ギルド スノープリンセス2星猫編 ミサキ昇華②
ルルちゃんが大忙しだ。
もともと少ない機械技師。そこに舞い込んだ複数の案件。
パルムさんの帰還用の機器の修理。
ベルゼブブのアンチ魔力装置の解析と対アンチ魔力装置の開発。
マリアの修理。
もう1人で対応するのは無理。マリリンさんのマーメードドルフンからポポさん、王宮から王宮機械技師のモモさんを借りることになる。
そして昼夜を問わない作業が進むこと3日。
「終わりましたぁ!!」
マリアとルルちゃん、ポポさん、モモさんが作業室から出てくる。
「マリア!」
マリアが居なくて、お酒がおいしく飲めなかったギムが、真っ先にマリアに駆け寄る。
「ギム、どうしたの?何か用?」
と、ありえない冷たい態度。
「マリア、酌をしてくれ。お前が居ないと酒がまずい」
ギムの殺し文句に、いつものマリアならキュンキュン回路が暴走・・なのだが。
「後でね。今気分じゃないの」
ギムが固まる。真っ白の灰になる。そして口から魂が出てしまう。
「あれれ?おかしいな・・・」
異常に気が付いたルルちゃんが、マリアを連れ作業室へ戻った。
「えっと、ルルさんが説明する予定でしたが、代わりに私達が説明しますね」
大きなあくびをしながら、ポポさんが話し出した。
「このアンチ魔力装置は、特定の周波数のなんたらかんたらを出し、周囲の魔素を不活性化してしまいます。範囲は100m~200mに及びます。対アンチ魔力装置は、この周波数のなんたらかんたらを妨害し、魔素の不活性化を防げます」
試作機と言うことで、まだ実験はしていないそうだが、量産のめどはつくそうだ。
「次は私ですね」
今度はモモさんが話し出す。
「ゲート装置と言うべき機能の機器ですね。調べた結果、異状は見つけられませんでした」
正常に動いていた?と言うこと?
「じゃ、なんでゲートが開かなかったんだ?」
パルムさんが言うが、ごもっとも。
「この機器には受信装置が付いています。ゲートの向こう側からの信号を受け、初めて作動します。つまり、向こう側からの信号が来てないのが原因だと思います」
ギムが斬ってしまったが、達人の切り口は機器の内部を破壊することなく斬ったため、内部解析に支障はなかったらしい。
「考えられることは2つね」
セシルさんが言う。
「1つは、重力場の影響が予想通りじゃなかったこと」
この世界、ラムタ世界は重力場の底にある。周囲を囲む重力場は絶えず変化していて、弱まる時、強まる時を繰り返していると聞いた。
パルムさんたちが来た時の重力場の予想と違うたため、ゲートが開けないので信号が来なかった、と言うことらしい。
「もう1つは、向こうでケインたちに何かがあった。私たちに構っていられないほどの何かがね」
それも恐ろしい話だ。歴代勇者6位で、実力は有り余るケインさんたちに『何かが』・・考えられないような気がする。
「後1つあるよ!」
アリッサさんが他の可能性に気が付いた。
「忘れてるのかも」
いやいや・・それは無い。
「あーーそれかもな」
「あり得るわね」
あるのか?あっていいのか?
「トーレフはさ、研究に夢中になると、食べるの忘れて死にかけることがあるぐらいだからね」
没入型・・・
「まぁ考えても仕方なさ。帰れる方法がある以上、自力で帰ることを考えよう」
「そうね。方法があるから安心してお酒が飲めるわね」
「そうだね!」
やはり逞しい。
「ギムぅぅぅ」
作業室からマリアが飛び出してきた。
「ギム!ギムったら!しっかりして!髪が真っ白じゃない!どうしたの?」
素っ気ないマリアの一言で、最強の剣士は口から魂がはみ出し、髪は真っ白になる。
「マ・・・リ・・・ア・・・」
「ギム!しっかり!お酒飲もう。ネッ、お酌するからお酒」
ギムが立ち上がる。フン!!と気合を入れ体を振る。髪が元の色に戻り目に力が宿る。
「ああ、酌してくれ。お前が居ないと、俺は生きて行けそうにないからな」
「ギム・・・」
マリア、キュンキュン回路暴走の至極の時。
「マリア様、直ったようですね」
ルルちゃんがフラフラで出てきた。
「あははは・・恋愛チップを挿し忘れていました」
それが無いだけで、あの違い?
「やはり脆いですね・・これは・・」
「え?」
「いえ何でもありません」
今ミサキさん・・脆い?って言ったような。
「戻ったぜ」
「がおがおがお」
「ダイル様は、お疲れだと申しております」
「無駄骨でしたな」
ブルックたちは、ベルゼブブの兵が持っているはずの『ゲートを開く装置』を探していた。
が、マリアのブラックホールに飲み込ませたせいで、跡形が無い。
もしや落としていないか?わずかな希望で3日の間、広い戦場地を探し回ってくれていた。
「次があるさ」
「うむ。次はアレは無しでじゃな」
アブソリュートスノー・・凄く助かる魔法なんだけど、使い勝手がね・・・。
「ところで雪姫。ここ2~3日アリサを見ませんが、休んでいるのですか?」
ソーマ達との訓練に、アリサちゃんが来ていないことを聞かれた。
「あーあのね、ガイをやっつけたよね。その話をさ、マリリンさんにしたんだけど、いらないこと言って、連れていかれちゃった」
現在マーメードドルフン内で軟禁中‥らしい。
「いらないこととは?」
「うん。『私、スノーの幹部候補です』とか『スノーの魂を持っています』とか『良いギルドメンバーに成れそうです』とかかな?マリリンさんが凄い形相で抱き抱えて連れて行っちゃった」
「はぁぁぁぁぁ」
「にゃぁ~~」
がっかりされた。って私のせいじゃないよね?
「マリリンがあの子を気に入っているのは知っているはずです。注意点を伝えるべきではないですか?」
「あっ・・そうか」
「奪い返しに行きますよ」
「にゃ!」
え?まじ?マーメードドルフンへ?
「当然です。あの子は私の後継者です」
いつから?
「しっかりした教育と技の使い方を教えなければ、世界征服を企む悪い子になってしまいます」
ならないと思うけど・・・。
「テト!」
ミサキさんは私を指さし、テトの名を呼んだ。
「にゃぁん!!!」
テトが爪を立てた手を見せる、って!爪を立てるのは悪い子じゃないの?
「相手に言うことを聞かせるための爪は、猫の正当な行為です」
うわぁぁぁぁぁぁぁぁ
でも、一応登録はうちなんだよね。
形の上では奪われたってことだし、此処は乗り込むのもありか?
「わかった。行くだけ行ってみようか」




