休日その1
長らくお待たせしました。
高校生活も始まり、忙しいですが、きちんと投稿できるよう頑張ります笑
俺は支度を始めた。
でも、どうしても1つ気になることがある。
あの夢はなんだったのか、そして、なぜ夢の中で会話が出来たのか。
本来、夢というのは見るだけであって、気がついたり、意識をすると、目が覚めてしまうはずだ。
なのに俺は、目が覚めるどころではなかった。夢の中の自分と、夢を見ていた自分の意識が分離。最後には会話もした。
原因もわからないし、もう1度あの状況を作り出す方法もさっぱりわからない。
頭の中がまとまらずにぐちゃぐちゃしているうちに、支度が終わった。
⋯まぁいいか。
そう思いながら、俺は一階へと降りた。
「想士ー。遅いよぉ」
俺は時計をもう1度確認する。
針の指している時間は、7時30分。
「いや、何が遅いんだよ。むしろ早すぎんじゃねぇか」
「別にいいじゃん!その前にゲームかなんかで遊ぼうと思って」
「ほほぅ。夏実の家ってゲームあったっけ?」
「え?何のために私がここに来てると思うの?」
⋯まさか。
「私の家にゲームがないから、想士の家に来たって感じ!」
「やっぱりか⋯。お前、俺の家を何だと思ってるんだ?」
「えっとねー」
上を向いて考えている夏実。
よし、少しからかってみよう。
「内容によっては、どうなるかわかるよな?」
「えっ!そんな変な内容じゃないよ!!
⋯私にとっての想士の家はねー、大切で、なくてはならない幼馴染の家!って感じ!」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」
不意にまともな事を言われて、少しドキッとしてしまった。
⋯というか、そんな事を真顔で言わないでくれ⋯。
「あれ?私、なんか変な事言った?」
「そんな事ないんじゃないかな」
そう言って話に入ってきたのは凛である。
「大切なものは大切。それは人によって違うからねぇ」
お前の大切なものは下ネタか?
ついついそう聞きたくなってしまうが、やめておこう。
でもまぁ、凛の言う通りである。人によって、大切なもの、好きなもの、それぞれ違うんだ。
人間とはそういう生き物であり、そこが良い所だ。
「あ!それより凛ちゃん!想士に相談あるんでしょ?」
「あ。うん、そうだった」
凛は何故かモジモジと言う。昨日のことをまだ気にしてるのだろうか。
「相談なら、できるだけ凛の力になるよ」
「あ⋯うん。ありがとう⋯」
「もう凛ちゃんてば!何照れてんの!どんどん言っちゃいなよ!」
いや、お前は何も知らないからそんな事が言えるんだよ。
昨日俺らに何があったか⋯
いかんいかん。考えたら負けな気がする。
「で、どうしたんだ?」
「うん。えっとね」
凛の相談とは何なのか、俺は色んな意味でドキドキしていた。
しかし
内容を聞いた俺は、頭の中が真っ白になった。
「あのね、信じてくれるかわからないし、信じる人なんていないと思うんだけど⋯」
想士の返事を待たずに凛は話を続けた。
「私、昨日変な夢を見たの。そこまでは普通なんだけど⋯⋯
夢なのに、私の意思を持ったまま見れるの」
⋯⋯⋯⋯それって⋯⋯⋯
「おかしいってのはわかってる。なのに、わけがわからなくなっちゃって⋯怖いの⋯⋯」
聞いたことあるぞ⋯というか、それは俺も⋯
しかしこの時、俺はある疑問にたどり着いた。
俺は昨日の夢の事を、誰にも話していない。
「ね!想士も不思議に思うでしょ!」
「なぁ凛。ひとつ聞くね、どんな夢を見たの?」
「えっとね、小学生の頃の夢。⋯⋯その、なっちゃんには内緒だけど⋯想士くんならわかるよね?」
エロ脳で過ごしてしまった小学生時代か⋯
俺は、凛の身に何が起きているのか調べるために、もう少し質問をすることにした。
「それは、楽しい夢だったか?」
「ううん。まったく。むしろその真逆だよ。その夢を見ている自分が恥ずかしいくらいだった」
「そうか⋯⋯」
なんかもう、本当に俺と同じ状態だな⋯
でも、仮に見ている夢が同じような特殊状態なら⋯⋯⋯⋯
凛も、タイムリープをしているってことなのか⋯?
タイムリープしている。なのか、していた。なのか、
どちらかまではわからないが、そういう仮説が成り立ってしまう。
そんな事ってあるのか?
俺はここで、一番最初の疑問をぶつけてみる。
「なぁ夏実。なんでお前は、俺に相談させようとしたんだ?」
「いやー、なんかどこかで、『未来からの変な声が聞こえる』とか何とか言ってる想士がいたような気がしてね⋯」
「⋯⋯⋯?!」
真実は変わっていく。
俺はこの瞬間に悟った。
過去の同じ時期の俺と話したんだから、夏実が知っているわけがない。
だけど、夏実の頭の中には、
変な声と話した
という記憶がある。
だとすると⋯
過去が変われば、それに関わった人物の記憶が、
上書きされていく⋯
「想士?どうしたの?そんな難しい顔しちゃって」
「あ、いや、なんでもない⋯」
俺は、言葉を濁らせる事しか出来なかった。
「な、なぁ凛。さっきの話だけど、今度二人の時に、ゆっくり聞かせてくれ。」
夏実に聞こえないところで、凛にそう伝えた。
「あ、うん⋯。わかった」
ごめんな凛。そういう現象は知っているんだが、あまりにも唐突すぎて、頭が追いつかないんだ⋯
それに、やっぱり情報が少なすぎる。仮に俺の予想が当たっていたとしても、なにを根拠に。と言われたらどうしようもない。
俺たちは再度時計を確認する。
針が指しているのは8時ちょうど。
⋯時間がありすぎる。
「なぁ夏実、今から紗菜に連絡して、早く集まって、少し遠出しないか?」
「あ!それいいね!私、紗菜に連絡してくる!」
一度決まると行動が早い夏実。⋯すげぇ。
「想士くんからそんな事言うなんて、珍しいんじゃない?」
「まぁな。でも、あのままじゃ、多分予定もなく時間が余るだけだと思ったからさ。ここまで来てから聞くのも悪いが、凛はいいか?」
「もちろん!全然OKだよ!」
「なら良かった」
⋯⋯⋯会話が続かないよ?!どうすればいいのさこの状況!超気まずいんですけど!昨日のことがあったから、お互いに意識しちゃうし、どうすればいいんだよ⋯
「想士くん」
「ん?」
「その⋯昨日は、ありがとね。今まで、ダメダメだった私を、優しく慰めてくれた気がして、すごい楽になったの」
「凛がそう思ってくれるなら、俺も嬉しいよ」
「そ、その⋯⋯。最後は⋯、想士くん大胆だったけど⋯」
そんな顔赤くしながら言うのやめてくださいません?!こっちが恥ずかしいじゃん!
「べ、別に、わざとじゃないからな!」
「わ、わかってるよそんなの!」
二人とも顔を赤くして、会話が終わった。
それと同時に、タイミングよく夏実が戻ってきた。
「二人ともー!紗菜ちゃんもこっちに来るだって!」
「こっちって?」
「あ。そっか。ごめん想士。想士の家の住所教えちゃった」
「は?!ずいぶんと勝手だな?!」
「まぁいいじゃん!」
「人の家の住所をポロポロ言っていいものなのか?」
とは言いつつ、結局怒れない俺がいた。
考えてみれば、高校時代、話す人も、友達もいなかったのに、今では女子二人も、俺の家に⋯
泥まみれの高校生活とは違い、だいぶバラ色になってきた。
⋯ブルブル⋯
テーブルに置いてある俺の携帯が震えた。
「想士、携帯鳴ったよ」
「あ、おう」
俺は携帯をチェックする。
⋯⋯⋯
なんだ、ゲームの通知か。最近変なメールが届きすぎて、怖くなってる。
ゲーム画面を開く途中で、携帯がいきなり真っ暗になった。
⋯⋯⋯⋯あれ?
次に携帯がついた時には、ゲーム画面ではなかった。
⋯⋯⋯⋯⋯?!
『高校生活が楽しくなっているのは良い事ですが、周りの事にも目を向けてあげてくださいね』
⋯⋯⋯⋯⋯⋯
なんかもう慣れてきた自分が逆に怖い。
周りの事ってなんなんだよ⋯。毎回毎回、おかしなタイミングで来るし⋯
「何がしたいんだよ!」
頭が回らなくなった俺は、誰かに助けを求めるように、気づけば叫んでいた。
「え?!」
その声に驚いた夏実と凛。二人とも急いで駆け寄ってくる。
「どうしたの?想士」
「あ、いや⋯」
「いきなり叫んで、どうかしたの?」
「悪い、なんでもないよ。少し、変なメールが来たもんでな」
「それならいいけど。何かあったら、相談してね?」
「おう。ありがとう」
本当にごめんな二人とも。本当は話してあげたい。俺としても、すごく相談したい。
だけど、今話して、何か未来が変わってしまうとしたら⋯。昨日見た夢の答えを⋯。自分が取るべき正しい行動を。
それがまだ出来ていないんだ。もしこれで何かが変わってしまったら⋯。タイムリープが解除されてしまったとしたら⋯。
そういうことを考えてしまうと、どうしてもこの一言が⋯⋯。勇気が出ないんだ。
きっと俺はまだ弱い。臆病で、弱虫で、自分をただ守ることしか出来ない。
いつかきっと、君たちには話すから、それまで待ってくれ。
俺はメール画面を閉じ、二人のところに戻った。
ピンポーン
家のインターホンが鳴った。もちろん相手は紗菜である。
「紗菜ちゃーん。いらっしゃーい」
「ここは俺の家だ。お前の家じゃない!」
お約束のチョップを入れる。
「あぅ?!だからー!痛いんだってばー!」
「いや、今のはお前が悪いんだからな」
「そ、そうだけどー!!!」
ふてくされた様にそっぽを向く夏実が、少し可愛く見えてしまった。
なんか、自分の過去の生活スタイルが、だんだんわからなくなってきた⋯。
「で、夏実ちゃん。こんなに早く集まって、どこに行くの?」
「それは、想士が言ったことだから、私にもわからないの。ねぇ想士。どこに行くの?」
「んー。俺もあんまり考えてないんだけど、みんなはどこに行きたいとかある?」
ナイス俺!すごい自然な聞き方である!
「私は⋯どこでもいいよ」
「私はねー!山行きたい!」
⋯は?
「なっちゃんは山かー。私は富士山がいいかなー!」
⋯⋯はぁ?
「いや、まて二人とも。普通の休日に行くところじゃないぞ。ってか凛。富士山も一応山だよな」
「何を言ってるの想士くん!富士山っていうのはね!日本でトップなんだよ!トップマウンテンだよ!」
表現力小学生レベルか?!
「それはわかるけどさ、なんか関係あるの?」
「今は春!そして今日はね?富士山の登山解禁日なの!だから登ろう!」
あー⋯。どうやら凛は登山好きなのか⋯。
「凛、お前は、山が好きだから登山したいってことか?」
「へ?山?全然興味ないよ?」
⋯⋯はぁ?!
「私が好きなのは、富士山だけだよ!!」
あ。登山好きじゃなくて、ただの富士山好きか。
いやまぁ、でも今日はな⋯
「でもほら、紗菜もいるし、今日はやめとこうぜ?」
「ごめんね凛ちゃん⋯さすがに体力が⋯」
紗菜は元々運動が苦手なタイプだから、山登りは到底無理だろう。
てかまず、簡単に行くところじゃねぇし。
「じゃあどこにしよっかー。想士、何かいいところある?」
みんなと話しながら、携帯を使って観光地を調べていたら、ぴったりな所を1つ見つけた。
「お。みんなさ、水族館とかどうだ?」
「あー!私お魚好き!」
毎度毎度楽しそうに話についてくる夏実は、普通にありがたい。
「私は大丈夫だよ。⋯凛ちゃんは?」
「私も賛成!!」
紗菜も凛も大丈夫だ。
最近の俺は昔と何か違う気がする。昔は自分のことしか考えていなかった俺が、こうしてみんなのために何かを考えていると思うと、我ながら嬉しくなる。
「それじゃあ、行こっか」
俺たちは水族館へ向かった。
次回は、想士と紗菜が少し、イチャイチャします。
イチャイチャというか、ドキドキしますw