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7話 牢と医者

「入れ」


「はい」


 私はロンさんに引きつられ、留置所にたどり着き、私はロンさんから引き継がれた別の衛兵から簡単な調書を取られた後、石造りの牢にぶち込まれた。


「相部屋なんですね」


「当たり前だろ」


 6畳ほどの牢には既に幅広い年齢層の10人ほどのが男たちが所狭しと寝転がっていた。


「多くないですか」


「盗賊団の隠れ家を囲んでな、一斉検挙したんだ。狭くなっちまったが、我慢しろ」


「はあ、怪我してる人もいますが」


「逃げるばかりの奴もいれば攻撃しようとして来る奴もいる。こっちだって怪我人が出てるんだ。罪人の肩を持つのか」


 衛兵さんがそう言い私を睨む。


「いえ、ごめんなさい」


 私はそれに対し衛兵さんよりも高い身長を身をかがめながら謝罪した。


「ふん。明日は炭鉱で一日働いたら釈放だ。せいぜい早く寝て明日に備えるんだな」


 そう言うと衛兵さんは牢に鍵をかけ出て言った。

 そして、牢に残された私は無言で牢の中を見渡した。

 寝具は無く、皆地面に寝転がっている。トイレは桶が一つ、尻を拭く物は棒が一本……そこまで共有するトイレは初めてだ。村では個別の縄を持っていた事を考えると相当不衛生だ。

 窓は一つ、日光を取り込むという目的ではなく換気の為だろうA4サイズほどの穴が一つある。しかし、室内はかび臭く高い湿度と便の臭いが合わさり下水道に居るかのような感覚さえしてくる。

 総合評価としては……。


「息をするのも気持ち悪い」


 一刻も早くここを出たい。こんな所、居るだけで病気にかかりそうだ。


「すいませ~ん」


 私はそんな思いを抱きながら近くで呻き寝転がっている体の一番大きい男に声をかけた。


「うぐ、話しかけんな。殺すぞ」


 男は横向きの背を丸めた体勢から背を伸ばし仰向けになり私に目を合わせると言った。


「いや、大丈夫ですか?」


 呼吸が荒くかつ咳き込んでいたので声をかけたのだが、余計なおせっかいだっただろうか。


「大丈夫に見えんのか? まぬけ」


 男が息を切らしながら言う。鼻の下や口の周りが血で汚れ私から見て左の目が無く欠損している右手の人差し指と親指は火で焼いて止血したのか火傷を負っている。年端ははロンさんと同じくらいの30手前ほど、身長は私と肩を並べられるほど大きく170センチ、尺で言うところの7尺強ほど、体はガッシリとしていて肌は赤銅色でパッと見た感じ漢人では無い様な気がする。髪は短く目は髪と同じ黒色。着ている服はボロボロで山で会えば山賊に海で会えば海賊に見える様な男だった。


「大丈夫に見えないので……あの、治しましょうか?」


 私はこの地べたにうずくまり唸り声をあげている男たちを見て良いチャンスだと思った。

 私が感じたチャンス。それは私が作れるチートアイテム『辰砂』の効能を試すと言うものだ。牢にいる10人ほどの男たちは皆一様に切り傷や骨折と言う負傷をしており『辰砂』の効果を試すのに丁度いいと思ったわけだ。

 それに万が一効果が表れず死んだとしても、相手は盗賊団だ。心も痛まない……と思う。まあ、悪人治すのは倫理的にどうだとか言う人もいるかもしれないが、彼らにも事情があったのだろう。

 それに、治ってもし襲いかかってきても、また同じ怪我を負わせば証拠は残らないし、ぶっつけ本番で一般人を治すよりは良いだろうと考えた訳だ。


「何? 貴様、医者か」


 そう言うと男は私を睨んできた。


「まあ、はい」


 あれ? 私なんか不味った? この頃睨まれることが多い気がする……まあ後漢なんてそんな時代さ。バイクの代わりに馬でヒャッハーする時代だし、考えてもしょうがない。


「そうか……おい!! 野郎ども!! 医者だ!! 殺せ!!」


 男は口から血を吐いているにもかかわらずそう叫んだ。牢の地面に呻きながら倒れていた男たちが一斉に立ち上がり私に襲いかかってきた。


「なんで!?」


――――

―――


「つ、つええ」


 リーダー格であろう私が初めに声をかけた男がゆっくりと片膝をつきそのまま地面に倒れた。

 私は、どこに隠し持っていたのか刃物を取り出し襲いかかってきた10人ほどの男たちを倒した。

 幾ら武装し数が多かったとしてもけが人相手に後れを取る呂布ではない。男たちの鎮圧は容易に成し遂げられた。


「……医者ってやっぱ人気ないんだな」


 医者、それは人を生かし救うエキスパート。人によっては10年以上の学びのすえなり、数少ない先生とよばれる職業で、なれれば勝ち組人生を約束されるエリート集団だ。

 ……が、それは近代や現代と言われる時代の話で古代中国である後漢などの時代には免許制度など無く他の時代でも床屋や死刑執行人などが副業で行っていた事などが有名で、その医者を名乗る多くがやぶであった。

 お陰で後漢のこの時代も医者の地位は低くどれくらい低いかと言うと21世紀の日本で言うと占い師ぐらいに胡散臭い目で見られた。

 逆に後漢時代の占い師は現代日本の町医者位社会的地位があり、さらによく当たる占い師になると大病院の医院長位の社会的地位や信用があったと言うのだから驚きだ。

 まあ、免許制度の無い時代の医者は薬と称してワニのフンを食べさしたり治療と称して頭蓋骨に穴を開けたり歯の治療と言って歯を抜いた末失血多量で患者を死なせたりするのだからそら信用されない。

 私に襲いかかってきた男たちも身近な人を医者に殺されたり薬と言ってお金を騙し取られたりしていたのだろう。そうなると彼らが私に襲いかかってきたのも頷ける。


「でもな~」


 医者って言うしかないしな。私は『辰砂』の入った竹筒を傾け倒れた男にジョボジョボとかけながら呟くのだった。

……物語が進まない。


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