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ギルド スノープリンセス2 勇者編  Drインカ①

今回のラスボス的な敵の登場です。

「なんだと?それは本当なのか?」

「ボクがこの目で見て来たよ。ベルゼゼブの領域だけじゃない。広範囲に凍り付いて、氷の下の部族は全滅していたよ」

ギルバがリリスに報告した。

ベルゼゼブが連絡を絶った。見に行ったギルバが見たのは、見渡す限りが氷の世界になった魔界だった。

「アブソリュート使いの小娘か?不味いぞギルバ。その娘が魔界に来たなら、パルム達も来ていると言うことだ。ベルゼゼブから私たちのことを聞き出している可能性が高い」

リリスが焦る。

「どうしよう部長?計画には5匹の星猫が必要だよ」

リリスが少し考え、決断した。

「計画は変更だ。ラムタの星猫は諦める。4匹で実行に移す。…なに、少し時間はかかるが、止められるものか。結果は同じだ」

「計画変更は僕が連絡しておくよ」

リリスは唇を嚙む。しかし顔は怪しく微笑んでいた。


「どうしたのかね?悔しいのか?嬉しいのか?さて、どちらの顔なんだね?」

リリスたちの部屋に、白髪に白い顎鬚の老人が、杖を突きながら入ってきた。

「いえ、大したことではありません。少しだけ予定に変更が出ただけです、Drインカ」

インカは髭を弄りながら言う。

「予定とは狂うものだよ。スムーズにいく方が珍しい。あまり気にしないで、正しく対応さえすれば問題はない」

リリスとギルバは席を立ち、会釈をしていた。

「装置は間もなく完成する。後は地球の実験を待つだけだが、君たちが気にしていた小僧の方はどうだね?」

穏やかな口調の中にも鋭い眼光。その目はギロリとリリスを見た。

「大丈夫です。奴らはここに気が付いていません。Drインカの作った笛に踊らされています。計画通りに私と笛にはたどり着きましたが、私と星猫には気が付いていません」

インカは立っているリリスたちに、手で座れと合図する。

「あの笛は最高の出来だ。現役最強の勇者と言え、過去の勇者たちの前では無力だろう」

ウンウンとインカは納得するように笑う。

「わしの科学力と錬金術を軽んじた女神共が、間もなくわしの前に膝まづくと思うと、夜も眠れんわ」

「成功は間違いなしです。ケインたちは、私の計画通りに踊っています」

「そうそう、ケインのバカは、まだ気が付いていないしね。下界が滅んでも残るモノが有るってことにもね」

リリスもギルバも嬉しそうに言う。

「下界が滅びても、『聖杯と起源の水』だけは残る。それを私たちが回収し、天界の女神たちを脅す。『天界も浄化してしまうぞ』とな。女神たちは、私たちにひれ伏すしか手はない。下界と共に、天界と魔界は私たちの手に落ちるのだ!」

「ワハハハハハ!愉快じゃのぉ。実に愉快じゃ」

Drインカは笑いながらギロリとリリスを見た。

「じゃが、油断だけはしないようにな。わしは装置の最終調整が終わり次第『フォボス』から『レムリア』に移る。レムリアの施設から、遠隔で装置を動かす。そっちは任せたからな」

リリスとギルバが立ち上がり礼をする。Drインカは部屋から出て行った。

「部長、いよいよだね」

「ああ、気が付いた時にはもう遅い。『ハイパーブラックホール』は、誰にも止める事など出来ぬのだからな」

リリスとギルバは大笑いしていた。

「だがギルバ、まだ油断はできない。奴らの事だ、どんなインチキをして防ぐとも限らん。やはり『オラシオン』は蘇らせよう。オラシオンならケインたちを抑え込める」

「魂だけなのに、手ごわいよね。流石はランク1位だよ。笛の力に抵抗したのは、オラシオンだけだよ」

「笛が壊れても構わん。なんとしてもオラシオンを蘇らせろ。ある意味、それで勝ちが確定する。オラシオンならケインたちを倒せるだろう。王道勇者にして最強の勇者だ」

「壊れても良いなら、何とかなるかな?遣ってみるね」

ギルバは頷くとゲートに入る。


「あと数日だ。計画は狂ったが、女神は時間凍結で対応できると考えるはず。だが無理なんだよ。『時間凍結』だろうが、『空間固定』だろうが、ハイパーブラックホールは誰にも止められない。私たちの勝ちなのだ!」

1人残った部屋の中で、自分に言い聞かせるようにリリスは言う。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「帰ったぞ!」

王宮へ戻るアリス達。だが王宮には誰も居ない。

「アリス、留守電がパンクしていますわ」

そんなに長く開けていたわけではないが、セットした留守電は依頼の連絡でパンクしていた。

「テーブルに~手紙があるよ~」

マオが置手紙を見つける。


『パルム達が来ている。ティナに来るように伝えてくれ。追伸。ニールについてだが、お前らが滅ぼしたサタン域に、魔界のはぐれ者たちが集まる街ができている。おそらくは、そこに住まう雑魚だろう。閻魔』

思い出した。パルム達が帰るためには、科学班が居ないと駄目だった。その科学班は天界へ派遣してしまったんだ。

「今はニールの方は良いぞ。パルム達を呼び戻す方が先だぞ。ケインは少し疲れたぞ。休むと良いぞ」

そこで『私は少し疲れたぞ。休むぞ』と言わないのがアリスだ。俺を休ませ、自分は食事の準備だ。

「留守電の方は私達で見よう。生ものは休むと良い」

「ええ、機械は疲れないわ。任せて」

機械族のレナとセレスが言う。

「そうですわね。ここはいったん解散ですわ。ティナ様には、私が連絡しておきますわ。皆さん、お疲れさまでしたわ」

アイリスが言う。

「妻はもう休んでいる」

ターナはハウルの肩に乗り、首に抱き付いたまま寝ていた。

「じゃ~私達も帰ろうか~」

マオとピーも帰り、アズサとナナは魔王軍の城、魔王城へ帰った。

「ケインも少し休むぞ。食事の下拵えが済んだら私も部屋へ行くぞ」

俺は寝室へと戻り、ベットに横になる。

・・・・魔笛・・・蘇る勇者・・・盗まれる星猫・・・リリス・・ギルバ・・

頭の中をキーワードが駆け巡る。

そして気が付かないうちに深い眠りについていた。



「お?目が覚めたかだぞ。結構寝ていたぞ」

俺が起きるとアリスが傍にいた。

「ああ、疲れていたから、よく寝れたよ」

「良かったぞ。私はウナの電撃で疲れが取れたぞ。ケインも一撃貰っておけばよかったぞ」

俺だとたぶん死ぬ。

アリスが資料に目を通していた。

「ケイン・・エクセレントが言うように『オラシオン』は、やばい奴だぞ」

ランク1位・・神女神のヴィーナスの担当で王道の勇者・・・。

「オラシオンだけでもやばいのに、連れの『ヘーゼル』も厄介だぞ」

アリスが俺に資料を渡す。


オラシオン・・・勇者スキル『オールキャンセル』

オールキャンセルは、全ての魔法と攻撃、状態異常をキャンセル、無効化するだと?

「一切の攻撃が通らない?」

「そうだぞ。最強防御魔法と言われた『絶対防御』の上位互換だぞ。絶対防御の唯一の弱点は、『使わないと発動しない』ところだぞ。術者が使わないと発動しない絶対防御の上が、オールキャンセルだぞ。使わなくても常時発動するスキルだぞ」

不意打ちも使えないと言うことか?

「ヘーゼルの『重加重』もやばいスキルだぞ」

重加重・・魔法や攻撃を重くするってやつか?

「重加重は変わった魔法だぞ。重加重を使うと魔法は重くなり、受けた時に、振り払ったりできなくなるぞ」

重くなる?魔法そのものを重力操作できるってことか?

「しかも、全属性対応で、物理攻撃にも効くぞ。この2人は夫婦だぞ。コンビネーションも一心同体レベルだぞ」

無敵の勇者と、超強力な魔法の妻。・・・無戦力の勇者と、超強力な魔法の妻。似てるんだがな・・俺とはえらい違いだ。

「オラシオンの剣も鬼ヤバだぞ。『聖剣 触死ふし』は、文字通りだぞ。触れただけで相手を殺せるぞ。剣に触れたらOUTだぞ」

エクセレントが逃げろと言うのも分かるな。これが相手では勝てる気がしない。

『一切攻撃が通じない相手が、触れただけで敵を殺す剣を持つ』

反則だろ?これ。


「婿殿、お疲れのところ申し訳ありませんわ。各地で暴れる勇者の対応が、天界では追い付かなくなりましたわ」

呆れる強さのオラシオンたちの対策を考えていた俺たちの部屋に、アイリスが来た。

「行くぞアリス。当面は各地の蘇った勇者たちの対応だ」

「うんだぞ。こっちのはケインが居るぞ。ケインさえいれば負けるはずがないぞ」

アリスは俺を信じている。俺はその期待を裏切る訳には行かない。

何としてもオラシオンを倒す。

そして世界に平穏を取り戻す。


俺はメンバーを集めると、各地で暴れる蘇った勇者たちの元へ行く。






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