ギルド スノープリンセス2 星猫編 神⑥
「此処に第1回!神は誰なのか?選手権の開催を宣言する」
私から逃げていたゴルノバ王が宣誓した。
「誰も話を聞いてくれませんでした。女神を支持しない下界民なんて、信じられません」
サーヤが泣きごとのように言う。1人脱落だ。
「しかし、本当の神に挑むとは、雪姫さんも偉くなりましたね」
ルナさんからは余裕の顔。嫌味まで出てきた。
「うん、国王命令だからね。手抜きはしないよ」
戦いは始まる前から決着している。私の勝利は揺るがない。余裕だ。
「では選手入場!」
ゴルノバ王の声で、私たちは競技場へと入って行く。
超満員の競技場観客席からは、惜しみの無い拍手が送られた。
「天界代表女神サーヤ!」
私達の紹介が始まる。
パチパチパチ。まばらな拍手が起こり、1人の脱落が確定した。
事実上、この拍手や応援の大きさが勝敗を分ける。
「月世界代表!!神の使いルナ!」
大きな拍手。それに手を振り答えるルナさん。
「ラムタ世界代表!スノープリンセス!雪姫!」
静まり返る競技場・・って私ゃ世界を救った英雄だぞ。
しかし、観客席からテレサとマリア、そして飛鳥さんが飛び降り、私の横に並ぶ。
それを見た観客は、競技場を揺らすほどの拍手を送ってくれた。
「ご自分では勝てないと知っていましたか?」
あれ?なんだ、この余裕は?
「こうなると、ドワーフ様は読んでいましたよ」
なんだって?読んでいた?
ルナさんは貴賓席を指さした。
「順位票の争いでしたよね?」
げげ!!!貴賓席に『ケファ』さん。植物族の女王が・・・。
「この戦いは数の争い。ドワーフ様は植物族、12億人分の投票権の委任を受けています。植物族は生命樹が頑張ってくれて、1年で大所帯になっています」
その手で来たか?私たちにも恩義のある植物族だが、何度も助けられたドワーフさんには逆らえない。ルナさんに付くのは必須だ。
そして8か国会議の中に名を連ねる以上、ラムタ世界の一員でもある。
「私の勝ですよ、雪姫さん」
ルナさんから勝利宣言が出た。
5種目あるが、とどのつまりは味方の多さで4種目の勝敗が決まる。
おそらくルール設定の段階で、ドワーフさんはここまで読み切っていたのだろう。
「なるほど、深読みでは、あなたの敵は居ないと言う事ですね」
ミサキさんが感心したように言う。
私は手を上げる。リアちゃんともう一人が、観客席から降りてきた。
「あ、あれは?」
そう、ゴキブリ族のコック王だ。
「まさか、雪姫さん?」
ルナさんは悟る。うん。そのまさかだよ。
遺跡に行ったとき、ミサキさんの言葉の『票数』で私は気が付いた。
数の戦いなら、数を用意した方の勝になる。一応、保険はかけておくべきだ。
私はカマキリ族の1人を捕まえると、コック王へ伝言を頼む。
『ゴキブリ王へ 10日以内に全昆虫族から委任を取り、シェリル王まで届ける事。できない時は凍らせる。 雪姫』
コック王は良い仕事をしてくれた。
10日で9の部族。ヒアリ族やら、軍隊アリ族、ミツバチ族に、スズメバチ族。数の多いところを中心に、48億の委任を取り付けてくれた。
玉ねぎ2箱40Kgを報酬として送り、おおいに満足してもらう。
「敵ですよ!昆虫族は人類の敵!敵から委任って、聞いたことがありません!」
おっと抵抗するのか?
「ラムタ世界の神だよね?ルナさん達は昆虫族が敵なのかな?」
一言でグウの音も出ないはず。ドワーフさんは見守る神。基本13世界には関与せず、敵も味方もない。
「ぐぅ・・・・」
ルナさんは貴賓室のドワーフさんが白旗を振っているのを見て、両肩から力を抜いた。
「わたしの負け・・・」
言いかけた時。
「雪姫、またです!穴です!」
「ふにゃーーーーー」
肩の上で浮かぶミサキさんとテトが空を見た。
ギムが観客席から飛び出してくる。
「逃げて!穴!穴が開く!すぐ逃げて!!!!」
私は大きな声を上げた。
即時に観客席にいたスノーの職員が反応し、避難の誘導を開始する。
マリリンさんや魔人族のクーガさん、冒険者たちが競技場に降りてくる。
「開きます!警戒態勢!!」
ミサキさんが叫んだ。
天空の1点に空気の渦が出来、黒い穴が現れる。
穴は渦を巻きながら広がって行く。
直径が10mぐらいに達すると、中からハエのような姿で武装した兵士が多数現れ、空を埋め尽くす。
「あれは・・・ベルゼブブ一族です。魔界の1種族です」
こいつらをサーヤさんが知っていた。
穴から出てきたけど、穴ではない。これはゲートのようだ。
「星猫を狙ってるのは、あいつらです!あいつらが翼竜を操っています!」
ミサキさんの眉間がピクっと動いた。私はテトを懐に隠す。
「マスター巨大な魔力の反応です」
大量のハエ人間どもの最後から、何やら偉そうなのが出てきた。
姿かたちは同じでも、着ている衣装が偉そうだ。
そいつはゆっくりと私たちの上空に立つ。
「初めまして、私はベルゼブブ族・・・・・」
「アブソリュートスノー梅だぁぁぁぁぁ!!!」
先制攻撃!
空一面が凍り、大量のハエ人間どもが落ちてきた。
しかし、偉そうなのはピンピンしていやがる。
「これはこれは・・・蛮族の暮らす世界とは思っていましたが、まさかのあいさつ代わりに一撃とは・・・品のない世界ですね」
効いてない。梅ぐらいでは全然効果がない。
「改めて私は、ベルゼブブ族男爵『ベルゼブブ男爵』と申します」
そのまんまかよ!
「星猫を頂きに上がりました」
やっぱり敵だ!!!
『ギルド!スノープリンセス!戦闘開始だ!!』
私の声で、ギムが跳ねあがりベルゼブブ男爵に斬りかかると、マリアが光子砲を起動。
テレサや魔人族がメガメガホンで、空一面のハエ人間たちを攻撃。
飛鳥さんがミサイルを繰り出し、ヘレンが隔離爆裂を使う。
が、空を自由に飛ぶハエ人間は、攻撃を避け大打撃は与えられていない。
「ほぉほぉほぉほぉほ。蛮族にしては強力な攻撃と見事な技ですね」
ベルゼブブ男爵もギムの攻撃をかわし、余裕を見せていた。
「素直に渡せば、こんな世界の相手などしないで帰ろうと思いましたが・・・」
にたりと笑いながら、ベルゼブブ男爵は両手を広げる。
『滅んでしまいなさい』
広げた両手は、頭上に巨大な穴を作る。そして中から現れたのはロプロスだ。
「ロプロスが・・3体も・・・」
テレサが、呟くように言った。そしてダイルやトーマ、ソーマやヘレン、ロプロスの恐ろしさを知るラムタの冒険者たちは、絶望の色を顔に表した。
空を悠々と飛び回る3体のロプロス。そして大量のハエ人間。アブソリュート梅やギムの攻撃が通用しないベルゼゼブ男爵。
ピンチかな?




