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ギルド スノープリンセス2星猫編  魔界でも④

「ティナ、問題だ。この辺にだな、お前が連れ帰りに来た星猫が隠れている。さて?どこにいる?見つけられるか?」

パルムさんがティナさんに聞く。って言うか、今、襖の隙間から顔出しちゃってるんだけど。

「そうでした!星猫の保護に来たんです!この辺りに隠れているんですね?」

部屋を見まわし、テトとも目が合うが・・。

「神の加護!星猫はいずこに?です!」

また両手を広げ、神の加護を唱える。

「隣の部屋ですね」

と、答える。まぁ襖の横から顔は出してはいるが、ミサキさんの脚は隣の部屋だ。なのでミサキさんの肩に乗るテトも、『隣の部屋にいる』で間違いではない。

「流石は女神、正解だ。ミサキさん来てくれ」

パルムさんに言われ、シリウスを抱きかかえたミサキさんが来る。


「まぁ、この子が星猫ですね」

ティナさんは、ミサキさんが抱きかかえるタヌキをご指名した。

これは、ミスディレクションだ。手品などで使う手法で、意識を他に向けさせたり、固定概念を植え付けたりすることで、真実を見え難くする手法。

『隠れている』と言うことで、ティナさんには『見えない』と思い込ませていたんだ。見えて居たテトより、見えなかったタヌキを星猫だと思ったんだ。って、ふつう思うか?見てわからないのか?

「シリウスだ。大事にしてやってくれ」

「ええ、その子は絶対守るのよ」

「雑食だけど、肉類が好きだよ」

大事に抱きかかえたタヌキに、ティナさんは言う。

「そうでちゅかぁ。星猫さんはシリウスちゃんなんでちゅね.銀河の卵にピッタリのお名前でちゅ」

信じ込んでる!全然疑ってない!って言うか、女神ユル!!!

「ティナ、書類よ。重要案件だから、ちゃんと受け渡しの記録が必要よ」

「はい!分かります。書類は重要です。私、ティナは、確かに星猫を受け取りました。受け取り確認の女神印を押します」

うわぁぁぁぁ抜け目がないと言うか、容赦がないと言うか。これでティナさんは、シリウスが偽の星猫とわかっても、テトを連れて行くことができなくなる。

なぜなら、もう『受け取った』と、記録が残ってしまったからだ。しかもパルムさんたちは、一言もシリウスが星猫だとは言っていないから、うそをついて渡したと責めることもできない。


ニヤニヤするパルムさんセシルさん、アリッサさん。

何も知らずにシリウスの頭を撫でるティナさん。少し可哀そうに思えてきた。


「お父様『重加重の打ち出の小槌』です」

愛実さんが箱を持っ来ると、丁寧に開ける。

「雪姫さん、手を出せ」

閻魔様に言われ、私は右手を出した。

閻魔様は箱の中にあった小さな打ち出の小槌を、私の掌に乗せる。

すると打ち出の小槌は、私の手の中へ・・・『ドックン!!』何か重いモノで打たれたような感覚がした。

「これで重加重の打ち出の小槌はお前のものだ。使いたい時は『使う』と意志を示せば効果が出る」

がっかりしたように、肩を落としながら閻魔様は言う。

「安い買い物だろ。閻魔ともあろう者が、下界民に冤罪を擦り付けたんだ」

「そうよ。それに宿敵のゲゲゲを葬り去ったのよ。小槌1個じゃ安すぎるわ」

「閻魔ジィ。わたしにも口止め料が欲しいな」

勘弁してくれ、と言った顔の閻魔様は苦笑い。


「ティナ、坊主たちだが・・」

パルムさんが真面目な顔になった。

「はい。皆さんがラムタ世界に行った後、ちょっと事件が起きました」

この質問にはティナさんも真面目な顔で答える。

「星猫が4匹も奪われたって聞いたわ」

「はい。女神が保護していた5匹のうち、4匹が・・・」

「パパたちで守り切れなかったの?」

「いいえ、それは違います。ケインさんたちは、他の案件で忙しくて・・って、そうでした!パルムさんたちに出動要請が出ていました。忘れていました!」

あー忘れちゃうんだ。そんな大事なことでも。

「コンロンの世界はご存じですよね。確か800年ほど前まで、パルムチームが守っていた世界です」

パルムさんたちは『死ねない呪い』のため、長生きしている。

「ああ、当然だ。あそこの魔王は手強かったからな。確か、『ジョニー』って勇者が居て、そいつのチームと一緒に戦ったんだよな」

「ジョニー、懐かしいね。あの子たちも強かったし、勇敢だったわ」

「そのジョニーさんのチームが、コンロンの世界を襲撃中なんです。ケインさん達は、他の世界での戦いで手一杯なので、パルムチームに要請が来ています」

ティナさんの言葉に、パルムさんとセスルさんは不思議そうな顔をする。

「襲撃って、ジョニーたちはとっくに死んでるんだぞ」

「コンロンを魔王から守った後は引退して、700年前には亡くなったと聞いているわ」

『インカの笛です』ティナさんが一言。

「セシル、アリッサ、コンロンへ向かう!ティナ、ゲートを開けてくれ!」

パルムさんが勇者の顔になる。

「雪姫さん、また会いましょう」

「雪姫さん、飛鳥さん、ミサキさん、またね!!」

手短な挨拶と共に、パルムさんたちはティナさんの開いたゲートに消えた。

「インカの笛?なんでありますか?それは?」

ボソッと質問した飛鳥さん。

「まぁ、悪人の手に渡ると、都合の悪い笛だな」

何かのアイテムのようだが、詳しいことは教えてもらえなかった。

「それより、戻るんだよな?」

部外者は、敢えて聞かない方が良い事もある。

「うん。ティナさん、私たち、ラムタ世界に帰りたいんだけど」

ケインさんのチームの科学班に、連絡を取って貰えると助かる。

「あーそれでサーヤが居ないんですね。サーヤはラムタ世界ですよね?」

ヴぇ?また忘れてたよ。

「流石は雪姫さんですね。アリスさんが『深読みでは、ケインといい勝負だぞ』と言う訳が分かりました」

あはははは、なんのことやら。


「今は、ラムタ世界の皆さんがここに居ます。そして女神のサーヤがラムタ世界に居ます。皆さんの記憶から、私はラムタ世界へ入り込み、サーヤとコンタクトを取ります。サーヤが私の存在に気が付けば、ゲートを繋げることが可能です。雪姫さんは、良くサーヤを残す決断をされたと思います」

忘れてました。とは絶対に言えなくなった。

「そうでありましたか。それはそれは読みの深いことであります」

飛鳥さんの棒読みのセリフが寒かった。



私達はティナさんの前に膝まづき、祈りのポーズをとる。

ティナさんは私たちの頭に手のひらを向け、目をつぶり気合を入れている。

「見えてきました。ここがラムタの世界ですね。近づいてみます」

上手くいっているようだ。

「街に来ました。美味しそうなお蕎麦屋さん。あっ!ピザ屋さんも。お寿司屋さんは回っていない本格的な・・ああ!トロの握りが!」

思い出した。この女神、食い意地が強かったんだっけ。

「あっ!サーヤの反応を捕らえました!」

お!?

「暗い部屋・・狭いですね。閉じ込められている?ここは牢獄ですか?」

違う!!サーヤさん専用の懺悔室!

「サーヤ、サーヤ、ベントラーベントラー、サーヤ、サーヤ」

その言葉って女神用語だったんかい。

「繋がりました!サーヤが反応してくれました!」

おお!帰れるのか?

「神の加護!ゲートです!!!」

私達の前にゲートが開かれる。

「本当ならゆっくりお話しをしたいところですが、勇者チームの主戦力たる私が不在では、ケインさんたちが困ってしまいます。残念ですがお別れです」

ありがとうティナさん!突っ込むところがあったけど、今は帰還だ。

私は手を振ると、何か忘れている気がしたが、ゲートに飛び込んだ。


私達はラムタ世界へ帰還した。が・・・何かおかしくね?

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