスがタイムを要求。そして指で空中に四角を書く。
ビデオ判定だ!
「ああ、なんと言うことだ。私としたことが・・・」
「服だけなら効果は出ないわ。肉体に触れてさえいなければ・・」
俺以外には危害を加えない。そう宣言したオラシオンとヘーゼルも、ティナが神の加護で映し出すスロー映像を見入る。
「セーフだぞ。ママは生き残ったぞ」
超スロー映像で確認できた。触死はアイリスの手首をぎりぎりで躱していた。
「では戦闘を再開します。元の位置に移動してください」
ティナが言うと、オラシオンとヘーゼルは安心したかのように「危なかった」「よかったわ」と言いながら元の位置へ・・・
「神の加護!空間固定です!!」
ティナが空間固定でオラシオンたちの動きを止める。
「今だぞケイン!」
ああ、任せろ!
「ケインスペシャルだ!!!」
後ろ向きのオラシオンたちに、前もって仕込んでいた俺の必殺技!ケインスペシャルをお見舞いだ!虚数世界の攻撃!受けてみやがれ!!
九重から放たれた虹色の光がオラシオンたちを直撃。
だが、まるで効いていない・・・ピンピンしていやがる。
「おいおい、流石にこれはないだろ?」
「そうです。女神がタイムをかけてたのですよ」
少しはダメージ食らったように、見せてくれても良いだろ。俺の必殺技だぞ。
「何言ってるぞ?ティナは『では戦闘を再開します』と言ったぞ。開始の合図をしてるぞ」
アリスが食いついた。
「女神は元の位置へ戻るようにと言った!戦闘開始は元の位置に戻ってからだ!」
ほー。流石の王道勇者も反論し返すか。
「私たちは戻ったぞ。だから戦闘を開始したぞ。どこが悪いかだぞ?」
言い合いになればアリスに負けはない。
「はい。その通りです。ケインさん達が元の位置に戻ったのを確認したので、私も勇者チームの一員として神の加護を使いました」」
当の女神から仕掛けたんだ。文句は聞かない。
「どうやら、君たちは・・・」
言いかけたが、止めたあたりが紳士だ。だが、冷静でいられるかな?
「オラシオン、ケリをつけましょう。この方たちと長く戦いたくはないわ」
ヘーゼルも呆れた表情だった。
「ティナ!ピー!ケインを守るぞ!」
戦い方は、今まで得た情報から分かっていた。
ティナが俺に抱き付くと、マオの肩から飛んだピーが巨大化して、俺たちに覆いかぶさる。
「くっ!!」
完全に隠れた俺に、オラシオンは舌打ちをした。
「私たちは攻撃だぞ!ヴィーナスを狙うぞ!!」
奴らは俺以外に危害を加えないと宣言した。ならば俺は仲間に守られていればいい。
そして、セイレーンの魔道砲からヴィーナスを守ったように、担当だったヴィーナスを傷つけたくないと思っている。
奴らに攻撃が通らないのなら、ヴィーナスを狙えばいい。
防戦一方になる。
「き、貴様ら!!神女神様に!」
「やめなさい!ヴィーナス様に何を!?」
こうなると手心を加える連中ではない。ヴィーナスにも容赦ない攻撃を始め、オラシオンたちはヴィーナスの守りで手一杯になる。
その間に、俺はティナとドロンだ。




