ギルド スノープリンセス2星猫編 雪姫の居ない世界③
「アリサ!国から来てるこの書類なんだけど・・」
ソーマが山のような書類を持ってきてアリサに聞く。
「それは私が処理します。こっちに回してください」
アリサはチラッとソーマを見ながら、机で書類を読みながら判を押していた。
「アリサさん、冒険者学校からの希望者が来ていますけど、どうしますか?」
今度は受付から連絡を受けたヘレンが尋ねる。
「リアさん、ギャリソンさん、面接をお願いできますか?全員採用なので形式だけで結構です」
素早く指示が飛ぶ。その後もアリサは尋ねられた事に、適切な指示を繰り返す。
「やるな、あいつ」
「うむ。手際の良さが雪姫のようじゃ」
それを見ていたブルックと銀姫が感心する。
新ギルドの発表まで後1日。営業開始まで2日を前に、アリサとソーマ、ヘレンは大忙しだった。
「俺じゃ書類なんか全然わかんねーよ」
「私も無理。全然勉強してないから」
ソーマとヘレンは書類を前にギブアップ。
「ソーマさんはバッカスさん達と、冒険者学校の生徒さんたちの方へ行って、能力に応じたランク分けをお願いします。ヘレンさんはジェームス係長さんと、事務職希望者の振り分けをお願いします。なるべく希望の部署へ配属するようにしてあげてください」
鮮やかな指示。ギルドマスターの仕事は簡単ではない。だが、マリリンからギルマスとしての、書類や庶務の英才教育を受けていたアリサの仕事は完璧だった。
だが、そのマリリンが黙っているはずがない。
「大変です!マリリンさんが殴り込みにきました!ギムさんが吹き飛ばされたって!」
2Fの執務室へ、受付のジェシカから連絡が入った。
「ヴぇ!?マリマスが?」
ドスン!ドスンと音がする。誰かが上がってくる音。
「まぁ、しょうがねーなー」
ブルックが頭を搔きながらドアに前に行くと・・・吹き飛ばされ、回転しながら壁にめり込んだ。
「アーーーーリーーーーサーーーーー」
鬼神・・・鬼のような形相と禍々しいオーラを放つマリリンが仁王立ち。
ソーマとヘレン、抱き合いながら机の下に避難。
「なんだよあれ!マリリンさんかよ?」
「私あの顔の鬼、見たことがある。鬼子母神って本で」
ドスン!ドスン!!銀姫とギャリソンが吹き飛ばされる音。
ガチャン!リアが倒れる音。
「ダメだ!行くぞヘレン!俺たちも戦うんだ!覚悟決めるぜ」
「うん!仲間を見捨てたらだめだよね!一緒に死のう」
机の下から出たソーマとヘレンは、すでに気を失っていたアリサの前に立つ。
「どーきーなーさーーーい!」
目が逝っているマリリンが構える。
「やべ。俺今日死ぬかも」
「うん。あの世でも結婚しようね」
その時!!!『マリマス覚悟!!!』とルクスの声がする。
剣士ルクスが飛び上がり、後ろから上段の一撃。が、マリリンは振り下ろされた剣を両手でガード。
「頂きました!」
魔導士のサリー、マリリンの懐に飛び込んでからの・・ボディーブロー―――!!!
マリリンの体が浮き上がり天井にあたる。体は『く』の字型に折れ曲がり、床に落ちたマリリンは白目を剥き、口から泡を吹き、ダウンした。
「リンかけ魔法ギャラクチーファントムです」
サリーの拳から煙が出ていた。
『それって魔法じゃねぇーーーー!!』と、心の中で突っ込んだソーマとヘレンだった。
「あいたたた」
壁にめり込んでいたブルックが意識を取り戻す。
「ブルックさん、申し訳ありません。鎖で繋いでいたのですが、まさか食い千切られるとは、思っていませんでした」
ルクスさんが謝る。
「本当にすみません。鬼神と化したマリマスがこれ程とは‥油断してしまいました」
サリーさんも丁寧に頭を下げ謝った。
「あー良いさ。訳は分かってるからな。なぁお銀」
「うむ。しかし凄いのぉ。主らのギルマスは。雪姫並ではないのか?」
「スノープリンセスも形無しでございますな」
1Fではギムもやられていた。おそらくマリアもだ。
「リアは電源を切られただけか」
ブルックは倒れているリアの電源を入れる。
「ブルック様!アリサ様たちは・・・」
目を覚ますリアは、アリサたちの心配。
「俺たちは大丈夫だけどな、アリサが・・」
「うん。完全に気絶しちゃってるね」
アリサは気を失っていた。怒ったマリリンの怖さを知るアリサだからこそ、耐えきれなかったようだ。
「この不始末の責任は必ず取らせます。今日はこれで失礼します」
「損害は弁償しますので請求してください」
ルクスがマリリンを肩に担ぐと、2人は再度礼をして立ち去った。
「帰りましたか?」
アリサがパチッと目を開ける。
「おや?気絶していらしたのではないのですね」
ギャリソンが言うと
「マリマスが怒ったら地獄絵図です。怒りが収まるまで破壊神と化します。ルク姉かサー姉が止めてくれるまで、死んだ振り。これマーメードの常識なんです」
女だけのギルド、マーメードドルフン。その甘い響きに男たちは女の園を連想するが、実際は違うようだった。
「あいつが居ないから、少しは静かになると思っていたが、またひと騒動ありそうだな」
ブルックが呟いた。
「うむ。ルーランでは、スノーに次ぐ実力ギルドのマスターじゃ。雪姫並に手に負えぬ相手じゃな」
銀姫もため息をついた。
「最大警戒態勢を取りましょう。『ギルド スノーエンジェル!』マリマス警戒態勢!100m圏内にマリマスが入ったら、全力攻撃です!っ言うか、いっそマーメードを襲撃して・・」
ギルドマスターアリサの最初の命令は、古巣のギルマス攻撃命令だった。
「スノーエンジェル?それがギルドの名か?」
「雪の天使か。よい名じゃな」
勿論命令は却下。
「俺たちで考えたんだ。雪姫とギルドの名に付く『スノー』は外せねぇ」
「エンジェルはランクが上がると女神になるって、サーヤさんから聞きました」
「せめてマリマス警戒体制だけでも取ってください」
ギルドの名は決まっていた。
2日後の営業開始に向け、忙しい時間は続く。




