ギルド スノープリンセス2 星猫編 異なる世界①
「驚くかもしれないけど、私は1度、ケプラスのダンジョンで穴に飲まれているの」
マリリンさんを含む、ギルドのメンバーの前で、私はあの日のことを話す。
マリリンさんと一緒に穴に飲まれ、元居た世界『日本』へ戻り、飛鳥さんと知り合う。そこで女神ティナさんや女神アルテミスさんが現れ、勇者ケインの居る世界へ行く。戦闘訓練をして貰い、アブソリートが使えるようになり、ケインさんのチームの科学班の力で帰ってこれた。
「なるほどであります。言われてみれば、なんとなく思い出してきたであります」
私も気が付くと、記憶が戻ってきた。
飛鳥さんとマリリンさんも、次第に思い出すはずだ。
「私は信用できません!」
確かに信じられない話だが、激否定されると・・・。
「この『渋谷』とか言う街で買った洋服類。これ、私が買ったとは思えないセンスです」
そこかよ?
「いきなりアブソリュートが使えるし、腕も上がって、見知らぬ女を連れていたから、変だとは思ったが・・まさか穴にね」
ブルックも、おそらく皆も、私の変化には気が付いていたはずだ。
だが、まさかとの思いがあるから、気が付いていても『アブソリュートスノーが使えるようになった成長』だと考えていたはずだ。
「これが自分の写真である以上、大隊長殿の言葉は真実であります。この2人にも見覚えがあるであります」
飛鳥さんと私、マリリンさんと、日本でお世話になった、嵐山と白鳥さんの5人で写した記念の写真。
飛鳥さんは懐かしそうに見ていた。
「なんか言い出せなくてね。今まで黙っていたんだけど、ごめんね」
特に理由はない。だが、何か言い出せない気がしていた。
なんですぐに?と言われるのや、飛鳥さんの希望とは言え、連れてきた事を後悔されるのが、怖かったかもしれない。
「わかったであります。色々思い出して、自分はこの世界に来れたことを大隊長殿に感謝してるであります」
「私も美味しいスィーツが食べられたし、良い体験ができたと思います」
思い出してきたようだ。
そして2人の、気にしていないという言葉に私は安堵した。
「では、1つ問題が片付いたようなので、次の問題を解決するとしましょう」
ジェームス係長が合図をした。
私たちの部屋に、3人が入ってくる。
「お久しぶり!柊さん!」
この口調はアリッサさんだ。アリスさんなら、語尾に『だぞ』が付く。娘さんの方だ。
「うん!その節はお世話になりました」
「お久しぶりであります」
「また会えてうれしいです」
飛鳥さんとマリリンさんも思い出したようだ。
「でね、こっちがパルム。私のお爺ちゃんだよ。で、セシル。パルムの奥さんだよ」
言い方から察した。女性は『おばぁちゃん』って呼ばれるのを嫌がる。『おばさん』もNGだ。銀姫さんをおばさんと呼ぶと、喉を食いちぎると言われている。
「パルムだ。よろしく頼む」
「セシルよ。噂は聞いてるわ」
ブルックみたいな屈強な体に、力強を感じる顎髭の男、パルムさん。
妖艶な大人の色気を感じるセシルさんは、深紅の着物を着ている。
「こっちの世界では、雪姫と名乗ってます。ギルドスノープリンセスのギルドマスターをしています。ここの連中がギルドの幹部たちです」
3人が円陣を組んだ。
「マジかよ。やっぱり、同一人物じゃーねか」
「虫さんたちを怖がられて、神を名乗って、国に祭り上げられて、告られて結婚して、翌日に喧嘩で旦那を凍らせて、おじいさんを殺した娘なのよね」
「結構やばい奴かもしれないよ。警戒しながら話そうか?」
聞こえてるよ。
「あのさ、だいぶ誤解もあるようだから、釈明してもいいかな?」
穴から帰って来た時からスタートし、今日までに至る話は、1時間にも及ぶ。
「なるほどだな。虫たちは敵だったのか」
「神を名乗ったのも、信仰心を植え付けない為だったのね」
「色々分かったよ。雪姫さんが良い人でよかった」
分かって貰えたぁぁぁぁ。肩で息をする私。
「話を聞くと、あんたも大変だな」
「若いのに肩に色々乗せちゃって、無理してない?」
「猫と幽霊も乗ってるね」
あはははは・・乗り過ぎだよね。
「俺たちは、女神サーヤとサーヤが保護していた星猫の捜索に来た」
サーヤは間もなくジェームス係長が連れてくる。星猫は私の肩に居る。
居るが…ミサキさんが隠そうとしていた。
「ある程度話は聞いてるわよね。その猫は只の猫じゃないのよ」
セシルさんの言葉に、ミサキさんが叫んだ。
「テトは私が育てます!誰にも渡したりしませんよ!」
言うと思った。
「まぁ、俺たちとしては、連れ帰るように言われてるんだが」
「銀河の卵なのよ。育ったら手に負えないわよ」
「女神に任せた方がいいよ」
説得に応じる人ではないと思うのよね。
「雪姫、アブソリュートです!特上を許可します」
あはははは・・・さすがにそれは。
「雪姫様、サーヤ様をお連れしました」
そこに、サーヤさんを連れたジェームス係長が来る。
「あ・・の・・この人・・天界指名手配犯です」
え?
サーヤさんが、パルムさんとセシルさんを指さした。
ブルックとギムが私の前に出た。
「待って待って!」
アリッサさんがサーヤさんの前を塞ぐ。今度は向こうが悪人疑惑だ。
「今は違うわよ」
「俺たちは勇者チームだ」
セシルさんとパルムさんが否定して、パルムさんが懐から何かを出した。
「エクセレント※から預かってきた。命令書だそうだ」
※ティナの姉。ヴィーナス家長女。事実上の天界女神ランク2位の大物。
その手紙をアリッサさんが受け取り、サーヤさんに渡す。
サーヤさん、またひれ伏し、頬を床に擦り付ける。
「ま、ま、間違いなくエクセレント様からの命令書です!パルム様セシル様、ご無礼をお許しください!!」
女神って上下関係が厳しいのか?
「まぁ、一時は傭兵をしてたしな。いいさ、言わねーから立ってくれ」
「指名手配もされてたけど、恩赦は貰ったわよ。気にしないから立ちなさい」
「傭兵しながら、エクセレントさんの指示で動いてたんだよね」
まぁ悪い奴ではないという事だ。ギムもブルックも肩から力を抜いた。
「命令書では『パルム様たちと、共に戻るように』とのことです。勿論星猫もです」
サーヤさんの言葉に、ミサキさんが意味もなく絶対防御を使う。




