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8話 チートと土下座

「知らない天井だ」


 仰向けに気絶している男の口に『辰砂』をドボドボと流し込むと男は異世界転生した主人公みたいなことを言いながら目を覚ました。


「おはようございます。早速ですが、痛いとことかありませんか?」


 男が『辰砂』を口内に流し込まれたにもかかわらず特に咳き込むようなことも無く起き上がる様子に私は疑問を感じながら言った。

 私の攻撃を受け直ぐには起きてこられるとは、『辰砂』に気付け効能があるのかはたまたこの男の持つ回復力か……調べることが増えたな。


「はぁ? 全身が痛いに決まって……痛くねえ」


「良かったです。薬が効きましたかね」


 私は辰砂が入っていた竹筒を傾けながら言った。

 逆さまにした竹筒からはポタポタと辰砂の雫がこぼれる。

 竹筒に入っていた辰砂はすべて使ってしまった。

 再び辰砂を得るためには拠点に帰るか水が必要だ。

 回復チートが無いとなると、今後の行動は少し慎重にならなければいけないな。

 今の話から分かる通り私が仙人から貰ったチートに収納系の能力は無い。

 まあ始めは入れた物の時間が止まる無限収納を始めは所望したが、無限も入れられると地球どころか宇宙が壊れると言われ、入れた物の時間が止まると言う事は収納の中の時間も停止していないといけないのでそもそも物が入らないだろうと言われ、さらに、生きている者は入らず死んでいる者や無機物しかは入れられないと言うよくある設定も殺した猪や鹿の腸内菌や寄生虫はしばらくは生きているのでそれはどうなるんだと言う仙人からの小言及びツッコミにより異世界転生チートの一つ無限収納は却下されている……まあ、生きてる者も入れれるようにしてくれと多少交渉はしたのだがそれが出来ると生きてる者を収納に入れる。崖や塔など高低差があるところに移動する。入れた相手を収納から出す。相手は崖などから落ち死ぬ。と言う戦いがへったくれも無い物になるからと却下された。

 ついでに、言語チートは言葉は生き物だ。その全てを網羅するのはわしにすら不可能だと言われ却下され、鑑定は宝くじや賭け事に使われそれで得た金銭を抱えて引きこもられても困ると言われ、そもそもどれくらいの情報が欲しいんだ場合によっては情報の波に飲まれて現実に帰ってこれなくなるぞと脅され辞退している。

 そんなこんなで私は異世界転生3大チートセットを持っていない。

 ……欲しかったけどね。


「……!? 見える。見えるぞ」


「敵が?」


 そして、辰砂の補充をどうするか考えていると、痛みの無い体に顔を傾けしばらく黙っていた男が声を上げた。

 なんだ? ニュータイプにでも目覚めたか?


「目だ。両目が見える」


「ああ、そっちですか。指はどうです?」


「指? ……がある」


「ええ、治しましたから。どうですか?」


「動く、夢みたいだ」


 男は辰砂の力で生えた? 指をしきりに動かしながら言った。


「問題なさそうですね。それじゃあ私はこれで……帰ろっかな」


「待ってくれ!! ここにいる俺の仲間も治してやってくれないか」


 人体実験が成功し最早牢にいる必要が無くなりどう脱獄しようか考えていた私に男が言った。


「囚人達もですか? 申し訳ないですが今手持ちの薬が無いんです」


「分かった。なら後で良い。だが、もう一つ頼みがある」


「まだあるんですか?」


 怪訝な目をしながら私が言う。回復チート、やはり人に見せるべきでは無かったか? いや、でも多分困ってる人がいて助ける方法があったらきっとこの人じゃなくても助けてたんだろうなと思うと、始めに図々しいしい人に当たってよかったのかな。私はそう思い取り合えず話だけでも聞こうと男に顔を向けた。


「俺の、俺たちの……オヤジを助けてくれ」


「親父?」


「ああ、義理だがな。腕のいい鍛冶屋だったんだ。でも俺たちを育てるために無理をしてな、両目を失明したんだ。頼む!! オヤジの目を治してやってくれないか」


 男は私に詰め寄り見えるようになったであろう両目をカッと見開き言う。

 ここで土下座の一つでもしてくれれば私もしょうがないと頷くのかもしれないが残念ながらそんな気配はない。

 と言うのも、後漢時代にはまだ土下座の文化が無い。いや、土下座自体の文化は紀元前1000年くらいからあるのだがそれは先祖の慰問や寺院などで行われる行為でお願いをする作法と言う意味は無かった。ついでに後漢時代の土下座は現代日本で言うところの二礼二拍手一礼のようなもので生きてる人に対してやった場合何してんだコイツと思われる様な行動だ。もし後漢に時間旅行なんかが出来るようになったら気を付けよう。

 土下座が懇願の意味の最上所作になるのはは今から数えて300年ぐらい後の宋 (南朝)の時代から行われる作法で今の時代だと今私の目を見て懇願している男がしている行動がそのまま懇願の最上位作法だ。

 逆に相手の目線から視線を逸らす土下座やお辞儀はいきなりそっぽを向くような無礼な行動と思われていた。

 なので男の行動は正しくその正しさには報いなければならない。

 それに、助ける相手が元鍛冶屋と言うのが渡りに船だ。丁度矢や槍が欲しかったし、呂布と言ったらやはり方天戟だ。それが作れるかもしれないと思えば安いものだった。


「分かりました。後ほどお会いしましょう」


 まさか鍛冶師との縁が出来るとは、私は内心の喜色を悟られぬようそっけなく言った。

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