ギルド スノープリンセス2 星猫編 異なる世界③
「マリア!TVをつけろ!サマンサはギルドフラグだ!」
酒を飲み騒いでいた面々は、ブルックの声で真剣な顔になる。
「雪姫が暴走した!状況はさらに悪くなる!今のあいつは酔った上に『人気なんか糞くらえ』と思っている!!」
ブルックが簡単な説明する。
「まずいよ。ギルドフラグが燃えている」
サマンサがギルドフラグ『不屈の雪』を持ってきた。ギルドフラグは雪姫の魂が燃えていることを表している。
「見てください!マスターです!」
テレサがTVに映る雪姫を指さす。
「がおがおがお!!」
「ダイル様は、まずい!酔っぱらっていやがると、仰っております」
全員がTVに注目した。
「あーあーテステス」
一気飲みした酒が回り、目が座っている雪姫。
「えっと、私は雪姫ら!!私は神様なんかになりたいとは思っていない!!勝手に拝むな!うぃ。それゃ少しだけ、サーヤさんで儲けてやろうとは思ったけど、ノルマなんかつけてない!!スノーをブラック企業みたいに言うな!!うぃうぃ!」
更に雪姫の演説は続く。
「私は婚約も結婚もしな~~い!!!殺人は濡れ衣らぁ!!後で証拠の映像を出す!!人気なんか糞くらえらぁぁぁぁ!!」
『ああああああああ』と頭を抱える面々。
更に・・・
「お前らが私をどう思おうと、私は私らぁぁ!!文句があるなら凍らせる!私は氷の魔女らぁ!!」
「まぁまぁ雪姫さん、少し酔ってますわね。心にもないことを」
「あははは、今日は気分が良いようだな。なんかいつもと違うぞ。ギャグが多いな」
見かねたのか、ゴルノバ王とステラ女王が左右からフォローに入ってきた。
「王宮だ!ギルドスノープリンセス!行くぞ!!」
ブルックが叫ぶ。
「あら、かっこいい」
「うん、雪姫さん、やるね」
そこに話し合を終えたセシルとアリッサが来た。
「かっこいいって話じゃねーんだ!!あいつの暴走炎上癖はよ!」
少しイラだっていたブルックが言い返す。
「雪姫の演説下手は呪いの粋じゃ。あ奴に任せると偉いことになる」
銀姫も続いた。
「でも、あなた達のトップよね。トップの方針じゃないの?」
なぜかセシルは下がらない。
それには理由があった。
パルムが部屋を出た後、話は平行線を続け、らちが明かないと考えたセシルは、息抜きのつもりでミサキに雑談を持ちかけた。
雑談に応じたミサキの話は、愚かな自分と雪姫に関することばかりだった。
その話の中でセシルは、あることに気が付いていた。
「世界を守る者に、人気なんか必要ないわ!必要なのは信用と信頼よ」
セシルもパルムと同じ考えだ。
「がおがおがお!!」
「ダイル様は、とても汚い言葉を発せられました」
カウラは訳さない。
「そうですよ!姫は世界を守る勇者相当ですが、ギルドのマスターでもあるんです!姫の行動は営業にかかわります」
アーロン君、久々の発言。
「あら、営業?人気頼りの営業なの?仕事に信用が無いの?信頼も?」
フーンと顔でアーロンを見ながらセシルは言う。
「うちは信用も信頼もあります!」
当然だとばかりにアーロンは返すが・・・
「なら、人気は必要ないじゃない。仕事に信用があれば、放っておいても依頼は来るわ。仕事は人気より内容なのよ。人気だの評価だのに過剰反応しすぎじゃない?」
ど正論。
「あの子、酔っぱらっているけど、言葉に魂がこもってる。あれは本音よ。あの子の魂の声。『人気なんかに振り回されたくない』というね。あなた達も彼女を信じてるのなら、彼女の言葉に力を貸しなさい!」
更にど正論。
「あの。私も賛成です。マスターの炎上癖は直りませんが、マスターに悪意はありません。私達で支えるべきです」
テレサが言う。
「僕もいいと思うな」
トーマが続く。
「あたいも、そろそろ本音でやらせてやりたい気がするね。作り笑いが辛そうだぜ」
サマンサ。
そしてギムが立ち上がった。
「ブルック、雪姫の好きにさせろ」
アーロンは副マスだが、発言権が弱い。事実上スノーの中で雪姫に続く発言力はギムにある。
「俺はあいつのヘラヘラした笑いが嫌いだ」
揉めた時のギムの一言。結構強力なのだ。勿論ギムには事の何たるかは分かっていない。単に嫌いな笑い方が気に入らないだけだった。
「知らねーぞ俺は!」
「わらわも知らぬからな」
「難しい所ではございますが、ギム様がおっしゃるのなら」
「自分も堂々巡りはご免であります。どこかで白黒つけた方がいいであります」
ブルックと銀姫も仕方なく折れるが、ギャリソンや飛鳥はギムに賛成だった。
「私だって好かれたいよ。でもね、好かれることばかりやってたら、世界は救えないんだ!」
頬をべったり机に付け、べそをかきながら雪姫の演説は続いていた。
「こんな私の姿を見て、マックスや白姫さんも情けないと思ってるよ・・でも、私はそんなに器用じゃないんだ!!」
机を拳で強く叩く。悔しさと怒りが現れる。
そして、クイクイっと指を動かすと、エアコップを持ち、口に運ぶ動作をする。
『酒を持ってこい』とのサインだ。
相手は近くにいたゴルノバ王とステラ女王。
「アハハ。雪姫。今はよした方が・・」
「ですわ。そろそろ切り上げて、おかえりになった方が・・」
『ダン!!』強く机が叩かれ、また指がクイクイっと動く。
そして口に出る。「もってこい」と。
「ほらみやがれ!!放っておいたら不敬罪だけじゃすまなくなるぞ!!」
ブルックがTVを指さす。
「いいわね、あの子。好きになりそうだわ」
「うんうん。ママよりすごいかも」
セシルとアリッサは笑いながら言う。
「だろ?あいつは面白い奴だ。酒の肴になる」
ギムはなぜかどや顔。
そして吹き込んだパルムは、ことの重大さに気が付き、部屋から逃げ出していた。
「やっぱり駄目だ!いくぞ!!」
ブルックが業を煮やした。
「だめよ!今止めたら木阿弥よ。逆に悪くなるわ。今はあの子の好きにさせなさい」
それをセシルが止める。
「貴様!何様だ!!お前が雪姫の何を知ってる!俺たちはあいつの事なら・・」
セシルがブルックの口に指を2本当てた。
「知ってる?そう?じゃあの子が1人で戦っていたことも分かっていた?辛くても下がれず、弱みを見せることもできず、向かい吹く風に耐えていたことを?」
「僕たちは姫を守り支えてきました!何をいい加減なことを!」
アーロンは即反論した。
「あなた達、トップに立ったことがあるの?トップだけが感じる重圧。体験したこと、あるかしら?」
セシルは元勇者。勇者ランク3位の実力が生む目力と威圧感がある。
不死の呪いにより、多くを経験するセシルが持つ貫禄と、場を圧倒する重圧感に、ブルックも思わず後ずさりする。
「守っていた。確かに守られていたでしょう。支えていたのも確かだったはず。でも結論はあの子に任せていた。違う?任されたあの子は、自分の選択で結果が変わるという重圧にさらされ続けていたのよ」
「ママが言っていたよ。『自分たちの判断ミスや作戦ミスで戦局が変わるぞ。だから2重3重のプランを考えておくぞ。どこまで読んでも読み過ぎはないぞ。頭が壊れるほど考えるんだぞ』ってね。雪姫さんはママと似てるよ。『考えていないふりをして、どこまでも深く考えている』なんだよ」
セシルとアリッサの言葉に、ブルックたちは思い当たる節が多々あった。
「ご指摘は、ごもっともでございます。確かに結論は雪姫様にお任せしておりました」
「あ奴は、深く考えおる。白姫ならともかく、わらわたちでは、あ奴の考えに及ぶことはない。支えに成ろうにも、支えようがなかったのは事実じゃ」
「ぐぅ・・・・」
ギャリソンや銀姫は認めざる得なかった。そしてブルックもグゥの根しか出せない。
「がおがおがお」
「ダイル様は『では、どうしろと言うんだ』と仰っております」
ギルドの中には、雪姫と同じレベルの思考で考えられるものが居なかった。




