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後編

 結局話し合いと言えるのか、何一つ決まっていないようなものだ。一通り受け入れあったので、ベッド内でくっつきながら、先ほどの会話を改めて要約する。


 要するに、ミルカがヴァイオレットを大好きで結婚したいから、ナディアより自分が好かれているのだ言うアピールとして、あのあーんがあったと。

 それに対しても嫉妬していて話しているうちに不安になってしまったナディア、と言う部分は解消したけど、それはそれとして、はっきりとミルカに言い聞かせてほしいのが本音のようだ。


「言いにくいのはわかりますけど、叶わない夢を見させるのも可愛そうでしょう? いずれ、あの子もあの子だけの王子さまと出会うんですから、そのチャンスを殺さないよう、無駄な希望は早く消して置かないと」

「うーん、そう聞くと、むしろしばらくこのままの方がいいような。ミルカに王子様とか、20年は早いよ」


 そう聞けば確かに、ナディアの理屈もわからないでもない。厳しいようでも、早い段階でわからせたほうが、視野も世界も広がると言いたいのだろう。一理ある。が、さすがに五歳児にその理屈は早すぎる気がする。まだ両親が一番でいいのでは?

 実際、ヴァイオレットが大好きと言うことだけど、別にナディアのことだってミルカは好きだし、つい先日までナディアとミルカも普通にラブラブ親子だった。


「そんなこと言って、20年たってもヴァイオレットさんが一番だったらどうするんですか」

「さすがにないでしょ。ナディアだって、現実を見て、自分で私に会いに来てくれたんだしさ。そこまで心配しなくても、自分で現実を直視するまで待とうよ。まだあんなに小さいんだからさ」

「うーん。そう言われると、まぁ、私も昔は、現実を見ろとか散々言われてましたけど、親に言われて変わるものではないですけど」


 唇をとがらせていたナディアだけど、ヴァイオレットの言葉に少し考えるように人差し指をたててヴァイオレットの頬をぷにぷにしながらそう言った。さっきの仕返しか。


「でしょ? 自分で気付かないと、納得できないものだよ。なんでも教えてあげるっていうのも優しさだけどさ」

「ん……そう言われると、まるでヴァイオレットさんの提案が、厳しい教育のためみたいに聞こえますけど」

「どっちでも同じだよ」


 つついてくる指をつかんで、口づけ、ナディアに向きなおる。ベッドの上で向かい合って寝転がっている状態になって、顔をよせて額をぶつけ合う。


「ん。それはそうですけど……そ、そんなに、顔を近づけないでくださいよ」

「どうして?」

「どきどきしてきちゃいます」

「何年一緒にいるのさ。なれてよ、この変わらない顔に」

「無理ですよ。ヴァイオレットさん、素敵すぎて」


 言いながらナディアは、貌を寄せて唇をあわせて、ぺろりと唇をなめてきた。


「ん。いいの? そろそろ部屋に戻らなくて」

「いいんです。どうせミルカも知っちゃったんですから。これからは帰りません。今年で6歳で、じきに学校にも行くんですから。一人で寝たっていいくらいです」


 瞳に熱を込めてくるナディアに応えるように腰に手を回して体をくっつける。


「スパルタなお母さんだなぁ」

「スパルタじゃありません。もう下の子の面倒を見たって当たり前の年齢なんですから」

「そんなこと言って、ナディアはそんなことしてなかったでしょ」

「そ、それはまぁ。生まれなかったんだからしょうがないじゃないですか」

「はいはい。でもそうだね。そろそろ、二人目がいてもいいかもね。そうしたら、ミルカもしっかりするかもね」

「ヴァイオレットさん……はい。私もそう思います」









 こうしてミルカへの対応は、しばらく夢をみせたまま甘やかし、第二子で自立を促すと決まったところで、子供をつくることにした。

 それからしばらく、ミルカはヴァイオレットにあーんをお願いをしてきたけど、当たり前のようにそれに応えてあげるとナディアへの態度も以前に戻り、そして翌年無事に生まれた妹を可愛がり、しっかりお姉さんをしてくれた。


「ミルカお姉ちゃん、だよっ」

「ぃ、いーあおーあ」

「おしい! でも頑張った! 可愛い!」


 とよくよく可愛がってくれた。

 ちなみに当然のように二番目の子もエルフだったので、実際には妹ではないが、ヴァイオレットがナディアもミルカもみんな女の子扱いなので、この家では女の子として呼称している。


 そんなこんなで日々が過ぎること、20年後、ヴァイオレットとナディアは5人の子供に恵まれている。

 ミルカ25歳から、20歳、12歳の双子、5歳だ。全員がエルフの特徴を色濃くついで、耳の長い、可愛らしい容姿をしている。魔力も強く、将来有望な子たちばかりだ。


 毎日騒がしく、平穏には遠いが、幸福に満ち溢れた日常だ。昔、ナディアと出会うまではこんな未来は想像すらしていなかった。

 一人寂しく過ごす老後は寂しく、せめて誰かに看取ってもらいたいと、人を雇おうとすら思っていた程だ。それが今はどうだろう。血のつながった愛おしい家族たちに囲まれ、頼まなくても誰かがいてくれる。まだまだ死ぬには早いと思うし、もっともっと生きたいと心から思える。


「ヴァイオレットさん!」


 と遠くへ意識を飛ばして現実逃避していると、大声で呼ばれて肩を強くつかんで揺さぶられた。否応なしに現実に引き戻される。


「は、はい!」

「いい加減にしてください! なにを受け入れているんですか!」

「ちょっとナディアやめてよ! ヴァイオレットさんが可哀想じゃない!」


 ミルカが癇癪を起した幼少期から、20年がたったのだ。25歳のミルカは、エルフ的にはまだ成人ではなく、見た目的にもまだ成人には幼い。

 しかし実際に時間は経過しているわけで、学校にも通わせ友達もいて世間が広がっているのだけど、何故かまだヴァイオレットと結婚したがっている。


 ついには今日、ヴァイオレットの誕生日に、プレゼントは私、と言い出した。そして今ヴァイオレットの膝の上に向かい合う形で乗っている。


「ミルカ」

「はい、なに? あ、もちろん私、ナディアと別れろ、なんていうつもりはないわ。昔とは違うんだから。仕方ないから、ナディアが亡くなるまで、二番目でいいわ」

「そういう制度ないから。おりなさい」


 随分成長して、まるでであった頃のナディアのような可愛らしい顔で、なんてことを言うのか。綺麗な思い出を汚さないでほしい。

 もちろん可愛いわが子なので、そんなことを言っていても、可愛いなぁと和んでしまいそうになるけど。


「やだ! 昔大きくなったら結婚してくれるって言ったじゃない!」

「そこまでは言ってないよね。それにまだ成人してないでしょ」

「丸耳族とエルフのハーフなんだから、成人年齢は30よりは早いはずよ。これでもだいぶ待ったんだから」

「丸耳族じゃないけど、それはともかく。結婚はしません。何故ならナディアを世界一愛しているから」

「ヴァイオレットさん……! ほら、わかったら早くおりなさい、ミルカ。今なら子供の冗談で済ませてあげるから」


 仕方ないから、20年越しのはっきり断ると言う選択肢を選んでみた。ナディアは素直にときめいてくれたようで笑顔になってからそう、優しい母親の顔で言うがミルカはぷいと顔をそむけた。


「降りないっ」

「ちょっと! いい加減にしてよ姉さん!」

「そうだよ!」

「ふざけないでよ!」

「ずるーい!」


 姉妹たちも、みんなでヴァイオレットの誕生日を祝うために同席しているので、当然一緒だ。なので驚いていたのから一転して、ナディアに加勢してくれだしたのだけど、いや、末っ子のカルラだけセリフがおかしい。


「私もヴァイオレットさんと結婚したいのに!」


 ほら、おかしい。続けられた言葉に、次女のレイカ、双子のシーラ、アーラも驚いた顔になって


「え、カルラも!?」

「え、何その言い方!」

「まさかレイカ姉まで!?」


 おかしい。何か、おかしなことになっているぞ? とヴァイオレットは人ごとのように胸中つぶやきながら、そっと背後のナディアを振り向いた。ナディアはとても長年連れ添った連れ合いにむけると思えないジト目をしていた。


「……ヴァイオレットさん。いったいどういう教育をしてきたんですか」

「いや、ナディアと話し合いながらしてきたでしょ」

「そうですけど、おかしいでしょ、全員がヴァイオレットさんと結婚しようとするとか! ミルカがあれだったから、レイカからはそんな気にならないよう教え込んだのに!」


 腹が立ってきたのか、そう怒られたけど、ナディアこそ何を教えているんですかね。そしてそれがむしろ逆効果だった可能性は?


「落ち着きなさい、いいかい、みんな。さっきも言ったけど、私はナディア以外と結婚する気はないよ。みんなのことは、実の子供としてもちろん心から愛しているけど、それとこれとは別問題だからね」

「でもほら、ナディアだっていつか年をとるじゃない?」

「私も年をとるんだよ」


 依然として膝から降りないミルカに当たり前のことを言い聞かせるが、何故かどや顔になった。可愛いけどどうした。


「ヴァイオレットさんは、私が生まれたときから変わってないし。それに、前に言ってたじゃない。決まった寿命はないって」

「それはそうだけど、もしそれで、ナディアが亡くなったら、なんて話をするなら、いくらミルカでも嫌いになるよ」


 そんなわけはないと思うけど、年のため念押ししておく。確かにヴァイオレットに決まった寿命はない。それは他には一人もいないただ一人の特異種、ホムンクルスだからだ。だからこそ、いつ死ぬかわからないし、もしかして、その特異性が子供にもなにかしら受け継がれている可能性もなくはない。

 今のところはまんまエルフだが、ないとは言えないので、ある程度大きくなればヴァイオレットの出生については説明している。

 だけどそれをいま、あえて口に出す必要はないだろう。


 ナディアがヴァイオレットより先に亡くなるか、ヴァイオレットが先に死ぬか。それは、誰にもわからないことだ。可能性として、ナディアが亡くなってしまうことだってあるはあるだろう。だけど、だからってそれを考えることはしたくない。

 ましてこんなくだらない話で、そんなことを口にするなんて、論外だ。


「……ごめんなさい」

「うん。いいよ。さあ、もういいでしょ。膝からおりなさい。可愛い長女からのプレゼントは、膝に乗って大きくなったら結婚する、と言われるという、可愛い仕草、と言うことにしておこう」

「ま、待って待って。一応ちゃんと、物も用意してるから。とってくる」


 おろしながら、元々が誕生日プレゼントがミルカ、と言う話だったのでそう慰めに言うと、ミルカは思いのほか素直に降りてそう言いながら自分の席に戻って荷物をとった。


「はい、これ! プレゼント」


 さっきまでのやり取りがなかったようにニッコリ笑顔でプレゼントを差し出してくるミルカ。その様子にヴァイオレットはナディアと、4人の姉妹もそれぞれで顔を見合わせて呆れて息をついた。


「わあ、ありがとう。何かなぁ」


 そして姉妹はそれぞれの席から自分たちもプレゼントを手に取り、ナディアはヴァイオレットの隣の席に改めて座った。

 それを横目に、ヴァイオレットも、ここまでのやり取りをなかったことにして受け取る。


「ヴァイオレットさん、お仕事でいっぱい文字書くから、使うかなって」

「ありがとう。いいペンだね。大事に使わせてもらうよ」


 立派な万年筆だ。ヴァイオレットも持っているメーカーのもので、インクのりもいいもので気に入っている。どうしても消耗品なので、いくらあってもこまるものではない。素直にうれしい。


「どういたしまして」

「ヴァイオレットさん、私のプレゼントも受け取って! ミルカ姉さんより心を込めてるから」

「私たちも!」

「受け取って!」

「うん。順番にね。ありがとう。どっちも嬉しいよ」


 そしてそれから後も、表面上は何もなかったように夕食会は終了した。

 だけど実際に、いまだにミルカが本気で、他の妹たちも表に出さなかっただけでヴァイオレットと結婚したがっていたのは明らかになったわけで、はっきりと断ったのであれであきらめてくれたならいいのだけど、そううまくいくだろうか。

 それになにより、ナディアの視線がいたい。


「……」

「あの、いい加減その目はやめようか」


 夜、ヴァイオレットの部屋に来てくれたのに、ナディアはヴァイオレットに何やら疑いの目を向けている。


「子供たちがなかったことにしたのに、いつまでむくれてるのさ」

「なかったことにって、実際あの子たちが本気でヴァイオレットさんを狙ってるのは変わらないじゃないですか」


 ベットに座らせたナディアの隣に座り、手をまわして腰を抱き寄せながら声をかけると、ナディアは顔を上げてヴァイオレットに寄りながらもそう文句を言う。苦笑しながら額をあわせる、


「狙ってるって。確かに驚いたし、ちょっと困るけど。でもまあまだ、言ってもミルカも未成年だし、今度こそちゃんと否定したでしょ?」

「そうですけど。諦めている感じしないです」

「今は諦めなくても、私の気持ちは変わらないんだから、いつかは諦めるよ」

「……でも、本当にいつか、もし、私が死んでしまったら……子供たちはダメですけど、他に好きな人ができたとして、そこまで縛るつもりはありませんからね」

「あのさぁ、ナディアまで何言ってるの? 縁起でもない。だいたい、年下のくせに」

「それはヴァイオレットさんが、変わらないから。寿命がなくて、いつまでも生きてしまいそうな気がするからです」

「不老不死じゃあるまいし。まぁね、魔力が寿命に大きく関係しているのはあるから、実際に長いだろうけど、でもそれは、私の魔力を受けているナディアも同じでしょ」


 5人の子持ちにはとても見えない、丸耳族に換算して20代前半か、多めに見積もっても半ばにしか見えない。いかに長寿のエルフと言っても、55歳になると言う歳でこれは童顔の方だ。ヴァイオレットの影響がゼロではないだろう。実際本人も、以前にそんなことを言っていた。


「そ、それはまぁ。そうですけど。でも、平均より遅くても年はとってますから」

「どっちが先に死ぬかなんて、今から話してもしょうがないでしょ。それこそ、私が先に死んだらナディアは他の誰かと結婚しちゃう訳?」

「まさかっ。考えられません」


 おろしていた視線をあげたナディアのその眼力に、なんだかちょっと笑ってしまって額は離した。そしてそっとナディアの髪をなでる。

 ナディアは少し不満そうに眉をよせ、膝の上で握っていた両こぶしをあげて、ぽんとヴァイオレットの膝にのせるように当てて抗議する。そんな少女じみた仕草が似合わない大人の女性になっているはずなのに、どうしようもなく可愛くて愛おしい。

 きっと、この先何年たって、年をとって変わってしまって、お婆さんになったって、ナディアを愛さない日なんて絶対に来ないと、確信できる。


「悪いけど、私は死んだからってナディアを他の人に譲る気はないよ。せいぜい長生きするつもりだけど、先に死んでも、ナディアには一生私を思っていてほしい」

「ヴァイオレットさん……はい、私も、本当は、同じ気持ちです。さっきは、見栄をはりました」

「うん。素直でよろしい。大丈夫。一生思う自信はあるよ」


 だから瞳をうるませたナディアに自信をもってそう正面から伝えたのに、ナディアはまだ納得がいかないのか、その表情は晴れない。


「……ヴァイオレットさんはきっと、死ぬまで見た目がかわりませんけど、でも、私は……」

「またそういうことを言って。わからせてほしいから、わざと言ってる?」

「……ちょっとはそう思いますけど、でも、私だって、長老みたいになるんですよ」


 あれから長老とは一度会っただけだが、顔はいまも覚えている。威厳のある顔つきで、いかにも老練と言った有能そうな感じなのに、話すと人の良さがにじみ出ていて、感じのいい老い方だ。

 普通にいい例だろう。皺はできているけれど、シミがあるわけでもなく、普通にかなり美人なのだけど。あんなふうに年を取ったナディアとか、どう考えても女神級に美人だろう。


「全然ありだよ」

「……」


 あれ、何故そこでジト目?


「……ああ。いや、長老がありってことじゃないから。全く。どんなおばあちゃんになっても、愛してるよ。むしろナディアは、私の思いが離れることより、心配しなきゃいけないことがあると思うよ」

「え、何ですか?」

「おばあちゃんになっても私の子供を妊娠してしまったら大変なことになっちゃうかもね」

「! ヴァ、ヴァイオレットさんの変態」

「そんなこと言って、今日だって来たくせに」


 今日はヴァイオレットから誘ったわけでもない。それに口には出さなかったけど、服装だって、以前ヴァイオレットが褒めたちょっと丈の短いスカートで、その気満々ではないか。指摘したら拗ねるから、そこは黙って膝頭をなでておくけど。


「そ、それは、子供たちが、あんなこと言うから。それをおとなしくさせる方法が、ひとつしかないかなって」

「ん? 方法って?」

「……小さな子がいるうちは、みんな立派なお姉さんになろうとして、いい子になってるの、気づいてました?」

「あの子たちは、みんないつでもいい子だよ」

「もうまたそんな、モテようとして」

「そんなわけないでしょ。でもとにかく、そういうことじゃない。まぁ、私もそろそろ次の子って思ってたけどね」

「で、ですよね。それに約束の10人まで、まだ半分ですし」


 以前、長老と10人は子供をつくると約束した。その時は、10人はずいぶん多い、と思っていたが、5人産んだナディアがまだこんなに若い肉体なら余裕だろう。ナディアの体に負担がかかることなので、それだけが心配だったのだけど、エルフの頑丈さは出産にも適応されるらしい。

 それに実際に子供が生まれてみて、その、血のつながった子供たちの可愛さに、家族が増える喜びに、騒がしくなることの幸せに、ヴァイオレットはいくらだってナディアが許すなら子供がほしいと自身も思うのだ。

 だから下の子が手から離れる頃合いをめどに、そろそろ、とは考えていたのだ。


「愛してるよ、ナディア。だから、私の子供を産んで」

「……はい、何人でも、ヴァイオレットさんが愛してくれるなら」

「ふふ。それだと、ほんとにおばあちゃんになっても生まないといけないよ」

「いいですよ。ヴァイオレットさんが、そうしてくれるなら」


 ずるいなぁ、とヴァイオレットは思う。何年たっても子供みたいに嫉妬したり、幼い仕草で可愛いくせに、肝心な時にはこうしてまるでヴァイオレットよりずっと年上の人みたいに、すべてを受け入れて微笑んでくれるのだから。

 だから、ナディアが愛おしい。こんな人、他にいないというのに、嫉妬して、可愛らしい。その思いすべてを伝えたくて、ヴァイオレットはそっと、ナディアを抱きしめた。


「うん。そうしてほしい。それに、そうなれば、いい加減あの子たちも現実をみるよ。私が、ナディアしか見えてないって現実をね」

「もっと早くに諦めてほしいですけどね。まぁ、仕方ないですね。ヴァイオレットさんより素敵な人は、他にいませんから」

「ナディアがそう思ってくれるなら、十分だよ。私にとっても、ナディアは世界一魅力的な人だからね。だから、子供に嫉妬する必要なんてない。今からそれを、教えてあげるね」

「はい。ずっと、ずーっと、私が死ぬまで教えてください」


 ナディアに口づけながら、本当に高齢出産させてしまいそうな自分が、少し怖くなりそうだった。だけどそれも忘れるように、ナディアの魅力におぼれていった。









 そして二人は、約束の十人の子供たちを連れて里帰りした際には、100年以上かけると思っていた長老をその予想外の早さに驚かせるのだが、それはまた別のお話である。


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