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1話 転生

一人騒がしい男が中国に誕生。

 チートの時間だぁ。と、言う事で早速、歴史物やファンタジー物の定番チートの一つ黒色火薬を作ろうと思う。その為に必要なものは硝石、硫黄、木炭だ。やはりネックは硝石だろう。異世界や過去にとんだ同志たちも硝石を作るために多大な労力をはらっていた。ならばまずそこからだろう。

 と言う事で初めに硝石作りからやろうと思う。まずは糞尿を用意しそこにヨモギなどを乾燥させた干し草を入れ? 4、5年おけば完成するそうだ。よし、早速作ってみよう。


「すいませ~ん」


「はい、何の御用でしょう」


「硝石ください」


「どれ程でしょう」


「100銭で買えるだけください」


「分かりました。3斤ほどになりますがよろしいですか」


「大丈夫です。ありがとうございます」


 私は生前コンビニなどでしたように店員に感謝の言葉を伝え店を出た。

 硝石ゲットである。え? 作らないのかだって? 馬鹿言うな。こちとらダッ〇ュ村じゃないんじゃ。誰が好き好んで糞尿にまみれてわずかな量の硝石を得ようと言うんだ。買えるものは買う当たり前だろう?

 と言っても硝石が硝石と言う名前や発音で売られているわけではなかったので、探すのには苦労した。そして何より、この時代硝石の流通量は少なかった。主に漢方としてやハムやソーセージを作る材料に使われるぐらいのようだ。だから、あまり沢山は作れない。それでも、これで約4斤の黒色火薬が出来た。その出来た黒色火薬の一部ををゼラチンと混ぜ、紙に包んで火を点ける。


「わぁ~、線香花火」


 綺麗。


「……って、なんでやねん!!」


 私はしばらく線香花火の飛び散る火花を眺めた後、大声と共に思いっ切り線香花火を地面に叩きつけた。

 はぁはぁ……はぁ、何やってるんだろう。つま先で地面に叩きつけた線香花火の火を消してから、私は空を眺めた。

 そこにはあの日と同じ雲一つない青空が広がっていた。





















「りょ、りょりょ、呂布だ~~~~!!」


 私の三国志を題材としたゲームのモブ兵士が言いそうなセリフの叫びは、先生や先生の周りに集まっている子供たちを怪訝な顔にさせるだけで、青空に消えていった。


 気付いたら赤ん坊に生まれ変わっていた。

 動かせない手足や明かない目に初めは戸惑い、パニックになり大声で叫んだりもした。

 しかし、程なくして赤ん坊に生まれ変わったことに気づくとその混乱も収まっていった。

 なぜなら、私はそういった小説やアニメを見たことがあった為だ。

 すぐに私の頭に輪廻転生、そして『異世界転生』の文字が浮かんだ。

 よし、そうと分かれば早速どこかのギルドに所属してバカな理由で追放され真の力が覚醒しもう遅いと私を捨てた連中に言ってやろう。もしくはどっかの誰かと婚約して婚約破棄された後そのどっかの誰かが没落していく様を人づてに聞いてざまぁと言ってやろう。

 え? 元の世界に帰ろうとか考えないのかって? 馬鹿野郎そんなのはラノベ主人公にやらせておけ、なろう主人公はそんなこと考えない。え? 私なろう主人公だよね? ストレスフリーなストーリーに山の谷もないなろう主人公ですよね? チートがあって何にもして無いのにハーレムを築いてフツーの事してすごいと言われあれ? また自分やっちゃいました? って言えるなろう主人公だよね?

 よし、分からないなら確認だ。


(ステータス、オープン)


 異世界転生と言えばこれだ。これでステータスがブォンと、もしくはシュビンと……あれ?


(鑑定、アイテムボックス、スキルツリー、クエストボード、マップ、ナビゲート、ショップ、メールボックス、ログアウト、ヒール、ファイア、ウォータ、サンダー……酸だー)


 結果うんともすんとも言わなかった。魔法がないのか? 異世界じゃないのか? それとも詠唱が必要なのか? そんなことを考えながら私は辺りを見渡した。

 そして、分かった事は、周りの人が使っている言語がどことなく中国語っぽいと言う事と、その中国語っぽい言語が翻訳されず耳に入っていると言う事だった。え? こういう異世界物だと自動翻訳とかあるんじゃないの? 魔法無いの? ならここ地球? 転生特典は? 言葉、一から覚えなきゃダメなの?

 そんなことを考えていた翌朝、母親が死んだ。

 産後の肥立ちが悪く死んでしまったのだろうか。母親の葬式をロクに見えない目で見ながら、私はそんなことを思い、少し罪悪感を感じていた。出産はどの時代でも命懸けだ。しかし、生むのが前世の記憶を持つ私でなければ、もし普通の赤子だったなら、バタフライエフェクト的なやつで、母親は死なずにすんだのではないか。そんなことを考えなていた。そして、同時に、冷たくなった母親を見て、身勝手ながらも本当に我がままだと自覚しながらも、死にたくない。そう強く思ってしまったのだった。

 そんなこんなで、転生早々に母親が死んだわけだが、なら父親はどこにいるのかと言われると、見た事が無いと答えるしかない。私が生まれる前に死んだのか、どこかに出稼ぎに出ているのか、よっぽど偉い人でなかなか会えないのか、それも分からない。

 もう父親が死んでいるのなら私の第二の人生は随分ハードモードだ。普通、貴族や王族の次男か三男に生まれて、魔法の才能があって、知識チートが出来て、俺tueee俺sugeeeがテンプレじゃないのか? 中国の平民じゃあ何も出来んぞ。

 そんなことを悶々と考えているうちに、1年がたった。

 この1年で分かった事は、やはり魔法はないと言う事だった。私が見ている限り皆火を一生懸命におこし水瓶で水を運んでいた。かくいう私は老夫婦に引き取られ家畜の乳を飲んですくすくと成長していた。

 蛇口もなくコンロもない生活に私は嫌な予感を感じていた。とても21世紀の生活ではない。ならば、中国四千年歴史の中のどこかに生まれたことになるとは思うが、さっぱり見当がつかない、どうか乱世ではなく治世でありますように、そう思いつつ私は昼の惰眠をむさぼるのだった。


 あれから更に歳月が経ち、私は5才になっていた。

 水を川から運んだり、火の番をしたり、家畜の世話をしたり、脱穀の手伝いをするのが今の私の日課であり仕事だ。千歯扱きも無く脱穀する様子に、やっと知識チートの兆しを見た私は、それをどう伝えようか思案していたある日、母親代わりの老婆が私に言った


「リョウブウ、水を運び終わったら先生の所に行きなさい」


 リョウブウとは私の名前だ。リョウブウである。正直、中国史どころか世界史や日本史にも見た記憶のない名前だ。多分ガチもののモブなのだろう。私は誰にも知られることなく死んでしまうモブに憑依か転生をしてしまったようだ。

 まあ、それならそれで気軽と言うものだ。これで曹操とか劉備とかチンギスハーンと言う名前ならプレッシャーで血尿になっていたこと請け合いである。

 モブにはモブの生き方がある。そう考えながら、指示通り、先生の家にやってきた。

 先生の家の周りには、すでに何人かの子供が集まっていた。

 そして、先生が家、と言っても布で出来たテントのような物だが、から出てきて言った。そろそろお前たちに文字を教えよう。そしてその勉学の第一歩としてまずは自分の名前を書いてみようというのだ。

 私や私の周りの子供たちは目を輝かせ声を上げた。勉強がこんなに楽しみなのは、やはり普段は水汲みや家畜の世話などをやっているせいだろう。一時でもその重労働から解放されるのだから子供たちが喜ぶのは当たり前だ。

 そして、先生が皆の名前を木の棒で地面に書いていった。そこから、ついに私の名前が地面に書かれたのだが、私は腕を組んで頭を左に30度傾けることになった。

 地面に書かれた文字は『呂布』だった。

 『呂布』である。それは三国志で有名な、と言うか、三国志以外では聞いた事が無い名前だ。その圧倒的武力から数々の裏切りを行い、知略によって敗北し処刑された男。

 私はあの呂布に生まれ変わったのだろうか。だとしたらならば私の人生はいよいよハードモード、クソゲー一歩手前だ。呂布と同じことなどできそうにないし、したくもない。いや、待て。まだ希望はある。そこで私は呂布でない可能性にかけ先生にあざなを書いてもらうことにした。

 先生が字を書いていく途中、私の顔は45度に傾き60度に傾き、そしてついに90度近くまで傾いた。

 先生が書いた私の字は『奉先』だった。

 うん。あれだ。これは紛れもない。


「りょ、りょりょ、呂布だ~~~~!!」


 私は呂布に転生したらしかった。

ここまでしか書いてないので連載は絶望的です。


硝石の値段は安土桃山時代、奴隷と硝石一樽が交換されていたという話から逆算しました。

もし詳細な硝石の値段が書かれているサイトや書籍をご存じの方がおられましたらどうか教えてください。

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― 新着の感想 ―
[一言] 張角じゃないですかね。
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