ギルド スノープリンセス2星猫編 魔界へ①
うわぁぁぁぁ。
ゲートから出た私が見たのは、ハエ共の部屋を鎮圧した飛鳥さんとパルムさん、セシルさんだった。僅か数秒遅れで来たのに・・。
「サクサクいくであります」
飛鳥さんの持つマシンガンからは、まだ煙が出ていた。
「どうやら地下のようなだ」
「ええ、案内図によると地下25Fね」
ゲートルームらしき場所には、50体ほどのハエ共と、それなりの装置があった。
「上には大量のハエ共がいるだろうな。めんどくせぇから一気に地上に出て周囲の確認だ」
「うん!私がいくね!」
アリッサさんが剣を構えた。地下で?なんで?
「爆裂斬だよ!!」
真上に向かい剣を振る。
「ツンドラ魔法!氷河壁!」
パルムさんも真上に氷の防壁を・・・・
『ズガズガズドオオオオオオオン!!』
直後に大震動が私たちを襲う。
「真上に爆裂魔法を使ったんですね」
私達の上は空が見えていた。
「よし地上へ出るぞ!」
パルムさんがセシルさんをお姫様抱っこ。ミサキさんが私を抱え、アリッサさんと飛鳥さんが先行して飛び上がる。
「広い・・・・」
地上に出た私が見たのは、四方の地平線が先まで霞む広大な大地。
「ここが魔界だ」
「広さは、無限とも言われているわ」
「私たちも詳しくないから、どっちに閻魔域があるか分からないんだよね」
「なら数匹は生きて確保するであります」
大きな穴が開いた巣?からは、ベルゼブブのハエ共がワサワサと出てきていた。
「雪姫、此処なら遠慮はいりません。ぶちかましてしまいなさい!」
おうよ!やらせていただきます!
「アブソリュートスノー!松だ!!」
私から冷気が噴き出した。と同時に、ミサキさんから頭を小突かれた。
「バカですか。何ケチっているのです!ここは特上!MAXの奴ですよ」
え?いやいや、流石に広域に使う特上は不味いでしょ。星が凍るよ。閻魔様も凍っちゃうし、周りの種族だって・・・
「気にするな。俺たちが知る限り、ベルゼブブの領域は閻魔域の周辺にはない」
「そうよ。魔界は広大なの。5000Kや10000K 先が凍っても、問題ないわ」
「うん。私達の世界じゃないからね。どうせ魔界の住人は敵だし」
良いのかな?魔界でも悪名高き魔女にされちゃ困るんだけど。
「撃ちなさい雪姫。思いっきり!」
「にゃーにゃ―」
「案内要員に3匹確保したであります。大隊長殿!行くであります!」
ベルゼブブの兵士たちを倒しながら、パルムさん達やミサキさん、飛鳥さんが言う。
「なら行こうか!アブソリュートスノー――!!特上だ!!」
吹き出す絶対零度の冷気が渦を巻く。駆け巡る魔力の流れが強くなり体を揺らす。
私の両肩にミサキさんの手が置かれ、揺れる体を押さえ付けた。
「精霊になった私は、自分に対し、常に絶対防御が発動しているようです。どんな時でも、あなたの傍で支えることが可能ですよ」
何とも心強い!
「行くよ!アブソリュート!スノー――!!特上だぁぁぁぁ!!!」
私はゆっくり回転しながら、掌に集めた魔力を開放する。私の周囲が何処までも氷付き、高さ1000mにも及ぶ氷に地面が押しつぶされた。
「・・・おい・・まじかよ」
「これが・・アブソリュート・・なの?」
「ママの絶対零度が団扇の風より弱く思えるね」
アリッサさんには1度見せてはいるが、あれは初めて打ったアブソリュート。熟練度の増した今のアブソリュートとは桁違いの威力。
初見の3人は驚きを隠せなかった。
「登るか」
「ええ、垂直の氷壁は厄介だわね」
「この氷、固いよ。爪が刺さらないから、登りにくいカモ」
私たちが居るのは、巨大な氷に囲まれた10mほどの空間。さすがに寒くなり、このままでは凍え死ぬ事態になる。
「まったく、あなたの魔法は後が大変ですね」
高さは1000mもあるので、登るのが大変だ。
しかも飛び跳ねながら登るには、特上の氷はツルツルしすぎていた。
「陸自特製のハーケンとピッケルであります。これを撃ち込みながらザイルを通し、位置を確保しながら登るであります」
特上の氷に、釘のようなハーケンを撃ち込むのにはパワーが居る。パルムさんが先頭になり、1本1本ハーケンを撃ち込んではザイルを通しながら皆で登って行く。
1時間で3m登るのが精一杯だった。
「このままだと、333時間かかるな。約2週間か・・・」
「無理よ、凍っちゃうわ。後8時間も立たずに、低体温症で死ぬわ」
「うん。手足の感覚がなくなってきたよ」
「自分もやばいであります」
10時間ほどかけ30mは登ったが、氷をも凍らせるアブソリュートスノーの氷は格段に冷たく、私は自分の撃った魔法で凍え死ぬ恐れがでてきた。
「あなたも『魔法に食われる』と言うことですね」
「にゃーーーーーーあ」
「幅が20mあれば、ヘリを呼び出せたでありますが・・・」
冷たいお言葉が私の胸に突き刺さり、心と体を冷やして行く。
セシルさんとアリッサさんは『炎の魔導士』。
しかしながら、継続作用のアブソリュートの効果は未だ消えていない。
炎の魔法に反応し、炎系魔法を使っても消されてしまう。
流石は特上。性能は松より段違いに良い。
「こんな時、女神が居ればな」
パルムさんの一言・・
「あ!?」
サーヤさんのこと忘れてた。
なんか忘れてる気がしたんだけど、サーヤさんを連れてきてあげるの忘れてた。
「ダメだ!陸自特製とか言うハーケンの先端が、氷に負けて丸くなっちまった。打ち込めねーぞ」
「一旦ビバークしましょう。もう体が動かないわ」
「私、パパとママがお迎えに来てるのが見てるけど、これやばいよね」
まじで不味い。こんな死に方は嫌だ!!
「私が絶対防御で床を作りましょう」
ミサキさんが足元に絶対防御で防壁を作る。アブソリュートが魔法に反応して防壁を凍らせる。防壁は強固な床になった。
「陸自特製の非常食であります」
飛鳥さんがカロリーメイトを出してくれた。
「ん?」
床が作れるってことは、階段も作れないか?
「雪姫!なんで早く言わないのですか!」
あははは・・・流石のミサキさんも、寒さで頭が回らなかったみたいだね。
後はミサキさんが頑張った。
氷の壁に沿い、螺旋状に絶対防御を使う。私たちは30分かけ氷の上に出られた。
「日の光の有難みが分かったな」
「はぁ・・・パルムチームの最後かと思ったわ」
「パパとママには帰ってもらったよ」
「危なかったであります。ここで死んだら笑いものでありました」
「まったくですね。やはり雪姫は氷の魔女ですよ」
「にゃーにゃー!!」
思いっきり撃てって言ってたよね・・・。
「だが、ここからも地獄だな」
「ええ、方角は向こうね。でも見渡す限り氷の平原よね」
「魔界だけに地獄だよね」
確かに閻魔域の方角は分かったが、距離などは不明。氷の上をどこまでも歩かないとだ。
「任せるであります。LR-2ハヤブサを呼びだすであります」
飛行機が現れた!
流石は飛鳥さん。飛鳥さんの魔法は、日本で所属していた陸上自衛隊の持つ装備を呼び出せること。
自分の口座から対価を引き落とすことで、あらゆる装備品を使うことができる。
唯一の欠点は、口座にお金が無いと使えないことだが、遠征にあたり、国家予算相当の金額が入金されていて、資金は潤沢だった。
「航空機の操縦もできるんだね」
陸自幹部だった飛鳥さん。戦車の操縦もお手の物。
「もちろんであります。しっかり講義は受けたゴールド免許であります」
おお!ゴールドか!
「ペーパーなので事故ったりしていないであります」
え?
「発進であります!しっかり掴まってであります!」
ええ!大丈夫!?
一末の不安を乗せて、ハヤブサは空に舞い上がる。
遥か彼方、霞む先まで凍り付く大地。
私達の閻魔域目指した空の旅が始まった。




