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弟子一号~天真爛漫魔法少女の過去~

「おっさん。これで俺の魔法が上だと認めるだろ?」


「……ぬぐう……悔しいが認めざるを得ないようだな……しかし、神との契約を破棄して魔法を改めて教えるなど、それはさすがにわしとしては認められぬのだが……」


「なら、俺の指導を受けるのは希望者だけでいいぞ? 俺も無理に教えようとは思わない。確かに、契約なしで魔法を使えるようになるのは大変だからな。これまでの契約ありの魔法を使う生徒にも、それなりに技術が上がるように指導する」


 俺たちの話を聞いていたサキが、勢いよく挙手した。


「はいはーい! あたし、ナサトセンセーに魔法を教えてもらいたいでーす!」


 自己主張するように、サキは手を何度も挙げていた。

 そんなに、俺に教えを乞いたいらしい。

 センセー呼ばわりされるのは、なんかこそばゆいな。


「おお、いいぞ。おまえは魔力量がすごいから上限のある契約魔法じゃ本当にもったいないって思ってたからな。世界を滅ぼせるレベルまで鍛えてやる」


「あはは、そこまですごくなくていいけど……でも、魔物から国を守れるように、あたしがんばるよっ!」


 本当に素直で真っ直ぐな奴だ。

 これなら教えがいがある。


「ちょっと、サキ、本気ですの!? もう少し考えてからでも!」


 ミナミが止めるが、サキの決意は固いようだ。


「あのすごい魔法見たら即決だよ! それに、あたし、あのときに回復魔法を使ってもらわなかったら命危なかったと思うし! それにナサトって、いい人っぽいし!」


 俺はどちらかというと目つきが悪くて、いい人っぽいオーラはないのだが。

 まぁ、いいだろう。ともかく、教わりたい奴が0ということはないようだ。

 さすがにそれは傷つく。


「ほかに希望者はいないかー? まぁ、今すぐに決めなくてもいいぞ」


 やはり、本人のやる気の問題は大きい。

 無理やり教えても、身につかない。

 ちょっと待ってみるが、ほかに希望者はいなかった。


「それじゃ、おまえが俺の弟子一号だな」

「やったー! 弟子一号~!」


 くるっと回転して、ぴょんっと跳びはねる。

 無駄に元気でテンションが高い。魔法使いらしからぬ奴だ。


「ま、いいや。じゃ、さっそくやるか。契約解除して、あとはひたすら魔法の鍛練だ」

「うんっ! それじゃ、解除しちゃう!」


 サキは制服の胸元に手を突っこんで、ペンダントを取り出した。

 契約するときは、宝石を使うのだ。

 まぁ、大した価値のない宝石だし、契約できる神もたいしたものじゃないんだが。


「えっと、えっと……契約解除の仕方わかんないんだけど!」

「そうか。まぁ、普通は学園で契約して魔法使いになったら、わざわざ自分から解除しないもんなぁ」


 ちなみに、俺は最初の人生で学園を中退したときに、強制的に学園によって契約を破棄された。 

 ……ま、そのおかげで独学で最強魔法を編み出したのだから、運命はわからんもんだ。


「じゃ、俺が解除してやろう。本当にいいんだな?」

「うん、もちろんだよ! なんか契約って窮屈だなって思ってたし……あたし、実は学園に入る前に魔法使えてたんだっ。でも、学園に入って契約してから、逆に使いにくくなっちゃって」


 それは、つまり――俺と同じく我流で魔法を使えるようになったということだ。

 しかも、学園に入る前にすでに使えていたとなると、すごい才能だ。


 もともとの魔力量もすごい上に技術も勝手に身につけていたとなると、かなり期待できる。

 こうなると、学園に入ったせいで、逆に魔法を使うのが下手になった可能性が高い。


「よし、それじゃ強制解除の魔法を使うぞ」


 本来は長ったらしい儀式をした上で、神との契約を解除するのが普通だ。

 だが、俺ほどの魔力だと楽勝。

 俺はサキの頭に軽く手を置く。そして、サクッと契約の鎖を断ち切った。


「ほい、解除完了」

「えっ!? もう終わりなの!?」

「ああ。これぐらい簡単だ。ま、神ごとき圧倒できないようじゃ、世界を救うことなんてできないしな」


 そもそも、神の悪戯によって世界は滅びの危機に陥ったりするのだ。

 それに抗えないようでは、話にならない。


「そんな、神との契約がこうも容易く!? あなたいったいどれだけ魔力がすごいんですの!?」


 ミナミが、あらためて驚きの声を上げる。


「俺の魔力か? 容易く世界を滅ぼせるくらいだ。そうじゃないと、世界を救えないだろ? ちなみに、これまでに世界を救った回数は百回だ」

「ひゃっ、百回……」


 もはや、職業は『魔導騎士』というよりも『救世主』といったほうがいいかもしれない。

 職業というより趣味と言ったほうが正確かもしれないが。


「ナサト、やっぱりすごいんだね! えへへっ、あたしも世界を救えるようになりたいなぁ! 悪い魔物を倒して困っている人を助けて、ずっと平和を守り続けるの!」


「なかなか真っ直ぐな志を持っているようだな。なんでそう思うか訊いていいか?」

「うん、あたしの故郷って魔物によって滅ぼされちゃったんだよね。それで、住んでる人たちも半分ぐらい犠牲になっちゃって…………あたしの、お父さんも、お母さんも……」

 

 天真爛漫そのものだったサキの表情が、徐々に(かげ)を帯びていく。

 そんな過去があったとは。


「すまない。無遠慮に訊いてしまって」

「ううん、いいの。ナサトには知ってほしいなって思ったから……」


 世界が滅びるということは、世界中でこういう悲劇が起きるということでもある。

 ……これは、さすがに俺の配慮不足と言わざるを得ない。


「絶対に強くしてやるから、安心しろ。お前を救世主レベルの魔法使いにしてやる。俺が転生してほかの世界を救っている間にこっちの世界で魔王が復活しても大丈夫なようにな」


 過去に、世界を救っている間に別の世界でも魔王が復活して、対応が遅れてしまったことがあった。珍しく、骨のある魔王軍だったのだ。

 だから、英雄級の魔法使いを育成することに意味はある。俺が無双する楽しみは減るが。


「うん、あたし世界を救えるようにがんばるよ!」

「おう、その意気だ。それじゃ、鍛練の前に潜在能力を最大まで引き上げるぞ。俺の両手を握ってくれ」






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