ギルド スノープリンセス2星猫編 ミサキ昇華⑥
「永遠の死を!永遠の眠りを!」
「絶対防御!絶対防御!絶対防御!」
攻撃するベルゼブブ伯爵。守るミサキ。だが、ミサキの霊力は尽きかけていた。
「ここまでですね・・・」
ミサキが目をつぶり覚悟を決める。
「テト!雪姫を引っ掻きなさい!」
「にゃ?」
「爪を立て、思いっきり顔をざっくりと行きなさい!」
「にゃぁ!!!!!」
「雪姫、お別れです。もう少し・・もう少しあなたと・・・・。絶対防御!絶対防御!絶対防御ぉぉぉ!!!!」
「いてぇぇ!!!!!」
頬をザックリ遣られた雪姫が飛び起きた。
「え?え?あ、アブソリュートスノー!!竹だぁぁぁ!!!」
状況の理解は追いついていない。が、目の前で剣を振るうベルゼブブ男爵に発動体制に入っていた竹を使う。
館の前に出来た巨大な氷の塊が、ベルゼブブ伯爵を飲み込んだ。
「ゆきひめ・・・・」
ほとんど姿が見えないほどミサキは透けていた。
「ミサキさん!」
「やっと起きましたね。寝坊はいけません・・・よ・・」
ミサキはフラフラと漂うように浮かび、弱弱しく言う。
「ミサキさん?」
「もう私の霊力が尽きてしまいました。私は・・」
「霊力なら私の打掛から!」
雪姫が立ち上がり、ミサキの前で言うと、ミサキの透けた顔は左右に振られた。
「私はただの幽霊ですよ。氷姫のように、上手く打掛の力を使うことはできません・・・・お別れです雪姫」
「待って、何言ってるの!?だめだよ。ミサキさんは私と一緒に・・」
ミサキの体は完全に消えていた。僅かにうっすらと首だけが残っていた。
「嫌だ!ダメだ!ミサキさん!ダメだから!」
雪姫がミサキの顔を手で押さえようとした。
「雪姫・・僅かな‥時間でしたが、あなたと共に・・・・頑張りなさい!負けてはいけませんよ!絶対に・・・で・・す・・・」
ミサキは完全に消えてしまった。
「ミサキさん・・・ヤダ!ヤダ!ヤダ!!ミサキさん!ミサキ・・・ミサキさん!!!!」
ギャリソン、パルム、ソーマたちの術が解け、目を覚まし、消えて行くミサキを目にしていた。その中でギャリソンが・・・
「こ、これは・・・・」
ギャリソンが驚きの言葉をした瞬間・・・。雪姫の前に1点の光が輝いた。
「ミ・・ミサキさん?」
雪姫の声に答えるように輝きは大きくなり人の姿になる。
そして光が輝きを失った時、そこには地に立つミサキが居た。
「わ、私は・・・」
自分の体を見て、手で触れ、ミサキは自身が驚いていた。
「ようこそミサキ様、精霊の世界へ。歓迎いたします」
ギャリソンが手を叩きながら近寄る。
「精霊の・・・世界?」
「はい。どういう訳かは存じませんが、幽霊のミサキ様は短時間で精霊へと昇華なされたのです。おそらくは、ミサキ様の強い想いに、白姫様の打掛がお力を貸したのではないかと」
「私が・・精霊に・・」
信じられないというミサキさんに、テトが足から駆け上がり肩に乗る。
「にゃー」
「テト?テトが私に・・」
精霊となったミサキは、ギャリソン達精霊と同じように触れることができた。
「ミサキさん!」
雪姫が抱き付く。
「雪姫・・・私は・・・」
「白姫さんが認めてくれたんだよ。ミサキさんは私にとって必要な人だって・・」
2人は抱き合い喜びを伝え合う。
「雪姫!」「マスター!」「向こうはやっけてたぜ」
ゲートが開く。ブルック、リアちゃん、サマンサたちが来た。
テレサが来るとリームが現れた。
「新人精霊。見習い精霊。新人精霊。見習い精霊」
と、抱き合う私たちの上でハイビスカスの花を降り注いでくれた。
「マスター精霊って?」
テレサに聞かれ私は答えた。
「うん。ミサキさんがね、精霊になったんだ」
私から離れたミサキさんが深く礼をした。
「私は精霊になることができました。これからは雪姫の精霊として恥ずかしくない行動を心がけたいと思います」
皆は驚いたが、目の前の事実。テレサの拍手に後押しされた、マリア、リア、サマンサ。ついでトーマやダイル。
「仕方ねーな。分かったよ。おめでとな」
「精霊に成れるほどの想いとはのぉ。雪姫の良きパートナーとなるがよい」
「僕からもおめでとうと言わせてもらいますよ」
ブルック、銀姫、アーロン君も祝福を送る。
「自分も、右に倣えであります」
最後に飛鳥さんがミサキさんに右手を差し出した。
握手を求めたのだ。
「期待に応えますよ」
「期待するであります」
固く握られた握手。テトも大喜びの中、ミサキさんは拍手に包まれる。
「向こうは上手くやれたようですね」
ミサキさんが飛鳥に言う。
「作戦が嵌ったであります。楽勝だったであります」
向こうはロプロスが居たはずだ。
「楽勝って?ロプロスが居たんだよね?」
厄災級のロプロス。私と氷姫さん以外には倒せていなかったが・・
「ミサとサキに協力してもらい、『鳥もち』に形状記憶の魔法を付与させました」
形状記憶の魔法?
「魔人族のメガメガホンで上空に打ち出した『鳥もち』が、空で蜘蛛の巣のように開いて落ちてきます。ロプロスと言えど、鳥もちに絡まれたら飛べませんからね」
「地べたに落ちたら、後はタコ殴りだ」
「寄ってたかってのぉ。あれは哀れじゃったわ」
凄い発想だ。でもさ、それって後が大変じゃない?いたるところに鳥もちが絡んで・・。
「あなたの魔法とは違いますからね。時間がたつと打ち出した時の状態、塊に戻るように魔法で調整してあります。回収は簡単ですよ」
後のことまで考えている。私のアブソリュートの後処理も考えてほしいね。
「雪姫、こっちは任せろ」
「わらわ達でも戦える事が証明できたでな」
「がおがおがお」
「ダイル様は行ってこい!と申しております」
飛鳥さんの手に小さな箱。
「使い方はルル殿から聞いているであります」
奴らからゲート装置を奪ったようだ。
「行こう!凍らせて、この戦いは終わりだ!」
飛鳥さん、パルムさん、セシルさん、アリッサさん、そしてミサキさんとテトが私の横に並んだ。
「帰って来いよ」
「約束じゃ。よいな?」
「姫が居ないとギルドが回りません。帰ってきてくださいね」
帰ってくるって。私は笑顔でうなずいた。
「じゃ行ってくるね!」
何か忘れている気がしたが、忘れるぐらいのことだ。たいしたことではない。
「自分が先であります」
ゲートを開くと飛鳥さんが飛び込み、パルムさんとセシルさんが続く。
私は振り返り皆を見る。
「必ず帰ってくるよ」と、目で語ると、ミサキさん、アリッサさんと共にゲートに飛び込んだ。
敵陣強襲だ!




