ギルド スノープリンセス2 勇者編 蘇る勇者たち③
何処の世界も同じだった。俺たちが来る頃には世界が攻撃され、燃え盛っている。
燃えるモカの世界。女神が串の刺さった『うなぎ』に、必死に話しかけていた。
「シュールだぞ!女神が燃える担当世界で、かば焼きを作ろうとしてるぞ」
アリスが突っ込む。
「違いますアリスさん、あれはモカの世界の担当女神『カフェ』と、勇者『ウナ』さんです!」
アリスが横を向いてボソッと何かを呟いた。
「ティナ様!よくぞ来てくださいました!今、勇者ウナさんを説得しています」
またアリスが横を向く。今度は聞こえた。
「これが11位だぞ…私たちの6位がバカらしくなるぞ」
ポメラニアンでもだが、流石にうなぎだからな、気持ちは分かる。
「今でこそ『勇者を遣りませんか?』と声をかければ、スキル次第で受けてくれる方は沢山います。しかし昔は勇者の成り手などいませんでした。街頭でティッシュと募集チラシを配っても、受け取ってもらえません。たまに受け取った方でも、チラシを捨てティッシュだけ持っていく始末でした」
ティナが言うのだが…なんでうなぎなんだ?
「ティナ様!ウナさんを説得してください!1万年前、必死に守り、平和な世界にしたモカの世界を・・・」
女神カフェは、泣きながらティナに頼む。
「勇者ウナさん!攻撃を止めてください!聖剣『串打ち』を置いて下さい!」
刺さっていたように見えたのは、聖剣だったのか?
「分からないウナ・・・なぜか破壊したくて破壊したくてしょうがないウナ・・守っていた世界を壊したくないウナ、でも抑えきれないウナ!」
操られている。間違いない。
「下がるウナ!女神カフェまで攻撃したくないウナ!!愛おしいカフェだけは傷つけたくないウナ!だから下がるウナ!もう抑えきれないウナ!」
そして当時の記憶も持っている。
「・・・・楽にしてやるぞ。操られ苦しむ姿は見るに堪えないぞ。私が美味しく蒲焼にして頂いてやるぞ」
アリスが前に出ると、ゆっくり勇者ウナに近づく。
「アリスさん、危険です!見た目はアレですが、勇者ウナさんは実力者です!不用意に近づいてはいけません!」
ティナが声をかけた瞬間。
「ウナサンダーウナ!!」
「ビリビリビリビリビリだぞぉぉぉ!!!」
ウナが攻撃、アリスが感電した。電気うなぎだったのか!!
「アリス!!」
ピクピク痙攣して倒れたアリス。直撃だった。これは不味い。
俺とティナが駆け寄る。
「ケ・・ケイン・・わたし・・」
喋るな!ティナ回復だ!
「ケイン・・私・・・元気なっちゃったぞ。ビリビリして疲れが取れたぞ」
なんだとぉ!電気治療か!?
「ウナサンダーを食らっても生きてるウナ!?」
勇者ウナも驚きだが、アリスの強靭で非常識な体に常識は通用しない。
「今度は私だぞ!疲れが取れた絶対零度だぞ!!」
勇者ウナは凍り付く。
「勇者ウナ・・・私はあなたの魂に祈ります。どうか安らかな眠りを・・」
女神カフェの祈りの中、勇者ウナは青い炎に焼かれ消えて行く。
「ケイン・・・私、失敗したぞ。蒲焼に出来なかったぞ」
俺とアリスが祈りを捧げるカフェを見ていた時、ティナは違う方向に目を奪われていた。
「ケインさん・・・逃げます」
ティナの声と同時に背筋が凍った・・・
「ケイン、やばいぞ。なんかやばい奴が来たぞ」
アリスも感じていた。強い殺気。出来る奴だけが持つ気配。
「神の加護!煙幕です!」
突然ティナが煙幕を張る。と同時にゲートを開く。
「絶対零度だぞ!魔砲4式弾だぞ!」
アリスが切り札の魔法を連発。俺たちはゲートに逃げ込む。
「ケインさん、直ぐに皆さんを招集してください!」
ゲートから出て王宮へ戻った俺たちにティナは言う。
「わかったぞ!ママ!緊急連絡だぞ!最優先事項だぞ!直ぐみんなを集めるぞ!」
何が起こったか聞くのは後でいい。
ティナが言うように、みんなを集める方が優先だ。
「わ、分かりましたわ!」
アイリスも理由など聞かない。すぐに帰還命令を出す。
そして、怯えた顔のティナ。肩で息をして周囲を気にしていた。
「ケイン殿?」「どうしたのデス!?」
アズサとナナがすぐ戻ってくれた。
「ケイン?どうした?」「勇者よ?なにがあった?」
天界に行っていたターナとハウルも戻ってきた。
「どうしたの~」「何があったのケイン?」
マオとピーも戻る。そして一緒に戻ったウリエルは身構える。
「皆さん聞いて下さい!私はラテの世界で『姉が担当していた勇者チームを見ました』」
姉ってエクセレントか?
「姉が担当していたのは、勇者ランク2位の『表の勇者チーム』と、『裏の勇者チーム』です。ラテで見たのは裏の方です。裏のチームは汚れ仕事を専門とする暗殺者のチーム。殺しが専門の・・・」
と、言いかけたティナの首に手が!?
「お喋りはいけませんね。妹君」
レナとセレスが動く。ティナの首を絞めていた手を斬り落とした。
ゴホゴホと咳込みながら、前に倒れ込むティナをアイリスが支える。
「き、気を付けてください。『朧』と『陽炎』、『月光』の3人で、闇の勇者チームです。勇者ランク2位の表の勇者チームにも、引けを取らない実力があります」
ティナは首を押さえながら叫ぶ。
俺たちの前に、3人の忍者姿をした奴が立っていた。
「なるほどだぞ。勇者ランカーが蘇っていたから、いづれはと思っていたぞ」
ああ、1位2位も来るなってな。
「誰が朧だぞ?同じ格好だから見分けがつないぞ」
アリスが言うと、真ん中の男が手を挙げた。
「おまえが朧かだぞ。なら陽炎はどっちだぞ?」
今度は向かって左側の男が手を挙げる。
「左が月光かだぞ?」
左側の男がウンウンと頷いた。
「良いぞ。どうせ蘇って操られているぞ。私たちが相手をしてやるぞ。正々堂々とかかってくるぞ!」
アリスの言葉と同時に、後ろに回り込んでいたハウルとウリエルが攻撃。
だが、軽く避けられ裁かれる。
「笑止。われら闇の部隊に不意打ちなど、通用すると思っているのか?」
朧が言う。
「驚いたぞ。この攻撃を躱す奴がいるとは思ってもいなったぞ」
アリスは分かっていた。『通用しない』と。分かっていて、俺に見せただけだ。本当の策はもう準備できている。
「みんな!一時撤退だ!外に逃げるぞ!」
俺が叫ぶ。皆がバルコニーに向かい走り、庭に飛び降りる。
「逃がすか!」
朧たちも俺たちを追う。
が、バルコニーから飛んだ瞬間。
「私たちの勝ちだぞ」庭に降りたアリスが宣言する。
沖合で待機していたセイレーン本体から魔道砲が放たれた。
アリスはワザと俺に通用しない策を見せた。これがサインだ。
『並の闇討ちでは通用しないぞ。ならば、並ではない闇討ちをするぞ』
と言う合図。
王宮の影となる沖合のセイレーン本体から放たれた魔道砲は、バルコニーから飛び跳ねた瞬間に朧たちを襲う。
「青い炎に焼かれる前に、魔道砲に焼かれて死ぬぞ」
アリスが言うが・・・・
「笑止」
俺たちの後ろから声がした。




