ギルド スノープリンセス2 勇者編 強敵たち③
「・・エクセレント様」
エレノアの前に降臨したエクセレント。
「勇者エレノアよ、大女神エクセレントとして再度命じる!攻撃を止めるんだ!」
エレノアは訴えるような目で答える。
「私は勇者です!破壊などしたくない!でも‥でも駄目なんです!破壊衝動が・・抑えきれない!・・エクセレント様、離れてください!あなたを傷つけたくない!」
ウナと同じだった。ウナも同じことを言っていた。エレノアには過去の記憶があり、エクセレントとの絆も覚えている。だが操られた魂は、意志さえも奪い取る。
「もう・・だめだ!抑えきれない!エクセレント様!早く・・早く・・この場から・・」
エレノアが悲痛の叫びをあげた。
だがエクセレントは、そのエレノアに近寄り、抱き付き抱きしめる。
「もういい。もう苦しむな。・・・・・愛おしのエレノアよ・・共に死のう。その魂を私が解放しよう」
抱き付くエクセレントの手に剣が現れた。
「この剣で私達を貫く。永遠に2人は1つだ」
「・・はい・・エクセレント様・・・どうか神の御慈悲を」
エレノアは目を瞑る。エクセレントは握る剣に力を籠める。
「今だぞレナ!!」
アリスが叫んだ。
「御免!」
エレノアの後ろにいたレナがエレノアを両断。エレノアは青い炎に包まれた。
「エ、エレノ・ア・・・」
呆然とエレノアを見るエクセレント。
「これで・・これでいいのです・・・エクセレント様・・」
エレノアは燃え尽きた。
「女神殿の手に剣は似合いません」
レナがエクセレントの手から剣を取った。
「良しだぞ!上手くいったぞ!」
「はい!作戦通りです!」
お前ら・・もしかすると最初からか?
「当然だぞ。無警戒の状態で近寄ればチャンスもあるぞ。それに私なら、ケインと共に死ぬぞ」
「はい。姉がエレノアと共に死を選ぶのは、流れ的に王道です。エレノアには必ず隙が生まれます」
アリスの怖さの1つに『俺のためなら躊躇わず死ねる』ことがある。
自ら死を選んだ者には、蘇生魔法や神の加護が効かないケースが多い。
もし俺とアリスが、エクセレントとエレノアのケースと同じ場合、自ら死を選んだアリスは蘇生できず、同意したとはいえ、アリスの剣で死んだ俺だけが生き返ることになる。
そして・・・アリスは、その覚悟が出来ている。
それが俺には怖いことでもある。
「ケインさん!酷いではありませんか!」
ティナにより戻されたエクセレントが叫ぶ。
「姉様、ケインさんは関係ありません。『愛に生き愛に死ぬ同盟』の、私たちが決めた作戦です」
そんな同盟を作ったのか?ますますアリスがやばい。
「そうだぞ。こんなところでエクセレントを失う訳には行かないぞ。あれはエレノアの記憶を持つ、偽りの魂だぞ」
偽りとはいえ、記憶を持つ。それを偽りと言ってよいモノか?
「しかし!あれはエレノアでした!間違いなく私のエレノアです!」
『パチン!!』アリスがエクセレントの頬を平手打ち。
「冷静になるぞ。自分の立場と役目を忘れるなだぞ。ヴィーナス家の長女の地位は、天界にとって重いぞ」
平手打ちされたエクセレントは、頬を手で押さえ呆然とする。
「カモミールと違って、男は星の数ほどいるぞ。早く忘れて次の恋をするぞ。きっとエレノアもエクセレントの幸せを望んでいるぞ」
エレノアは本来すでに死んでいる。過去に縛られることは無い。
「・・・その通りです。私は少し冷静さを欠いていました」
エクセレントも分かったようだ。
「そうだぞ。エレノアに祈りを捧げるといいぞ」
エクセレントは頷く。
「1256番目の愛人エレノアの魂よ、私はその魂に永遠の愛を誓おう」
1256番目だと?
「姉様、エレノアさんは1356番目だったはずです」
「ああ、そうだっか。1356番目のエレノアよ。以下同文だ」
エクセレントは祈りを捧げたようだった。
「マスター!お話は終わりましたか?皆さん出られて戦闘中です!」
セイレーンの言葉。え?そう言えばみんなが居ない。
「エレノア飛行隊か!?」
エクセレントが言う。
「ケインさん、勇者エレノアには強力な仲間たちが居ます。エレノアの作る台風の中を飛行しながら、巻き込んだ敵を倒す部隊。エレノア飛行隊です」
飛ぶ相手は不味い。俺たちの苦手とするタイプだ。
「ケイン、私たちも出るぞ!」
俺たちはセイレーン本体から飛び降りる。
ムササビのような姿で空を飛び回る『エレノア飛行隊』は7人いた。上空から地面に居る仲間たちを攻撃していた。
「婿殿!圧倒的不利ですわ!」
「ケイン~ピーちゃんしか戦えないよ~」
下からの攻撃と上からの攻撃では、圧倒的に上からが有利だ。
鳥のピーだけが戦えるが、7対1では不利。
魔法で狙うことはできるが、逃げ場所の多い空中だと当たり難い。
「飛ぶ相手はセイレーンの担当だぞ」
とは言うが、セイレーンは攻撃を受けていない。撃ち返せないし、魔道砲は素早い飛行隊を狙うにはデカすぎる。
こんな時は…
「ティナ!神の加護だ!」
便利魔法の女神に頼む。
「はい!任せてください!『神の加護!飛行禁止空域です!』」
あっ・・落ちて来た。
「寄って集ってタコ殴りにするぞ!!」
アリスの掛け声で、落ちてきた飛行隊をタコ殴り。
7人も青い炎に焼かれた。
「ふはははは!中々やるではないか」
「ええ、エレノアのチームを倒すなんて、今の勇者チームは優秀なのね」
声が聞こえた。だが姿が見えない。
「こ、この声は・・・『イオ』と『エウロパ』!?」
エクセレントが周囲の地面を見渡しながら言う。
「ケインさん!気を付けてください!イオとエウロパは地面の・・うわ!!」
地面から出た手がエクセレントの脚を掴む。倒れたエクセレントの顔の横の地面からも顔が出る。
「お久しぶり♪エクちゃん」
「うわぁぁぁぁ!!お久しぶりですエウロパさん!!」
エクセレントは慌てて起き上がると、挨拶だけ残して逃げた。
地面から現れたのは『骨を剥き出しにし、内臓が腹から飛び出た、死後10日ほどたっているような腐乱死体』だった。
「ケインさん!あれは母のチーム『勇者ゾンビチーム』です!」
「もう何でもアリだぞ・・・・」
アリスがまた横を向いてボソッと呟く。




