ギルド スノープリンセス2星猫編最終章 時の止まった世界 ③
「大隊長殿」
「飛鳥さん」
私達は顔を見合わせた。
「ここ、どこでありますか?ラムタ世界でありますか?」
私達はギルドではなく、森に居た。
って言うか、いきなり戻されたのもアレだけど、連れ出した場所に戻してよね!
結局ここは昆虫域。凶暴な肉食昆虫族『マイマイカブリ族』の縄張りだ。
だが、マイマイカブリ族が出てきて私を怖がることで、ここがラムタ世界だと言うことが分かる。なら手持ちのゲート石が使えるので、私たちはルーランへと戻れる。
「雪姫!いきなり消えて、大騒ぎだったんだぞ」
戻るとブルックに怒鳴りつけられた。
ちゃんと戻るまで、時間を止めておいてよね・・。
「ごめんね。実は・・・」
実は‥の先。私は、このことを言っていいのか?
「実は大隊長殿は、新型アブソリュートの影響で、加速病を発症したのであります」
飛鳥さんが誤魔化した。
「それは胸が亡くなったから、軽量化の影響ですか?」
マリア!その字は使うな!!!!天に召されたように聞こえるじゃないか!
「なるほど、確かに加速性能は上がりましたな。特に空気抵抗が」
「うむ。10kは痩せたであろう。加速病も納得じゃ」
でまかせに気が付けよ!なんで一同頷きながら納得するんだよ!って、加速病ってなんだよ!
「じゃ雪姫、プリンセスの再開は3日後で良いんだな?」
え?
「あっ・・あ・・うん。そうだね。3日後・・だよね」
ブリックの確認に、歯切れの悪い返事をしてしまった。
この後、私は地球へ行く心算だ。たぶん私は『何者かの手段』を調べるだろう。3日で帰ってこれるのか?
このことが頭にあり、返事の歯切れが悪くなった。
「じゃ、再開の準備は俺たちがしておいてやる。あと3日、お前はゆっくり休んでいろ。この2週間で疲れたんじゃないか?」
「うむ。それが良い。ゆっくり休養し、再開に備えるのじゃ」
「たまには僕も、副マスとして働きますよ。任せてください」
ありがたい。3日間の時間ができた。
「じゃお願いするね。飛鳥さん、一緒に来てもらえるかな?」
私はさりげなく飛鳥さんを指名し、その場から離れた。
「私、地球へ行ってくる」
通路の陰で私は飛鳥さんに言う。
「なら自分も行くであります。自分にも戦友と呼べる奴らが居たであります」
私たちは互いに頷き合った。私はティナさんから受け取った鍵を取り出した。使い方は頭の中に浮かぶ。
「よし、行こう!『便利なカギ!』よ!」
鍵をかざし、イメージした。私たちの前に扉が現れ、扉が開くとゲートとなる。
「いこう!」
「了解であります」
私達はゲートに飛び込んだ。
「ビンゴ」
イメージ通りの場所。ゲートは私の実家の前に繋がっていた。
「大隊長殿・・・」
ゲートを出た私は、少しの間、立ち尽くしていた。
約3年ぶりの我が家、懐かしい・・と言う想い。だがそれ以上に私は・・・
「あのさ、飛鳥さん・・・・3年前、戻った時に、私は此処で生活していたよね」
「はいであります。マリリン殿も一緒でありました」
「ティナさんが現れて、カモミールに行く前に、1日猶予を貰ったよね」
「そうでありました。お別れをしたい人たちに、別れをする時間を貰ったであります」
私は飛鳥さんの顔を見つめた。
「私さ、冷蔵庫の中身にお別れするの忘れていたんだ」
ビクン!と驚き、1歩下がる飛鳥さん。
「校庭・・・行こうか」
無言で小刻みに『ウンウン』と頷く飛鳥さん。
『私は逃げるんじゃない。必ず戻る!そして、冷蔵庫の中身を何とかする!』
私は心で呟く。飛鳥さんはスタスタと歩きだしていた。
前回は穴に拾われ戻った。今回はゲートで戻ったので、穴の法則は通用しない。
ここで過ごす時間は、ラムタ世界でも同じように流れてしまう。
スノープリンセス再開まで3日。私は3日以内に戻らなければならない。
だが、校庭に向かう道々で、私は見てしまった。
笑顔で登校する学生たち。母に連れられた幼稚園児たち。会社に向かう男性、行き交う人々や車。
いつもの朝の風景は、写真のように動くことは無い。
この人たちは、時が止まったことに気づくこと無く、空間が固定され、時間が凍結されると、ここから1歩も前に進むことなく、未来永劫このままの姿で居続けることになる。
「大隊長殿・・・自分は・・」
私と同じ光景を見た飛鳥さん。
「大を助けるために小を犠牲にする。私は仕方のないことだと思うよ。でもさ、犠牲になる小が『人の命』なら話は別だ。マックスと白姫さんも、ある意味では、私と世界を守るために犠牲になった。私は否定する。そんな犠牲は、生み出してはいけないんだ」
「自分もであります。時が凍結され生きているとはいえ、これでは死んでいるのと同じであります。地球を犠牲にするなど、断固阻止であります。ケイン殿とは全面対決であります」
『地球を守りたい』この想いは飛鳥も同じだった。
だがケインさん達とは・・・。
「飛鳥さん、ケインさんの勇者としての言葉、覚えてるかな?」
「自分たちと戦う覚悟がある。と言う言葉でありますか?覚えているであります。大隊長殿の反応次第で、あの場での戦闘も覚悟したであります」
あははは・・あそこでやってたら、宇宙に放り出されてたかな?
「『君たちが阻止しようというのなら、俺たちは君たちと戦う覚悟がある』だったよね?この言葉ってさ、『邪魔はさせない』って意味にも取れるけど、『私たちが阻止に動くなら、一緒に戦う』って意味にも取れないかな?」
少し飛鳥さんは考える。
「・・・確かに・・であります。どちらにも取れる言葉であります」
そう、アリスさんがチラッと言っていた『この件に関わることを禁止されてる』と言う言葉。そして『ティナさんは失敗を想定している』と言う言葉や『誰がやったのか?何をしたのかが分かれば・・』と言う言葉。
会話に中に出てくる違和感を覚える言葉が意味するのは・・・
「私は、ケインさん達が『自分たちは出来ないから、君たちで調べて欲しい』って言っているように感じてるんだ」
また少し考えた飛鳥さん。
「言われてみればであります。結構頭に血が登っていたであります故、そこには気が付かなかったであります」
冷静に見えたけど、頭に血が登って居たんだ。
「なら、真意を聞くであります。校庭に捕虜が2人居るであります」
ナイフを抜きペロリと舐める飛鳥さん。
トーレフさんとマリーさん、拷問しちゃったら、だめぇぇぇぇぇ!!!
私達は、私の通っていた高校の校庭についた。洋々な機器が置かれ、トーレフさんとマリーさんが作業中だった。




