ギルド スノープリンセス2星猫編 雪姫の居ない世界①
「アリッサ!!」
ゲートが開くと、閻魔大魔王が出てきた。
「閻魔ジィ!」
アリッサさんが駆け寄って行く。
「無事だったか!よかった!よかった!」
抱え上げたアリッサさんに笑顔で言う。閻魔様はアリッサさんが心配だったようだ。
「紹介するね。星猫の『テト』だよ」
「にゃーーー」
アリッサさんはテトから紹介した。
「ミサキさんだよ。精霊さんなんだ」
私と飛鳥さんは既に会っているから、後回しになる。
「後は柊さん、今は改名して雪姫さん。飛鳥さんは、そのまま飛鳥さんだよ」
「暫くだな。元気そうだ」
顔は怖いが、笑顔は可愛い閻魔様。
「お久しぶりです」「お久であります」
私と飛鳥さんは握手を交わす。
「いろいろ話もある。わしの城へ来い」
私達は閻魔城へ行くことになる。
ーーーーラムタ世界 スノープリンセスーーーーー
「保安部のタタラ部長、受付のジェシカさん、食堂のキューさんを中心に、Bチームを編成してください。ギム様、マリア様はゲートルームで待機。ブルック様、アーロン様、サマンサ様は出動態勢を維持」
ギルドマスター代理代行となったリアが、執務室で指揮を執る。
「リア、あなたがギルマスの代理代行になったら、冒険者の8割が戻ってきました。なお増加中ですな」
リアの秘書になったギャリソンが言う。
「マスター不在の間に、登録冒険者数20%増を目標に、ギルドの立て直しをします」
リアは一生懸命頑張ろうとしていた。
雪姫がブルックにギルマスを任せた翌日、ブルックはリアに代理を任せると発表。
「ギルド内人気ランク3位」「妹にしたいランク1位」のリアがスノーの代表となると、離れていた冒険者たちは、我先にと戻ってきた。
「俺の時は、3割も戻ってこなかったぞ」
ブルックが言うと・・
「所詮この世界は人気なんですね」
アーロンが呟く。
「なんにしても、これで雪姫がおらぬ間の責務は果たせそうじゃ」
雪姫の傍で完璧なサポートをするリアは、雪姫の行動、思考をパーフェクトに把握。機械であるギア族だからこそ『雪姫に成りきる』ことができた。
リアのギルマス代理代行は、順調な滑り出しかと見えたが・・・・・・。
「リア!またギムがやらかした!また連撃でダンジョンを破壊しちまったぞ」
ギムが起こした問題は、本日これで3度目。
1度目は、斬る相手を間違えて、冒険者の獣人をバッサリ。
2度目は、「この程度の相手に、呼び出すな!」と怒り、救援放棄。マリアが光子砲を使いダンジョン破壊。
3度目が、連撃光速剣の衝撃波でダンジョンの破壊。
「お二人を呼び出してください」
頬をヒクヒクさせたリアが、怒りに満ちた顔で言う。
「マリア様!ギム様の監視はお願いしてあるはずです!それに光子砲の使用には、私の許可を求めていました!」
ギムとマリアを前にリアは苦言を言う。だがマリアは、今まで見せたことのない顔で返す。
「偉そうですねリア。まるでスノープリンセスのギルドマスターになったような振る舞いです」
明らかに違うマリアに、リアだけではなく、執務室に居たブルック、アーロン、銀姫、ギャリソン、サマンサ、ノアまでもが、動きを止めた。
「マリア!リアには俺が権限を与えた。今のギルドマスターはリアだ!」
異常を感じたブルックが割り込む。
「ブルック様、寝ていらっしゃるのですか?」
マリアの怒りに満ちた言葉は、ブルックにも向けられる。
「マリア、ブルック様に対し失礼です。謝罪と撤回・・」
と、ギャリソンが言うが、ギムが立ち上がり鞘を前に出し、ギャリソンを止める。
「雪姫に代わりなんか居ねぇ」
ギムは一言いうと、座る。
「スノープリンセスがスノープリンセスであるのは、マスターが居るからです。マスター不在のスノーなど、スノープリンセスではありません!」
マリアの言葉に、ブルックたちも気が付いた。
「マスターが指名したブルック様なら100歩譲れます。しかし、リアや他の誰かが『スノープリンセスのギルドマスター』を名乗ることは、ギムや私が許しません!」
マックスと白姫の想いを知る2人だからこその拘り。
スノープリンセスの存在意義を知る2人だからこその想い。
スノープリンセスは、未来を見た白姫が、『厄災』から我が子を救うために作られたギルド。
呪いの発動した白姫とマックスが、残された時間を使い、我が子、雪姫のためにギルドを立ち上げ、メンバーを集め、来るべく厄災に立ち向かえるように用意したギルド。
全て雪姫のためにあるべくギルドがスノープリンセス。
「でもよ、じゃどうしろって言うんだよ?俺じゃ雪姫の代わりなんかできねーし。このままじゃギルドは維持できねぇ」
ブルックの泣き言に、ギムが立ち上がった。
「任せろ。俺に考えがある」
ギムが?考え?部屋にいた全員がその言葉に驚いた。
「黒幕の登場だ」
ギムが言うと、マリアが窓を開ける。
「今日は二人で来たよ」
「おほほほほ、お忍びですわ。こんなところから失礼しますわ」
ステラ女王を背負ったクラリスが入ってきた。
「今の状況は雪姫さんがギルドから離れ、他世界へ行っていつ帰るか分からない。帰還は1か月先、1年先、あるいは・・・。スノーは雪姫さんあってのギルドですのよ。ならば、今は休業が正解ですわ」
クラリスから降りると凛として立ち、ステラ女王は言い始めた。
「しかし雪姫さんはギルドとしての活動を望んでいますわ。このジレンマを解決する策を与えに来ましたの」
幹部たちは顔を見合わせる中、ギムだけがドヤ顔をしていた。
「私がギルドマスターですか!?」
館に残り、ミサキから与えられたカリキュラムを遣っていた、アリサ、ソーマ、ヘレンが呼び戻された。
「俺たちが幹部?候補じゃなくてか?」
「私たちが運営するんですか?」
ステラの案は、以前から雪姫が相談していた案の改案らしい。
法律的、倫理的、現実的な問題があり、実現は難しいとしていたが、ステラは『今なら』と考えた。
「冒険者学校の延長で『実務訓練所』的なものですわ」
冒険者学校の生徒たちによるギルド。
既存のルールに囚われないで、自由な発想と超法規的権限を持つ、新しい形のギルドの設立。
雪姫は以前からこの提案をしていた。
だが、未経験者だけで作るギルドには、多くの問題点があり、実現は不可能となっていた。
だが、スノープリンセスが休業することで、経験豊富な職員、戦闘力を有した幹部の身が空く。
「あなた達が全面的にフォローすることで、実現不可能と思われた、雪姫さんの案は実行可能となりますわ」
学生たちの新ギルドは、スノーの職員たちがフォローすることで、新ギルドの名を借りたスノープリンセス。
スノーの活動は休止していても、スノーが活動しているのと同じになるし、スノーからギルマスを出さないでも済む。
「このギルドの設立にあたり、国は超法規的権限を与えますわ。『冒険者は12歳以上』などの法的制限は無視して構いませんわ。新ギルドの運営に関しては、国の許可は『全てあるもの』と考えていただいて結構ですわ」
ブルックたちは『確かに良いな』と思う。
「しかしながら、この新ギルド設立は、スノーの事業の一環として行ってもらいますわ。なのでギルマスはアリサさん。幹部はソーマさんとヘレンさん。ここは譲れませんわよ」
ステラは、この計画で雪姫の人気回復も狙っている。
大きな社会貢献と、若手の育成と言う好感度の高い事業。
スノーとして行えば、そのトップである雪姫の功績になる。
「だがステラ女王、俺たちには資金が無い。国はギルド運営には関与できないよな?」
ブルックの言葉に、マリアが異次元ポケットを開くと、大きな袋を取り出す。
「10万ゴールドあります。私とギムが貯めていたお金です。これを寄付します」
ステラの策に穴は無い。その辺のことも考えていた。
「直接国はギルドに対し、あれだこれだは言えませんわ。だから私もお忍びできていますの。ギムさん、マリアさんには、後ほど特別指南役手当の名目で、拠出分はお払いしますわ」
既に計画は出来上がっていた。
「2号店の方をどうなさるかは、皆さんでお決めになられて結構ですわ。本店として行うか、スノーとして行うかはお任せしますわ」
再びクラリスの背に乗ると、ステラ女王はマリアの開けた窓から出て行く。
何度も言うが、ここは3Fだ。
「任せたぞ、ギルマス」
ブルックがアリサの肩を叩いた。




