ぶっつけ本番だけど、あたしは勝負強いんだから!
★ ☆ ★
「センセー!?」
結界の外でセンセーとダーノ側の講師が戦い始めたのを見て、あたしは驚いた。
ここからだと話は聞こえないけど、センセーがこれまで見たことがないほど怒っていることはわかった。
と、そちらに気をとられた隙に――ダーノ側から、攻撃魔法が飛んでくる!
「サキ! よそ見をしていたらやられますわよ!」
それを間一髪、ミナミちゃんがバリアを張って防いでくれる。
「わっとと!? ありがとう、ミナミちゃん!」
危なかった。ミナミちゃんがいなかったら、大ダメージをくらうところだった。
とにかく、まずは目の前の敵をどうにかしないと。
「もうっ、ぼやぼやしてられない! さっさとやっつけなきゃ!」
あんな状態のセンセーを、ひとりにしておけない。
だから、あたしはこれまでで最も高い魔力を全身に漲らせた。
「サキ、なにをするつもりですの!?」
「ごめん! これからあたし無防備になるから、守って! うまくいけば、これで決まるから!」
あたしはミナミちゃんにそう言うと、魔力を高め始めた。
無限に相手が立ち上がってくるっていうのなら――ずっと状態異常が続くようにすればいい!
三十人をずっと状態異常にし続けるって、すごい魔力を使うけど、やるしかない!
このまま無駄に魔力を使い続けたら、ジリ貧だし!
「わかりましたわ、信じますわよ、サキ! 防御魔法を全力でかけます!」
ミナミちゃんがあたしを守るように防御魔法を多重展開してくれた。
さすがミナミちゃん! これなら、一定時間あたしは無敵も同然! 攻撃に集中できる!
「これで決めるよ! ぶっつけ本番だけど、あたしは勝負強いんだから!」
あたしは魔力を振りしぼって、一挙に三十個の魔法球を作り出す。
属性は、ステータス異常魔法のうち高難易度の『石化』。
ステータス異常系の魔法は苦手だけど、そうも言ってられない。
時間が経てばたつほど、こっちの魔力も消費して成功率が下がる。
なら、いま、やるしかないんだから!
「いっけぇえええーーーーーーーーー!」
三十個の手のひらサイズの魔力球があたしの手から放たれて、飛んでいく。
魔力球をコントロールして全員を追尾するのは大変だけど、絶対にここで決める!
センセーだって数百のソード・アローをコントロールできるんだから、あたしだって三十個ぐらい操れるはず!
「そこそこ、そこぉーーー!」
動いてるダーノ側の生徒たち魔力球をあてることは大変だけど、あたしはひとつずつ正確にヒットさせていく。その間にも、ダーノ側はあたしに向けて魔力球を集中して放ってきた。
相手側の魔力攻撃はミナミちゃんの張ってくれたバリアに向けて、いくつも着弾していく。
「サキ、大丈夫ですわ! 守りは任せなさい!」
ミナミちゃんはさらに防御魔法を補強するように展開してくれた。
おかげで、こちらは魔力球のコントロールに集中することができる!
「こんなところでグズグズしてられないの! 邪魔しないで! 早くセンセーを追いかけなきゃいけないんだから!」
全部の魔力球をコントロールするのは頭の中がこんがらがりそうだったけど、こんなところでいつまでも時間をかけてられない!
(センセー、待っててね!)
極限まで集中力を高めた途端、相手の動きがスローに見え始めた。
そして、相手が次にどう動くかまでわかるかのよう。あたしも、少しはセンセーに近づけたかな。
「十一、十二……三、四、五!」
十五人、に魔力球ヒット。石化。
残り半分!
「絶対にこれで決めるんだからぁ!」
相手側も必死に回避するけど、あたしは魔力球を追尾するだけでなく先回りさせてヒットさせていく。
ついに二十を超えて、残り十。
こちらに向けて撃たれた魔法は、ぜんぶミナミちゃんが防ぎきってくれていた。
だが、相手は魔法では敵わないと思ったのだろう――こちらに向けて十人が向かってきた。
そして、懐から短剣を取り出した。
その狙いは――あたし――じゃなくて、ミナミちゃんだった。
「みんな、ミナミちゃんを守って! 魔法で弾幕!」
あたしは魔力球をコントロールしながら、みんなに指示を出した。
それに呼応して、魔力欠乏しながらも踏みとどまっていたみんながメチャクチャに魔法を放っていく。そのいくつかがヒットして、相手の攻勢が弱まる。
「みんなグッジョブ! あとは任せて!」
残り十個の石化魔力球をコントロールして、次々と相手にヒットさせていく。
最後の三人あたりは身体能力が高くて、なかなか捉えるのに苦労したけど――みんなの援護魔法もあって、どうにか成功した。
「はぁー……これで、全員だね。やったぁ!」
ステータス異常系の魔法なんてほとんど使ったことなかったけど、やってみればなんとかなるものなのかも。やっぱり、あたしは本番に強い!
「校長先生、これでわたくしたちの勝ちですわよね?」
ミナミちゃんが、結界の境界線に立っている校長先生に訊ねた。
「お、おう。そうだな。三十秒経っても全員が状態異常から回復しなかったので、クラギ学園側の勝ちだな。……まぁ、もう、それどころではないのだろうが……まさか、ダーノ側の引率教師が魔皇子だったとは……」
校長先生の視線は屋上のほうへ向けられている。
そこではセンセーとダーノ側の引率教師……ノワって言ったっけ?……が、ありえないような空中戦をしていた。
「って、魔皇子!? あの狐みたいな人、魔族の皇子だったの!? 早くセンセーに加勢しにいかなきゃ!」
そう思って一歩踏み出そうとしたけど――。
「た、大変でござる! 敵襲でござる!」
慌てた様子でカスカセンセーが、走ってきた。
カスカセンセーは、もしモンスターが攻めてきたときのために校門で警戒していたはずだ。




