ギルド スノープリンセス2 星猫編 神⑤
「攻撃する順番が逆です。ヘレンが先制攻撃して数を減らす。取りこぼしをソーマが迎え撃つ。これが正解です。今の順番では、数に対抗できませんし、外した際の次の1手が後手に回ります。それは相手が1体の時の戦い方ですよ」
「にゃん!」
流石は戦闘経験豊富なミサキさんだ。2人の特色を理解した上で・・あれ?
いつ知ったの?私説明してないよね?
「生前から知ってましたよ。世界の情報を集めるのは侵略者の基本ですよ」
自分を侵略者と言い切るか?
「そっか。俺たち、いつもこの順番だったから、考えたことがなかったぜ」
「うん。言われてみれば、そうだよね」
ソーマとヘレンは素直だ。ミサキさんの言葉をしっかり理解した。
「そして今は3人です。新チームで互いの能力を理解できていない状態での戦闘。こんな時は、指揮をとるモノの指示に従って動く。指示を待つのが正解です。分かりますね?」
「おう!分かったぜ!ミサキさんの指示を待ってから動くぜ!」
「うん。指揮は、よろしくお願いします」
「マリマスは『アリサは待機!後ろで見ていなさい。見学も勉強です!』としか言わないから、戦闘に参加させてもらえると嬉しいです」
新チームの指揮官は、ミサキさんで決まりだ。
私たちは奥に進む。階段を降り、出てきた敵を倒す。
ミサキさんは見事な指揮で、私やギム、マリアの出番はない。
そして大きな扉の前に来た。
「ここが最深部ですね。今までの通路とは違います」
多くの遺跡を発掘したミサキさんが言う。
「気を付けろ。何やら邪悪な気を感じる」
ギムが警戒を促す。
「ここは私たちが先行する。ソーマとヘレン、アリサちゃんは後ろから入って」
ギムが言う邪悪な気。ギムが言うんだ相当なものだと予想した。
「雪姫、私はいったん離れます」
ミサキさんがソーマ達の方へ行く。
私が両手で扉を開けた。
「・・・ヒドラ・・ですか?これは不味いですね」
15mはある巨体。5つの首を持つ大蛇がいた。
「ギム!」
「おうよ!」
半分開いた扉から、ギムが飛び込みヒドラを斬る!
「無駄ですよ。ヒドラの再生能力は並ではありません。あの看板の警告は本物だったわけです」
ギムが攻撃し、3つの首が落ちるが、斬られた首は直ぐに再生した。って、なんで孫の手なんだよ!?マリアが用意した予備の剣はどうした?
「ギムは細長ければ、物差しでも孫の手でも技が普通に使えます」
そういう問題じゃない!剣士の魂が孫の手でいいのか?
「なら私がやる!ブリザードだぁ!!」
私のブリザードを受けたヒドラは、ケロッとしていた。
「魔法耐性も抜群ですよ。生半可な魔法などヒドラには効果がありません。ヒドラの唯一の弱点は『美しい乙女の歌声』です。美しい歌声にヒドラは深い眠りにつくと聞いたことがります。ただし歌が上手くないと駄目です」
神の資質に、美容と歌唱力が必要だったのかぁ!
「ごめんなさい。私、乙女ではないので・・」
くそぉぉ!!!10歳のヘレンから聞こえてはいけない言葉が聞こえた!
「俺たち、手を握り合っちまったからな。ヘレンは乙女じゃないぜ」
所詮10歳児だったぁ!
「私、乙女だけど歌は下手なので・・」
私もだ!歌クソなんだ。
「なら、私が行きます!」
マリアが前に出る。
「駄目だマリア!俺はお前の手を握っちまった。お前も乙女じゃねー」
ギムも10歳児レベルだった!
そんな私たちにはお構いなしに、ヒドラは攻撃を仕掛けて来る。
「絶対防御!」
「絶対防御です!」
口から炎や毒、冷気に雷撃、光線と、多様な属性で攻撃が来るが、2人の絶対防御で防ぎきる。
「不味いですよ。私やアリサの絶対防御には限りがあります」
「雪姫、どうするんだよ?このままじゃやられちゃうぜ」
「うん。いつまでも魔力が持たないよね」
「にゃーーーーーん」
いつまでも守ってはいられない。
「子守歌なんか聞かせてやるか!力でねじ伏せてやる!アブソリュートだ!」
私の体から冷気が噴出した。
「皆さん、下がってください」
リアちゃんの言葉で、ソーマ達は後ろに下がる。
「雪姫、梅で十分です。物理限界攻撃なら倒せるはずです」
「うん。梅で行く!アブソリュートスノー!梅だぁぁ!」
体を駆け巡る魔力を一気に放出。
ヒドラは攻撃態勢のまま凍り付いた。
「ギム!止め!」
「おう!」
ギムは孫の手を振り上げ一撃。私の凍らせたヒドラを砕く。
ってお前、伐採に必殺技で、ヒドラには通常攻撃かよ?なんか違うんじゃね?
「退避です!」
リアちゃんが叫んだ。
アブソリュートの氷は、ヒドラだけでなく部屋をも凍らせる。
凍った天井は重みに耐えきれず崩壊を始める。
「絶対防御!絶対防御!」「絶対防御です!」
ミサキさんとアリサちゃんの絶対防御で崩れ落ちる遺跡から、何とか逃げ出してきた。
「あーあ。お宝は拝めずかよ」
「うん。あんなのが守って居たら、きっと凄いお宝が有ったよね」
「残念ですね」
なんか冷たい視線を感じる。
「確か王宮は、穴で壊れたのは、上2フロアだけでしたね」
うっ・・・・。
「凍らせたロプロスが落ちてきたから、全倒壊でしたよね?」
うげ・・・・。
「氷の魔女と呼ばれるのも分かりますね」
「にゃーーーーー」
だって仕方ないよ。他に倒す方法がないんだから。
「連撃光速剣で倒せたな」
なら使えよ!!
なんか冷たい視線が痛い・・・リアちゃんがヨチヨチと、頭をなでてくれた。
「でもさ、あのヒドラを封印したのはルナさんだよね。と言うことは、歌も上手いと言う事だね」
テレサの歌が負けるとは思えないが、相手は神の使いだ。
「雪姫、テレサが負けるとでも思っているのですか?」
「無いとは思うけど、ルナさんは相当歌が上手いはずだ。油断はできないかも」
私の言葉にミサキさんは呆れる。
「馬鹿ですか?上手いとか下手の戦いではありませんよ。要は票数です。国民による票数が取れれば勝ちなんですよ」
あっ・・そうか。
テレサのファンなら、上手い下手に関わらずテレサに入れる。
そしてテレサは魔人族も抑えているから、過半数は確実。楽勝だ。
「スノーで出る貴方に負けはありません。テレサとマリア、そして飛鳥は絶対的な人気者です」
スノーで出る私なんだよね?私ではないんだよね?
「さぁ、帰りましょう。帰ってお神酒でも飲むとしましょう」
と言うミサキさんだが、私は少し用事を思い出した。先にリアちゃん達には帰ってもらう。
ーーーパルムチームーーー
「なんだ、この振動は?」
「地震?私、地震はだめよ」
セシルがパルムにしがみつく。
「向こうで砂煙が上がってるよ」
遠く砂煙が立ち上がるのを見たアリッサが指をさす。
「あっ!」
パルムが捕まえていた『スズメバチ族』が、揺れた隙を見て逃げてゆく。
「チッ!また逃げられたか」
「ほんと変な世界だわ。攻撃的な虫型人間しかいないし。ここってラムタ世界なの?」
「変だよね。攻撃性は高いのに、柊さんの写真を見せると、みんな逃げていくんだよね」
幾つかの部族に攻撃され撃退するも、捉えた昆虫族に雪姫の写真を見せると、昆虫族は一様に怯え逃げだす。
情報が得られないまま、パルムたちは昆虫域を彷徨っていた。




