ギルド スノープリンセス2 勇者編 蘇る勇者たち②
「ケイン!『ラテの世界』で、勇者復活だそうだ。天界から討伐依頼が来ているぞ。勇者ランクは17だ!」
「ケイン『モカの世界』で、勇者が蘇って暴れてるから倒してくれって天界からの依頼よ。勇者ランクは11よ」
「婿殿『ガテマラの世界』でも勇者復活ですわ!ランクは100位ですわ」
レナとセレスを加え、依頼受付窓口を増やす。
次々と入る勇者復活の情報。そして討伐依頼。
「ケイン!私達はラテの世界だぞ!ラテが済んだらモカだぞ、ガテマラはマオに任せるぞ。なんか忙しくて目が回ってきたぞ」
俺たちの多忙は、多忙の域を超え限界に近づいていた。
「ケインさん!大変です!大事件です!」
ラテの世界に行こうとした時、ティナが駆け込んできた。
「今度はどうしたぞ?これ以上の試練は神を呪うぞ」
アリスが涙目になる。
「はい。姉が書置きを残して職場放棄しました。天界は指揮者を失い混乱しています」
エクセレントが逃げやがった。
「こっちから回す余裕はないぞ!適当に代理を立てて凌ぐぞ!」
「無理です!姉の代わりなんかいません。みんな、責任をかぶるのを嫌がり逃げ腰です」
「ティナ、ビューティ―は何をしている?」
ビューティ―はヴィーナス家の二女。天地創造、修復系女神で、ケインたちが出会った女神の中でも『とても真面』な部類。
「はい。ビューティ―姉さんは、甦った勇者たちに破壊された世界の修復に動いています」
ビューティ―ならと思ったが修復は急がねばならない。シータでは役不足だ・・・。
「ケイン、ここは賭けに出るぞ」
アリスが腹をくくった。
「ターナ!任せていいか?」
俺はターナを指名した。ターナならどんな苦境でも動じることが無い。無いが、極端な手法は0か100の真ん中無し。上手くいけば今以上にスムーズな情報管理ができるが、失敗すれば天界の情報システムは崩壊する。
「私に任せる。責任はとらない」
一応『自称』だが女神だ。ここは大博打に出る。
「思いっきりやって良いぞ。責任は逃げたエクセレントに取らせるぞ」
「妻よ。ついに女神たちの頂点に立つ時が来たようだな」
「うん。私の一声で女神が動く。天界を落としてくる」
相当嫌な予感しかしないが、今はターナを信じよう。
俺たちラテの世界へ行く。
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「星猫は予定通りにラムタ世界へ送り込みました。後はベルゼブブたちが上手くやってくれるはずです」
品格のある部屋の中に2人。その一人はリリス。リリスはワインを飲む男に言う。
「流石は黒女神様。女神の手の届かぬところで星猫を捕らえる作戦は見事です」
男の名は『ルーズ卿』。『エルゴ』の世界を納める王で、野心家にしてコレクター。
「前金を頂いていますので、私達としてもしっかり納品をしないと、黒女神の信用にかかわります。多少は時間が掛かりますが、確実に星猫はお手元に」
リリスの言葉に『ウンウン』と笑顔でうなずくルーズ卿。
「信用しているよ。私はこれから国民の前で演説があるから、これで失礼するが、必要なものがあれば執事に言うと良い。用意させよう」
リリスは軽く礼をすると、ルーズ卿は手を振り部屋を出た。
「黒女神の加護・・・」
リリスは何かを唱えた。
ルーズ卿が出て行くと、代わりにギルバが部屋へ入る。
「部長、ベルゼブブから連絡で、翼竜が倒されたってさ」
リリスが『ふっ』とほほ笑んだ。
「あんな世界にも、翼竜を倒せるだけの力を持つ者がいたとは驚きだな。だが逃げ場はない。ケインや女神たちはラムタ世界へは行くことができないんだからな」
「そうだね。今回の部長は冴えてるよ」
リリスは部屋の窓から大衆の集まる広場を見る。
「金持ちの大馬鹿が金を出してくれた。その金は自分たちを滅ぼすために使われるとは、思いもよらないだろうな」
薄ら笑いを浮かべながら、演説を始めたルーズ卿を見た。
「あっちからも連絡があって、魔素の阻害装置が完成したって。実験がしたいけど女神たちの目があるから、どうしたら良いか聞いてきてるんだけど」
リリスが振り返る。
「そんなのは簡単だ。ラムタ世界で実験すればいいのさ。実験ついでに星猫を頂く、一石二鳥だ」
ギルバが『おお!』と言う顔。
「やっぱ冴えてるよ部長」
ウンウンと自画自賛のリリス。
「金があれば、兵器の開発ができる。科学者にモラルなど無いからな。そして兵器があれば、力が食いついてくる。今度はケインたちに邪魔はさせない。下界は滅び、新たな世界は私達のモノとなる」
リリスは高笑いする。つられてギルバも笑いだす。
一連の事件の裏で動くリリスとギルバだった。
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「ブリザードだぞ!!」「魔砲2式弾だぞ!」「とどめの絶対零度だぞ!」
ラテの世界の勇者が凍り付き、青い炎に焼かれる。
「次はモカの世界だぞ」
アリスは肩で息をしていた。
ここ2週間、甦った勇者の対応でロクに寝る暇もない。そんなアリスだが、俺たちの飯はちゃんと用意してくれている。
「ケインさん、次のモカの世界の勇者は『勇者ランク11位』のツワモノです。少し注意が必要です」
俺とアリス、ティナのチームは、より強い勇者が蘇った世界を回っていた。マオとピーのチームからターナが外れ、マオは待機していたウリエルと組んでいる。アズサのチームと合わせ、3つのチームで対応にあたっているが、まったく追いつかない状態だ。
勇者を蘇らせている魔笛を何とかしないことには、状況の改善はない。
「わかった。アリス大丈夫か?」
アリスは力強く答えた。
「誰だと思ってるぞ?勇者ケインの嫁だぞ。この位は、への河童だぞ」
俺に戦力があれば・・・疲労が顔に出ているのに強がるアリスを見て思う。
マイナスレベルが限界突破した俺では、雑魚のモンスターすら倒せない。
俺に力があれば・・・
「行くぞケイン。ケインが傍に居れば私は戦えるぞ」
勘の良いアリスが、俺の心中を察したようだ。
「ああ、頼りにしてるよ」
俺はアリスをぎゅと抱きしめた。そして俺たちはモカの世界へ行く。




