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ギルド スノープリンセス2 星猫編  来る者、去る者③

私は氷姫さんと2人に成る。と言っても肩の上にはテト。ぷかぷか浮かぶミサキさんは一緒だ。


「私はね、あなたが大好きよ。白姫様とは違う魅力と、まっすぐなところが大好き。ずうっと傍に居たいと思っていた。でも・・・」

「うん。白姫さんが、この世界から旅立った」

契機は分かっていた。みんなで訪れた時のお墓での顔。私は覚えていた。

あの悲しそうで、切なそうで、苦しそうな表情。そして何かを決めた決断の顔。

「わかってたのね」

「うん」

この世界からマックスと白姫さんは、魂を転生させる世界へと旅立った。

「私は白姫様の居た証を、守っていくことにしたの」

死して尚、その魅力に魅了させる白姫さん。氷姫さんたちは、白姫さんの墓守としての道を選んだんだ。

「うん。わかるよ。白姫さんの居た証を守ってあげて。お願いするね」

私は笑顔で送り出すつもりだ。

「ゆきひめぇぇぇ」

だが、泣きながら抱き付かれ、私の涙腺は崩壊する。

「あーーーん!」「うぇぇぇぇぇぇーーーん」

今生の別れではない。ただ進む道が変わるだけの別れだ。また会える。

分かってはいるが、涙は止まらない。


「顔が少し溶けっちゃったわ」

氷姫さんの体は氷。熱い涙を流し、目の所が…。

「ちゃんと前に進んでいるのね」

またチラリとミサキさんを見る。

「マックスと白姫様が作ったギルド。あなたはちゃんと新しい仲間を増やし、自分のギルドにしているわね。また会いましょう雪姫」

「うん。いつでも会いに来てね」

私たちはもう一度抱き合う。

「今までありがとう」

私は別れの言葉を贈る。

白鳳が、白龍が、白武が、白虎が、かわるがわる私の顔にスリスリして別れを惜しむ。

「さようなら、雪姫」

氷姫さんがゆっく離れた。


「あっ!大事なこと言い忘れてたわ!」

え?

良い感じの別れだったが、氷姫さんがぶち壊す。

「あのね、よく聞いて」

聞いてるって。

「あなたの打掛と色無地。白姫様が命を刷り込んで作った着物はね、白姫様が旅立った今、いずれ霊力を失うわ」

えええええ!?

「勿論、今すぐにではないわ。ここからが重要よ。『白姫様が転生を果たされると、その時点で効果は無くなる』のよ」

打掛の防御力・・いや、そこじゃない。大事なのは、その後だ。

「それって・・・」

「そう、あなたには、白姫様が転生した時が分かるの」

そんな大事なことを言い忘れてたのかよ!!

「危なかった・・・戻って伝えに来なくちゃいけない所だったわ」

あはははは・・・もう泣かないでお別れが出来そうな気がする。

「あのさ、マックスと白姫さんのお墓に行くんだよね?伝言お願いできるかな?『私は大丈夫。もう一人で歩けてるから安心して』って」

「ええ良いわよ。でも、ちょっと寄り道してからだけど、お墓に着いたら伝えるわね」

寄り道?

「じゃ雪姫、元気でね。幽霊さん、しっかり守ってあげてね」

氷姫さんは手を振りながら白鳳に乗り、飛んでゆく。

私も思いっきり手を振り、見えなくなるまで降り続けた。

「聖霊でしたね。あの者は」

「うん。白姫さんの聖霊。私に力を貸してくれていたんだ」

「今もって、あなたに勝てない理由が分かりましたよ。王や聖霊、そして神さえも仲間にする貴方に、凡人の私が挑むこと自体、無理ゲーでしたね。世界を仲間に付けた貴方は、まさに神ですよ」

あはははは・・・神は言い過ぎだけどね。

「見て、ミサキさん。みんなを」

戦いに勝ち、喜びを讃え合うラムタの戦士たち、魔人族。その中に王や各国の重鎮が加わり、ルナさんとサーヤさんが混じり、誰構わず喜びを分け合っている。

「この世界はね、ミサキさんが基礎を作ったから、今があるんだよ。ミサキさんは、気が付いてなかったかもしれないけど、世界に関与しだした頃のミサキさんは、今の私と同じ立場に居たんだよ」

「私が雪姫のような・・立場に?」

「そう。国王はミサキさんの言葉に耳を貸し、その意見に国が動き、世界が動く。それほどミサキさんは、発言力と信頼を持っていたんだよ」


自分と同等の存在が、迷い人からしか生まれないと知ったミサキは、迷い人を重んじるようになる。そして各国に働きかけ、迷い人を保護する村『迷い人の村』を作り上げる。

それはミサキが、国や世界から信頼を得ていた証だった。


「気が付いていませんでした・・・私は・・・ああ、確かにです。200年ほど前、私の意見は重宝され、私の言葉は多くの王たちに・・・。私はそれを手放してしまった・・・」

ミサキさんは道を踏み外したと反省していた。それに気が付くことは、すごく大事なことだ。だが、その前にしたことが、本当の意味での間違いだったんだ。

「私は手にしていたんですね。多くの仲間たちと世界を・・・なのに・・なのに・・わたしは・・・」

自分が求めていたものを見失い、道を間違える。それはあり得ることだ。

長い年月を生きる迷い人なら、なおさらのことだ。

「なんと愚かな・・・私は求めていた。私を信じ、慕い、付いてきてくれる仲間たちを・・それを自ら手放すとは・・」

この世界に落ちてきたミサキさんが、本当に幸せだったのは、最初の村で暮らしていた日々。

少しずつ価値観が変化し、迷い人以外を見下すようになり、力があるが故にゲームと現実の区別が曖昧になる。

「雪姫、私は馬鹿ですね」

「うん。馬鹿だよね」

ミサキさんは泣いていた。流す涙は地に落ちることはなく、空中で消えてゆく。

「馬鹿だけど、間に合ったよ。未練が、ミサキさん自身を救ったんだ」

未練が残り成仏できなかったミサキさん。生は無いが、魂は残った。

「改めて誓いましょう。もう道は決して踏み外しません。魂に誓い、私は仲間と共に進みます」

うん。本当の意味で、今ミサキさんは私の仲間になった。


「あの、雪姫さん」

ミサさん?ミサさんとサキさんが後ろに居た。

「ゴルノバ王がお呼びなので来たのですが、お二人が話していたので・・」

ミサキさんは袖で涙をぬぐい、目線をそらした。

「うん、わかった。すぐ行くって伝えてもらえます?」

ミサさんが頷く。

「オリジナル・・いや、ミサキさん。サキの薬の件、ありがとうございました。サキの負担が減り、助かりました」

ミサさんのお礼の言葉だが、これは許しの言葉でもある。

「ミサキさん、見事な采配でした。今度いろいろと教えてください」

ミサさんからも許しの言葉だ。

「ゆ、雪姫、行きますよ。王を待たせては失礼です」

何とか言葉にしたが、もう涙で顔がグチャグチャだ。


どうしていいか分からないテトは、私の右肩から左肩をグルグルと駆けまわっていた。



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