ギルド スノープリンセス2星猫編 異なる世界⑥
「大罪人ミサキの幽霊よ!」「まだ世界を狙っていやがる!」
「雪姫は悪霊に取り憑かれていたんだ!」「道理で行動がおかしかったわけだ」
「雪姫かわいそう」「除霊だ!雪姫を救え!」
「国有の除霊部隊は何をしているんだ!」「早く除霊しろ!」
世間はひっくり返る騒ぎとなる。
一応ギルドの名簿には、私の付き人として登録済み。ロプロス襲来の際に、1部の冒険者は直接ミサキさんを見ている。が、まさか幽霊だとは思わず、ミサキさんをミサさんと勘違いしていたらしい。
「どうすんだよ?」
肘掛に肘を置き、拳を顎に当てたゴルノバ王が言う。
「あはははは・・・どうしよう」
全く考えていなかった事態。
「ですわ・・・これは収まりませんわよ」
ステラ女王のため息交じりのお言葉。
「ひゃははははは!良いじゃありませんか!どうせ世間の知るところになるのです」
よくねーーよ。ことには段階ってものがあるんだ。
「にゃーーーにゃーーー」
お前もなんで喜んでいる!
後日、ステラ女王のお言葉が実感できた。
「マスターが歩くと、ギム様と同じになりましたね」
リアちゃんが笑いながらの困り顔。
私が街を歩く。左右に人々が逃げ、道が開ける。
ギムと同じだ・・・。
そして聞こえる囁き声。
「あれがミサキに取り憑かれた氷の魔女よ」「魔女のくせに幽霊に取り憑かれやがった」「魔女なのにドジね」
私の評価は『魔女』が前提になっていた。
当初は私を心配する声もあったが、TV局がこぞって『悪意のある』特番を放送したせいで、本音をこぼした乙女の評価も、取り憑かれた乙女の身を案ずる声も消えてしまった。
因みに特番のタイトルは『氷の魔女、幽霊に陥落』『魔女雪姫、ミサキに取り憑かれる』『倒した敵に取り憑かれた魔女』などなど。
日ごろからメディアに愛想の無い私に、過去の問題も掘り返された遠慮のない内容だった。
流石の王様たちも『GOTO雪姫キャンペーン』程度では収まらないとし、一時別荘に逃げているように言われたが・・・
「そんな必要はありませんよ。どのみち私はこの世界で雪姫と共に歩むのです。『隠れて穏便に』等とは行きません。ここは堂々と世界と向き合うべきですね」
と、ミサキさんの言葉。
私ももっともだと思う。今まではすぐに逃げたが、これからは違う。ちゃんと向き合い、乙女の涙で胡麻化してやる。
「迷惑ですか?」
プカプカ浮いたミサキさんが言う。
「そんなわけないよ。私はミサキさんを信じて付き人にしたんだ。私が自分で決めたことだからね。批判は覚悟の上だよ」
当り前じゃないか。私は迷惑だなんて少ししか思っていないさ。
「にゃん!!」
いてぇぇぇぇ!!!
テトが闇の笑顔で私の顔を引っ搔いた!しかも爪を立ててだ!!
「こら!テト!ダメです!」
直ぐにミサキさんは大きな声でテトを叱る。
「にゃ?」
「爪を立てて引っ掻いてはダメです!見なさい!雪姫の頬を」
私の頬の引っ掻き傷からは血が流れていた。
そしてテトも、いつもと違うミサキさんに困惑する。
「マスター、ポーションです」
リアちゃんがポーションを出してくれて、私の傷は直ぐに治るが・・・
「あなたは悪い子です」
ミサキさんはテトに冷たく言い放つ。
「にゃ!にゃ!にゃ!!」
明らかに焦ったテトは、両手でミサキさんを手繰るように動かした。
「きっとテトちゃんは、マスターの言葉が嬉しかったんですね」
たぶん私の思った『少ししか』が気に入らなかったんだろうが、この猫・・心が読めるのか?
リアちゃんが慰めるようにテトの頭に手を伸ばそうとする。
「リア!甘やかしてはいけません!それではテトは良い子に成れません!ちゃんとダメなことを教えなければ、私みたいな悪い子に育ってしまいます!」
あはははは・・だいぶ理解してるんだ。
「テト、雪姫に謝りなさい」
「にゃぁぁぁ・・・」
「さぁ!早く!!」
テトは私の頬を舐めて『にゃぁぁ』と甘い声で鳴いた。
「いいよ。もうやらないよね?ならOK」
私はテトの謝罪を受け入れる。
「いい子ですね。あなたは本当に良い子です」
テトの頭に手を置くが、するっと透けたミサキさんの手はテトをすり抜ける。
ミサキさんの口元がピクリと動いた。
「・・・・・・・・・」
そして言いかけた言葉を飲み込んだ。
「巡回終了」
私達は日々のご町内巡回を終えギルドへ戻る。
何か問題はないか?異常はないか?ギムが悪さをしていないか?のための1日2回の巡回だが、私が出たせいで街が凍り付いただけだった気がした。
「おかえり。お疲れさんだね」
受付のジェシカが迎えてくれた。
「あんたにお客が来てるよ」
私?誰だろう?
「旦那だって言ってたけどね」
ヴぇ!あいつか!!ガイのバカ野郎だ!
懲りずにここまで来たのか?また凍らせてやる!
私は駆け足で2Fに上がると、部屋のドアを、音がするほど思いっきり開いた。
「まぁ乱暴な」
いつもの面々の中に見知らぬ美女が居た。
と、もう一人。ガイのバカ野郎。
「2号の遥だ。覚えなくていいぞ、もう会うことはないからな」
私に求婚中なのに2号を連れてくるとは、どんな神経をしていやがる?
「嫁同士が顔を合わせることは滅多にない。が、お前のことを話したら遥が会いたいって言うから連れてきた」
笑顔でぺこりと頭を下げた遥さんと言う美女。
「断ったはずだよ。私は嫁には行かないからね」
私はもう一度はっきりと言う。
「お待ちください雪姫様。雪姫様のお留守でしたが、ギルドとして正式な会議を開いておりました」
ギャリソン?会議って?
「雪姫様を嫁がせるか問題でございます。賛成多数で『嫁がせろ』との結論に至りました」
おい!私の問題だ!ギルマスの進退とかじゃないんだよ!
「雪姫、これはギルド会議の結果だ!ギルマスのお前でも従ってもらう」
ブルック・・・
「がおがおがお」
「ダイル様は従うべきだ。嫁に行き落ち着きと女らしさを…申し訳ありません。これ以上は訳したくありません」
ダイルぅぅぅ!!!
「と言うわけだ。俺の嫁に成れ」
全員凍らせるか?
私の中から冷気が噴き出すが、ガイは意外な言葉を口にした。




