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ナサトVSメサ~魔王軍四天王ダークエルフの魔弓~

「おお、すごい精度だな」


 地上から空中にいる標的に向けて射るだけでも難しいのに、心臓を的確に狙ってくるとは。


「だが、俺にはバリアが――」


 そこで、俺は気がついた。

 この矢は――魔法無効化エンチャント済。


 矢が接するとともに、障壁が弾け飛ぶ。

 貫通こそしなかったが、完全に俺のバリアが破られた。


「なっ!?」


 さらには、いつの間にか放った二本目の矢が迫ってきている。

 それをかろうじて、よけた。


「……ほう。これを避けるとは、魔力頼みというわけではないようだな」


 ダークエルフは俺を見据えながら、興味を持ったようにこちらに顔を向けた。


「なんだ、思わぬところで強い奴に出会えたな。そうだ。俺は魔導騎士だ! 魔法だけじゃないぜ? おまえも、ただのダークエルフって感じじゃないな!」


 適当に作ったバリアだったが、それでも簡単に打ち破られるものではない。

 それこそ、四天王とか魔王級ならわかるが。


「我は、魔王軍四天王が一角。ダークエルフのメサ。光栄にも人類粛清軍の先鋒を任されている」

「そうか、いきなり四天王か。どうりで率いている軍勢のレベルが違うと思ったぜ」


 有能な指揮官によって、この魔物たちも鍛えられているようだ。

 俺が生徒たちを鍛えているように、こいつも魔物たちを育成してきたのだろう。


「ふん、我自ら鍛練をつけた魔物たちだ。しかし、おまえを相手にしたら(いたずら)に被害が出るだけだな。ここは我が相手をしてやろう」


 メサが右手を引くと、なにもない空間から魔法矢が創り出されていた。

 なるほど。これなら、いくらでも矢が打てるというわけか。

 魔法が得意なダークエルフが矢を使うのは珍しいと思ったが、ある意味、合理的だ。


「我は魔法のみだけでなく肉体をも(たゆ)まず鍛えてきた。魔王軍四天王として、人類粛清を貫徹するためにな」


「そりゃ、ご苦労なこった。その努力をもっと別のところにしてほしいところだがな。でも、気に入ったぞ。俺も魔法だけでなく剣も磨いてきたからな!」


 こういう、あくなき戦闘求道者は俺の好みだ。

 残念ながら、思いっきり敵なんだが。


「ふん、おまえに気に入られたところで嬉しくもない! ゆくぞ!」


 メサは地を蹴って、駆け始めた。しかも、ジグザグに。

 そして、文字通り矢継ぎ早に魔法矢を放ってきた。


「おぉおおっ?」


 軌道がいちいちわかりにくいのに加えて、魔法矢の種類も雷・炎・氷・毒など変化させている。


 俺だって、種類の違う魔法を連発するのは少々骨が折れる。

 しかも、駆けながらとなると、さらに難易度が高いのだ。


「やるな! これまでに闘った奴らの中でも上位に入るぞ!」


 これなら下手な魔王より強い。

 過去100回魔王と戦ってきたが、30体ぐらいはメサより下だった。


「おまえに褒められても、嬉しくはない!」


 メサは怒りながら、さらに矢を連射してきた。

 俺は体捌きだけで全ての矢をかわしていく。


「このツンデレダークエルフめ。そのツンツンした態度をデレさせてみたいものだな! 俺のことをご主人様って呼ばせてやる。俺はエルフ愛好者だからな! 普通のエルフもダークエルフも大好きだ!」

「くっ! この痴れ者めが! おまえなんぞに好かれるなど不快だ!」


 どうやらかなりのツンデレらしい。というかダークエルフは総じてプライドが高い。

 メサは激怒しながら、右手に強烈な魔力を発生させ始めた。


「おっと、大技を出すのか?」

「その不愉快な面ごと、吹き飛ばしてくれる!」


 さっきまでよりも、魔法矢の生成に時間がかかっている。

 ある意味で隙だらけなのだが、ここで攻撃するほど野暮ではない。


「ジェントルマンな俺は、ちゃんと待ってやるぞ。思いっきり、俺に必殺技を放ってこい!」

「ええい! その減らず口、永遠に叩けないようにしてくれるわ!」


 さすがは戦闘に特化したダークエルフ。

 怒りの感情を魔力に変換して、より強力な魔法矢を創り出していった。


「おー、多重属性の魔法矢か!」


 多重属性とは、ひとつの武器にいくつもの魔法効果を付与する方法だ。

 この感じからすると、炎・雷・毒・重力の四種類といったところか。


「四つも属性を付与するなんて、さすがだな。いよっ、四天王! ダークエルフはダテじゃないな!」


「くっ、瞬時にこの魔法矢の特性を見抜くとはっ……なんなんだ、おまえは」


 メサは驚愕の表情を浮かべる。

 魔法のエリートであるダークエルフに驚かれると、悪い気はしない。


「俺は、そうだな……時を巡る旅人――いや、時を巡る救世主といったところかな? 世界を百回救ってきた英雄、名はナサトだ」


「わけのわからぬことをっ! ええいっ! ともかく、この魔法矢でおまえを屠る!」


 具現化した魔法矢を強弓に番える。

 黄金色に輝く瞳が――俺の姿を捉える。


「逃げられんぞ! いけぇ! 我の持てるすべてを注ぎこんだ矢で死ぬがいい!」


 そして、メサは矢を放つ瞬間に――さらなる魔法を付与していた。

 それは――「追尾」。


「もう回避も飽きてきたところだからな。叩き斬ってやるぜ!」


 俺は瞬時に魔剣を具現化。

 迫りくる魔法矢に向かって、斬撃を叩きこんだ。


「なっ――!?」


 真っ二つにしたのは矢だけではない。

 付与されていた魔法ごと、一刀両断した。

 相手の魔法を完全に打ち消す、『相殺』の魔法だ。


「バカなっ……! すべての属性を打ち消されただと!?」

「まあ、相殺魔法は難易度高い上に、消せても普通は一種類だもんな」


 だが――。


「俺は普通じゃないからな」


 俺は、存在自体がチート。

 そんな俺が使う魔法が、普通のわけがないのだ。


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